- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106035111
感想・レビュー・書評
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9人の数学者の生身に迫る、感動的な物語である。
数学者である著者が畏敬の念を抱いて選んだ9人、それぞれの人生の軌跡を確かめるべく、現地に脚を運び、そこで知ったことや感じたことをもとに、当時の空気感を持って、文章に現出させる。文章の言い回しが心地よい。タイトルに凝縮されているように、天才は峰が高いほど谷底も深く、それ故に、輝かしい栄光の裏に、底知れぬ孤独、挫折や失意があった。本書を通じて、痛切に伝わってくる。多くの数学者が挑み、挫折していった'フェルマー予想'の超難問を証明したワイルズ、この偉業に、3人の日本人(岩澤,谷山,志村)の理論が大きく寄与していたことを知ることができた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
数学者、藤原正彦氏による、古今の数学者たちの偉業とその生き様を紹介する本。趣旨は後に書かれた「心は孤独な数学者」と同じ。存命の数学者も含めた伝記である。
著者の表現がとても心地よくて、また数学者という想像を超えた頭脳を持つ人たちへの尊敬もあり、とても楽しめた。著者の意図は、どんな偉大な数学者だって悩んだりする人間なんだということ。彼らの業績がいかにすごいかは、一般人よりも、自身も数学者の藤原氏の方がもちろんよく知っている。紹介されている数学者のうち、ラマヌジャンなど4人分は他の著書で読んでいたので飛ばしたが、それ以外もとても面白かった。3世紀半誰も解けなかった、フェルマーの最終定理を見事に証明したワイルズ博士の章も楽しめた。サイモン・シンの著書に比べると、苦悩の部分が薄いが。
とにかくおすすめの本。 -
数学大嫌いだけど、数学者の人生ってドラマありすぎで読み物としては惹かれます。この本は著名な数学者の人生を、実際に現地に訪れた様子と合わせ書いているので、紀行文としても楽しました。
文系と理系と切り離して考えがちですが、これを読むと詩を書いたり絵を書いたりしている数学者もいるので、本当の天才は文理融合しているもんなんだなと思いました。私にはどちらもないけど。 -
【自分のための読者メモ】
藤原正彦さんの著作を初めて読んだのは、学部生の頃。『遥かなるケンブリッジ』。自分ではかなわない留学体験を、この著作から想像してみたりしていた。
ちょっとだけ研究者に憧れていて、けどなかなか卒論と修論が書けなかったころ、この本で知った「ペーパー オア ペリッシュ」という言葉は自分の未来に楽天的になれないぼくには、恐ろしい響きをもった言葉となった。その勢いで手に取ったのは、続いて『若き数学者のアメリカ』。どちらにも共通しているのは、ノーベル賞学者や天才的な数学者のさびしい横顔。
そこで本書。これはNHKの人間講座のもとになった本。当時は、フェルマーの最終定理が解けたころで、アンドリュー・ワイルズもこの中に含まれ紹介されていた。ニュートンから始まりワイルズまで。
ファウスト博士もそうだったけれど、人間「真理」につかまれ、とことんまで行っちゃうと、もう不幸と幸せは紙一重ってことなのでしょうか。最後に、この本に登場する中で一番のお気に入の話は、インドの魔術師こと、ラマヌジャンについてのものでした。 -
読みたい。
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数学者・藤原正彦の手による短編伝記集。
紹介されている9人は、いずれも劣らぬ大数学者。歴史に燦然とその偉業が轟いている面々だ。
科学の神に選ばれた人々は、あまりに輝かしく、そして心身が砕け散ってしまいそうに孤独で哀しい。
天才とは、栄光を手中にすると引き換えに、この世の地獄を歩く定めも負うのだ。
9人のうち、誰か1人にはきっと感情移入できると思う。理系の人も、そうでない人も、天才も、そうでない人も、是非、一読を。 -
文系だからこそ、理系に憧れる。
ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズ
「博士の愛した数式」の執筆の動機になった本じゃなかったかな
・暦のために日本は数学が必要だった
・宣明暦が822年で2日ずれたため
・日食・月食の予測が良否の決め手
・和算関流 -
藤原氏が自分で関係者や現地に直接取材して、同業者としての深い理解と微妙な感情が見えるのもいいです。文学的センスもある文章も読みやすい。
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藤原先生の優しい文章で描かれる、天才数学者の苦悩と成功。フェルマーの定理を証明した、アンドリューワイルズの話が好きです。
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数学のことはわからないけれど、作者の文章が素敵で、一気に読んでしまった。数学者って、ある意味では、新しいものを創り出していく人なのかな、と思わされた。