原発・正力・CIA: 機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書 249)

著者 :
  • 新潮社
3.49
  • (16)
  • (48)
  • (56)
  • (9)
  • (3)
本棚登録 : 521
感想 : 66
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102493

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 原発って、そもそもの始まりからして、確固たる信念のもと推進されたわけじゃなく、正力っていう人物が自らの野望を果たすための道具=アメリカとの交渉の道具として使われたっていうのはなんとも不愉快極まりないわけで。もし、それが事実だとしたら、たとえば、アメリカのロビー活動の影響で原発推進に動いた中曽根氏のほうがよほどマシにみえたりするという。

  • 原爆投下後10年で原子力平和利用博覧会が開催された。今現在、福島の事故から8ヶ月で原発推進を政府が表明する。日本という国はつくづく不思議だ。誰のためにそうするのか?戦後日本という国の枠組みが出来ていないうちに、正力松太郎やらがルールを作った。それが今の日本だ。あれから、60年以上立つのに時代遅れのルールでこの国はもがいている。もう、ゲームオーバーなんだよ。一度リセットして新しいゲームをはじめようよ。俺たちはまだまだこんなもんじゃねえよ。

  • おもしろい。
    総理大臣になりたいとう野望を持つ正力は、原子力とアメリカを利用し、アメリカもメディア王であり自他ともに認める反共主義者である正力を利用した。

  • 2008年に発行された本なので今回の原発事故には言及がないが、原発事故以後にこの本を読むと読む視点も変わってくる。
    正力氏は、CIAのエージェントと関わりを持っていた。当然、CIAが身分を打ち明けているわけではないが、持ちつ持たれつの関係にあった。東京のCIAの情報が本部に報告されていたわけだが、その内容が戦後50年経過し公開され歴史の裏側が表にでてきた。
    日本の反米感情を和らげるために、CIAは、ワンマン経営で、テレビと新聞を握っていた正力氏を利用した。特に強力に推進したのが原子力技術の平和利用の博覧会であり、36万人の入場者、マスコミ報道により米国のイメージ改善し、原子力発電容認の流れを形成した。
    原子力の平和利用は、正力氏が政界に進出するにあたっての切り札で、この分野で早期に成果を出して、総理大臣になるのが最終目的であった。衆議院議員となり、すぐに原子力関連の大臣となり政治主導で米国から実証炉を東海村に導入し、さらに、商業炉を早期に実現しようとした。
    日本で原子力発電技術が早期に導入できたのは正力氏の功績ではあるが、軽水炉の基礎研究をおこなわずに、輸入技術で推進してきたことが今回の原発事故の遠因になっていると思われる。

  • またまた原発もの。
    なぜ広島長崎から10年もたたずして、日本は夢のエネルギー原子力の平和利用を追い求めたのか、そしてなぜ国策民営という体制となってしまったのか、その背景・一因を、正力という政治家・メディア王を軸にして、CIAの一次史料を元に、当時の国際・国内の政治社会情勢から紐解いている。
    歴史的出来事を生み出す連鎖の複雑さ、面白さを伝えたい。特定の組織や人を非難するのではない、原発・正力・CIAの存在を賛美もできないが否定もできない、という、あとがきに記された筆者の姿勢がよいと思った。

  • “ついに太陽をつかんだ"

    日本に原発がやってくるまでの話。

  • 日本原発導入の経緯の裏舞台。読売を率いた正力松太郎の野望。面白くもあり衝撃的でもある。横須賀に灯る予定だった原子力の火、敗戦国に原発を与えたくない米国との駆け引き。
    プロバカンダに使われた読売新聞は今も社説や記事をみるにつけ、その影響を感じさせる。

  • 日本に原子力が導入された経緯とそこに暗躍する人々。いまや秘密でもなんでもない正力松太郎とCIAの関係が米国の外交資料をもとに明らかにされている。まさにタイムリーなネタ満載でおもしろい。

  • 福島の原子力発電以降 公共の図書館で予約して読んだが
    3か月待った。
    前書 日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」に続き
    正力松太郎が政界への野望を実現するために早急に原子力発電を導入した経緯がCIAの機密文書を基に白日の下に暴かれている。
    危険性などあまり認識していなかったのではないかと思われる。
    原子力賠償法が50億円を上限としたこと、これを超える場合は国が負担することとなった経緯がわかる。

    また兵器メーカーと原子力発電メーカーが同一であったり、ディズニーによる親米、親原発プロパガンダなど民心を愚弄してきた
    罪は重い。
    讀賣新聞や日本テレビが政権より、原発推進派なのは仕方がないとしても他のマスコミがどうして腰がひけるのかまったくわからない。
    国と戦うメディアが不在であることに気付く。

    とにかく この本は歴史上の出来事が 登場人物のそれぞれの思惑がからまりあってつぎつぎと起こっていく様子を再現してくれてなかなか読みごたえのある本である。
    正力松太郎は大衆操作の天才 ゲッペルスに比すべき存在である。

    それにしても人間的魅力がない人だったみたいですねぇ。正力さんは。

  • CIAが公開した秘密文書「正力ファイル」から、戦後昭和史が浮かびあがる。正力松太郎氏といえば、読売新聞社主であったが、テレビ網の構築に強い意欲を示し、CIAを向こうに回し太刀回り。そしてわが国の原発の導入のきっかけとなる。そんな一面があったのかと大いに感心した。
    一方、CIAの情勢分析力は鋭利な刃物のように冷徹で切れ味鋭い。こうした専門家による下地があってこそ強い交渉力、見えない圧力を形成しているのだろう。ある意味、007やゴルゴ13は現実とそうかけ離れたことではないと思わせられた。

全66件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

有馬哲夫(ありまてつお)
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学部・大学院社会科学研究科教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『歴史問題の正解』『原爆 私たちは何も知らなかった』『こうして歴史問題は捏造される』『日本人はなぜ自虐的になったのか』(全て新潮新書)、『NHK解体新書』(ワック新書)など。

「2021年 『一次資料で正す現代史のフェイク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

有馬哲夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×