- Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106100512
感想・レビュー・書評
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エルメスの歴史、思想などについての知識を得ることができる本。
ヴィトンと違うな、と感じた点はヴィトンが徹底的なマーケティング戦略の結果、現在の収益をあげているのに対し(よい物つくり&高品質、という前提はもちろん有り)、エルメスは、ある一貫した思想を貫いた結果
今のステイタスを得た、というところ。
あくまで個人的な考察ですが。
ブランドに魅力を感じる理由は人それぞれなので、本書の後半のように一概に世代や所得でグループ分けをしてしまうことには抵抗はあります。
ブランド品だと意識して手にするのであればそのブランドの歴史や思想を理解した上で、と感じています。
そういった意味でエルメスを知りたいと思う方にはオススメ。
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エルメスの伝統と確信、そのイメージ戦略。いかにブランドたらしてめいるかについて書かれた本。具体的で面白かった。
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孤高の手仕事、エルメスの実態に周辺から迫った新書は、必要があり通読しました。「イメージ」「品質」「希少」を軸に分析されています。その軸を守り続ける企業活動こそが「エルメス」であるとのコトだそうですね。
徹底した親族経営であることが、エルメスたる所以だそうで、これも全く、その通りと思われます。 -
概論
ブランドの中のブランドであるエルメスは、なぜこれ程の成功を収めたのか。フランス上流階級向けの馬具工房として創業し、160年の伝統を誇るエルメス。キーワードとしては、伝統と革新、同族経営、マーケティングの否定、クオリティーへのこだわり、といったところか。
感想
経営者が自社のブランドついて語る本は散見されるが、外部の人間、特に学者肌の人(本書の著者は東大ドクター卒の女性)がブランドについて分析したという意味で、本書は一読の価値があると思う。我々(特に日本人)がなぜブランド物を買ってしまうのか?という究極の問いに対する明確な答えはないものの、ヒントは得られたように思う。
メモ
・1837年にパリで馬具工房として設立、現在は五代目のエルメスさんによって経営される。2003年時点で世界160都市に店舗を構えるものの、親族で80%以上の株式を所有する。従業員は約4000人と少なく、資金調達は全て内部調達。
・老舗プレミアムブランド(ヴィトン・エルメス・カルティエ・シャネル)関係者は、成功の要因を「アイデンティティの明確さ」と、「伝統を守りつつ絶え間ない革新をしている」ことと言う
・重要なファクターとして「品新」「イメージ」「希少性」の三つ
・1800年代後半にダイムラーとベンツが自動車を発表すると、馬具工房は存亡の危機に立たされる。
・日本では明治から皇族や華族がブランド品を所有していた
・1929年の世界恐慌時には、プレミアムブランド各社が香水とスカーフを発表:不況の時代に即した手ごろな価格の最高級品
・エルメス・シャネル・ヴィトンは、ライセンスビジネスが流行した1960年代に、これに便乗しなかった。他ブランドは便乗した:便乗しなかったことは結果的に成功
・特に日本はライセンス天国で出せば売れる状況だった:イヴサンローランのこたつ布団まで登場した:後にブランドイメージ回復が困難となる
・伝統のあるブランドでも、時代のニーズに即した商品を出す必要があるbyデュマ氏:1984年にはマグカップやコインケースをエルメスが発表
・デュマは近年のブランドブームに逆行するように、職人技術に基づいた品質を強調し、ブランドやマーケティングの存在と概念を否定する
・LVMHのベルナール・アルノーはプレミアムブランドの条件としてtimeless:永久不滅を挙げる
・近年のエルメス・ブティックは、主力の鞄とスカーフに加え、世界の職人技術を集めたセレクトショップのような感じ。これにより品質・職人技術にこだわるエルメスの原点を強調し、ブランドイメージにブレを与えない。
・上得意の客に対しては非常に丁寧で非売品なども配られるが、一見さんに対しては冷たい
・マーケティング部門に広告を作らせず、デザイン部門によりブランドイメージを強力に打ち出した広告を作らせる
・1964年、西武がエルメスの代理店契約、しかし売り上げ伸びず
・1970年代に入り、ブランドが一般化し始める:70年の大阪万博で仏蘭西のプレミアブランド展が大成功を収める
・70年当時、銀座のホステスが着物の代わりにブランドを買い始める
・79年に初めての直営店、83年に西武と50:50で日本法人の立ち上げ。83年から今まで継続して増収
・85年プラザ合意とその後のバブルによる円高により、ブランドがさらに一般化
投資銀行の調査によると、不況期にまず贅沢品を控えるのがアメリカ、収束の傾向が見られないのが日本
・2000年ごろに中村うさぎの買い物依存症が有名に。商品を使うことではなく、購入することに快感を得る消費行為の一潮流へ。
・エルメスも買うがユニクロも買うという消費行動が発生:買うことを楽しむ?
・欧米では、プレミアムブランドを一般の若者が使うという意識がぞ存在しない:なぜ日本だけ?
・モノがあふれる中で育った日本の若者は、消費文化の歴史の中で鑑識眼が非常に高い:これは疑問。比較対象を持ってないので何とも言えない
が
・着物の文化や茶道・華道のたしなみや社交の場が消え、プレミアブランドはそれと入れ替わるように生まれてきた
2010年12月15日 読了71(64) -
ブランドの中のブランド、エルメスがどのように発展してきたか。その背景には高水準の職人技術、同族経営、巧みな広報・商品戦略があった。伝統と革新を織り交ぜながら多角的に発展してきたエルメスのブランド論。
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ブックマークをしているブログで紹介されていて面白そうだったので購入。
今まで知らなかったブランドの歴史が想像以上に近現代の人々の変化に影響され、またブランドが時代を象徴し、人の流れを後押しする様が読んでいて興味深かった。
不況と言われる時代の中では伝統や技術はどうしてもなおざりとなる。そういうものが失われてしまうのは寂しいし、もったいないと思うけれど惜しむ気持ちだけでは手工業を守っていくことは出来ない。だがこの本には伝統を守るヒントも多く書かれている。ヨーロッパのプレミアム・ブランドの発展を知ることで日本の小さい伝統工芸などを守るきっかけを掴むことが出来るかもしれない。
プレミアム・ブランドというものへの印象がこの本を読むことで変わった。(自分で購入する機会はなかなか作れないけれど・・・)
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エルメスとシャネル、ルイヴィトンとの間にはこんなにも差があったんだ。日本人とブランドとの関係も興味深かった。
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エルメスの歴史と知識が得られる本。
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エルメスの歴史と製品の意味とうか特質についてまとめた本。そういう点で、このタイトルは正しい。
にもかかわらず、歴史については浅い記述。馬具→車の出現(ルノーの影響にも言及)→バッグとスカーフ。というか、全般を通して事実・情報中心であり、最後のほうに日本人がどうしてブランドを好むのか?というお決まりの論点について、バブルを踏まえた状況的分析と、日本人の伝統性というお決まりの分析。
どうしても以前読んだ『ブランドの条件』と対比してしまうが、考察等が少なく、論拠としてあげる文献もメディアや比較的手にはいりやすいミーハー評論家の考え等が中心。まぁエルメスを知るにはそれなりに役に立つかもしれない。特に、モードではない、流行には乗っからないが、新鮮さと伝統の調和で人気を集める、といったブランドの宿命について、前述の本を読んでいれば納得しやすい。また、エルメスを語るには年間テーマという視点が欠かせないのだなと納得。関連して、そこから生じる稀少性がコレクター欲、物欲を刺激するとの文脈はエルメスを語るのに不可欠。