原発・正力・CIA: 機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書 249)

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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102493

感想・レビュー・書評

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  • フクシマ論の中で、「原子力の父」とされる正力松太郎についての引用がいくつかあり、原発導入の経緯、歴史的背景に興味があり読んでみました。
    歴史には、興味がある方なのですが、戦後の近代日本史をあまりに知らない自分に驚いたと共に面白さにも驚きました。
    国、企業、組織、人の腹の探り合い、駆け引き、筆者も言っている歴史的出来事を生み出す連鎖の複雑さと面白さには惹きつけられる。
    事実は小説より奇なりと言ったところか。
    どの時代も政治には、利権や関係者の様々な思惑が複雑に絡み合っている。
    メディアには、何らかの情報操作が行われたり、プロパガンダの要素が少なからず含まれる。
    現代におけるメディアの見方として、全て鵜呑みなする平和ボケも、何事も穿った見方をする陰謀論者も、どちらも極端過ぎる。
    物事は複雑な連鎖で成り立っているのだから、その連鎖を読み解く努力を日々していく必要があるんじゃないかな、なんて思いました。

  • 原爆投下後10年で原子力平和利用博覧会が開催された。今現在、福島の事故から8ヶ月で原発推進を政府が表明する。日本という国はつくづく不思議だ。誰のためにそうするのか?戦後日本という国の枠組みが出来ていないうちに、正力松太郎やらがルールを作った。それが今の日本だ。あれから、60年以上立つのに時代遅れのルールでこの国はもがいている。もう、ゲームオーバーなんだよ。一度リセットして新しいゲームをはじめようよ。俺たちはまだまだこんなもんじゃねえよ。

  • 日本に原子力が導入された経緯とそこに暗躍する人々。いまや秘密でもなんでもない正力松太郎とCIAの関係が米国の外交資料をもとに明らかにされている。まさにタイムリーなネタ満載でおもしろい。

  • 福島の原子力発電以降 公共の図書館で予約して読んだが
    3か月待った。
    前書 日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」に続き
    正力松太郎が政界への野望を実現するために早急に原子力発電を導入した経緯がCIAの機密文書を基に白日の下に暴かれている。
    危険性などあまり認識していなかったのではないかと思われる。
    原子力賠償法が50億円を上限としたこと、これを超える場合は国が負担することとなった経緯がわかる。

    また兵器メーカーと原子力発電メーカーが同一であったり、ディズニーによる親米、親原発プロパガンダなど民心を愚弄してきた
    罪は重い。
    讀賣新聞や日本テレビが政権より、原発推進派なのは仕方がないとしても他のマスコミがどうして腰がひけるのかまったくわからない。
    国と戦うメディアが不在であることに気付く。

    とにかく この本は歴史上の出来事が 登場人物のそれぞれの思惑がからまりあってつぎつぎと起こっていく様子を再現してくれてなかなか読みごたえのある本である。
    正力松太郎は大衆操作の天才 ゲッペルスに比すべき存在である。

    それにしても人間的魅力がない人だったみたいですねぇ。正力さんは。

  • 原発政策のゆがみがどのように生じてきたか、見えてくる。事故時の補償を考えると一企業が運営してはいけないものが、その他の事情で押し切られた。

  • 最高におもしろかった。

    CIA関係の本は初めてだったので、
    CIA=スパイ という短絡的な見方をしておりましたが、
    驚きの連続でした。

    アメリカは世界のリーダーとなるべく、軍事力強化に走った。
    その為、反米、反原子力の払拭が課題となる。

    そうなると、当時アメリカは戦争で配下に入れた日本を利用するのは当然のこと。
    その日本のメディアを牛耳っていた正力松太郎と関係を深めていったのは必然ということ。

    逆に日本のメディア王、正力の野望はマイクロ派通信網構想。
    これを実現するためには、公衆電気通信法律を改正する必要があった。
    そして、そのためには総理の席に座るしかなかった。

    というわけで、正力は総理を目指す。
    その中で、自らのメディアを使い、原子力平和構想をうまく利用することで、
    政界での立場を高めたかった。なのでCIAを利用した。ということでしょうか。

    CIAも正力もお互いに利用していた。
    正力=CIAのエージェント というのは少しずれがあるかもしれない。

    それはともかく、
    結局のところ両者に溝が出来る。
    それぞれの意図が違うので当然といえばそうだ。

    アメリカは原子力普及に日本を利用したいが、
    日本に原子力を提供し、敗戦国である日本が力をもつことには警戒していた。
    なので、正力に原子力を売ることはしなかった。
    これは政界地位向上に原子力導入を利用しようとしていた正力の構想に反したのだ。

    やがて正力は総理にもつけず、電波法も改正できないまま死亡する。
    しかし、彼が残したことは良い悪いは別として、日本にとってもアメリカにとっても偉大ものだった。
    現在も僕は量は少ないがテレビをみるし、新聞を読む。東京タワーにものぼる。東京タワーという本もある。笑

    すごい人だったんですねー。

    そして、もっとも面白いのが、
    結局軍事目的のためにメディアを利用するアメリカが、
    宇宙事業に力を入れ始める。もちろん日本においては正力を利用しようとした。
    その結果、50年の時を経て現在はインターネットが発達し、
    正力のマイクロ構想も達成されていることになる。
    当時、正力は人生をかけてこれを成し遂げようとし、CIAとつながったが、報われなかった。
    しかし、CIAが全く別の理由(軍事拡大)の為、正力を利用したことが正力の夢を実現させたことは皮肉だ。と本にもある。本当に皮肉だわ。

    歴史ってのはおもしろいね。



    メモ的に加えておくと、
    ディズニーランドも一部はアメリカ世界制覇の為のメディアという立場であったということは理解しておきたい。

    本書の終わりに、
    国が目的を達成するのにメディアを支配しようとするのは当然だ。
    そのことに驚いている日本人がいるようでは平和ボケというしかない。
    といったことが述べられている。

    すごく納得してしまったー。



    さて、次の本は池田さんの
    「電波利権」にチャレンジしようと思います。

著者プロフィール

有馬哲夫(ありまてつお)
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学部・大学院社会科学研究科教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『歴史問題の正解』『原爆 私たちは何も知らなかった』『こうして歴史問題は捏造される』『日本人はなぜ自虐的になったのか』(全て新潮新書)、『NHK解体新書』(ワック新書)など。

「2021年 『一次資料で正す現代史のフェイク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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