原発・正力・CIA: 機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書 249)
- 新潮社 (2008年2月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106102493
作品紹介・あらすじ
一九五四年の第五福竜丸事件以降、日本では「反米」「反原子力」気運が高まっていく。そんな中、衆院議員に当選した正力松太郎・讀賣新聞社主とCIAは、原子力に好意的な親米世論を形成するための「工作」を開始する。原潜、讀賣新聞、日本テレビ、保守大合同、そしてディズニー。正力とCIAの協力関係から始まった、巨大メディア、政界、産業界を巡る連鎖とは-。機密文書が明らかにした衝撃の事実。
感想・レビュー・書評
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CIAより「ポダム」のコードネームをつけられた読売新聞社主・正力松太郎が、自身の「正力マイクロ波通信網構想」という野望の実現のために「原発」を切り札に総理大臣を目指すという、荒唐無稽な実話。
それにしても、CIAに取り入るために読売新聞の5000人の記者が集めた情報をCIAに差し出すという取り決めを結んだというくだりは、実にセンセーショナルだ。
また、正力が電力業界からの支持を得るために民間主体を、しかも性急に押し通した結果、事業者の賠償責任に上限を設ける「原子力損害賠償法」という矛盾を生み出した事実は、福島原発事故後の今読むと、実に味わい深い。
孫崎享氏の「戦後史の正体」との併せ読み読みをお奨めします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原発・正力・CIAと言うタイトルを見て??と思われる人も多いだろう。
また、ピンと来る人もいるだろう。
戦後、正力という人物が新聞メディア・原発と政界とCIAという色々な世界でドロドロと繰り広げたドキュメント。
そこには計り知れない陰謀や思惑、歴史的な出来事が重なり合う。
福島原発の事故の後と前では読んだ人の感想も大きく違う受取方になるだろう。
私はディズニーと原発の関わり方についてこの本を読んでビックリさせられました。
そしてこれも読んでみたいなと思った。
日本テレビとCIAーーー発掘された「正力ファイル」新潮社 -
かなり前に買って電子化しておいた本。
歴史の裏側の面白さと、マスメディアを握ることの強さを感じた。
正力松太郎の話は初めて読んだが、元警察官僚が弱小メディアだった読売新聞を買収して大きく成長させ、総理大臣を目指していくストーリーはすごすぎる。
戦前・戦後のドタバタ期ならではな雰囲気はあるが、CIAとのやりとりなど歴史背景が面白い。
失策も相当あるが、戦後日本を作った傑物に違いない。 -
原発 黎明期の事実確認のために読んだ。
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正力松太郎が総理大臣になるという政治的野心を持ち、CIAと駆け引きをして、当時反米・反核の世論が強かった日本人に原子力をアピールし、対米の好感度をあげるまでのストーリーは鮮やかだった。特に原子力平和利用博覧会という手法で反米感情を好転させる手腕など。ただしかし、3.11が起きた今、てめえの政治的野心でかなり強引に原子力導入を推し進めやがって、と我々後世の人間が怒りを禁じえないのは仕方のないことである。結局正力は政治家としては大成せず、マイクロ波通信網構想は衛星技術に負けでしまった。
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唯一の被爆国である日本が、水爆実験でも被爆国となった中で、どうやって原発導入へ向かったのか。読売グループの正力松太郎とCIAの果たした役割が明らかにされている。
電力会社が原発導入と運営に主体的でありながら、事故が起きた時の保障は国が、という仕組みの起こりも触れられている。
遅かれ早かれ、この人物の強引な導入推進が無くても、別の方法で、原発が日本に導入されたことは、間違いないと思うが、もう少し導入前の検討を慎重に行うような選択に至るには、あまりにも大きな力が折り重なって働いてしまっていたのだと感じた。 -
正力を「昭和の傑物」と評するのは同意しかねるが、アメリカとこれだけ渡り合うような気概を持った人物というのは、実は今の時代に求められているのかも。
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戦中・戦後日本の大物をCIA文書から読み解く。歴史を知ることで現代に当たり前に存在すると思われているものをより知ることができるのだな。