- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105901394
感想・レビュー・書評
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冒頭の「階段を下りる女」と題された絵の描写と終盤に描かれる階段から下りてくるイレーヌの姿。絵ととも行方をくらました40年前のイレーヌと、最後の夜にボートから忽然と消えたイレーヌ。40年の時を経た追体験のようだ。
年老いて余命いくばくもないイレーヌとの短い共同生活。若き日の初恋の痛手が棘のように刺さったまま本当の愛を知らずに初老を迎えた主人公は、イレーヌとの間で起こりえた未来を共有することにより真の愛情に目覚めていく。
大人になり切れない男たちの再生のための物語。 -
この物語の、どこを掬いとればいいのだろう? 愛について? 老いについて? 女と男、そのささやかな「分かり合えない」について?
ただひとついえるのは、水がどこを掬っても水であるように、この物語には常に確固たる「時」が流れているということ。
主人公と彼女が最後まですれ違うの、月みたいに狂おしく切なかった。 -
数十年前に失踪した女性と一枚の絵。
その絵を再び見つけてしまったら…
彼女と実業家の前々夫、絵を描いた画家の前夫、私。
失踪していた空白の月日。
風変わりなシチュエーションより、FALL IN LOVEした心は何十年たっても、彼女に向けてしか特別な開き方をしていなかった、ということの切なさ。
恋によって人生の見え方が変わってしまうことを外からみている、映画「(500)日のサマー」と、
1人の女性を巡る男たちのおかしな交流は、イアン・マキューアン「アムステルダム」を思い出した。