手ごわい頭脳: アメリカン弁護士の思考法 (新潮新書 286)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102868

感想・レビュー・書評

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  • 米国弁護士と日本弁護士の違いがよく分かる本だった。期待していた米国弁護士の思考法が三割程度で、それよりも米国の法制度や実際の弁護士の仕事等に関する記述が多かったが、それもまた面白かった。

    「アメリカのロースクールの重要な目的は、学生が『なぜこの判例はあの判例と違う結論になっているのだろうか』と考えて、その論理の筋道を合理的に説明できるようにすることなのだ。その場合に必要とされるのは判例の暗記ではなく、論理の筋道を作る思考パターンである。『正解』はない。むしろ、『正解』として提供されるものを攻撃することがまたスキルの一つなのだ。」
    ・ルールを覚えるのではなく、思考法を学ぶ。本書を通じた考え方として、事実も、知識も、理論も、目的を達成するための道具であるというものがある。この考え方は会計等現在やっている業務にも通じる。

    「あるシチュエーションにおいて、何が重要で何がそうでないのかを、『何故重要か、重要でないのか』を説明しながら、体系的に整理し、他の似たようなシチュエーションと論理的に区別する。この技を身につけることが、アメリカのロースクール教育の中核とも言えよう。」
    ・現在の業務も「有意義な事実」は何かを常に意識しながら、営業部の話を聴いたり、考える事が重要。

    ・議論を有利に進める方法は「定義を求める、攻める、正す」こと。
    ①言葉の定義を自ら提供する
    ②すでにある定義を攻める
    a. 厳格な定義を求めることによって、自分がその範囲外(内)にあることをはっきりさせる方法。
    b. 定義の曖昧なところで逃げ道をつくる方法。
    ・使う人によって、言葉の意味は随分異なってしまう。定義を求めることによって、共同認識が確認された上で議論がスムーズに進むことがよくあり、非常に有意義である。外来語が使用されるたびに「定義を求める」技は特に効果的だろう。
    ・相手の話に真っ向から反論できない場合、定義を求めて時間稼ぎをし、隙が見えてくるまで守りの姿勢を維持できることがある
    ・絶対的な表現、〝いつも〟や〝皆〟のようなものは非常に攻めやすい。絶対的な表現を使われたなら、例外を指摘すればよい。
    ・主観的な判断が入るような表現も攻めやすい。何故なら、〝誰が、何に基づいてその主観的な判断をするのか〟という問題が発生するからだ。形容詞はこれに類することが多い。
    ・「ルールだから」とか「そういうことになっているから」ということに対して、「何故」と聞くことは議論の出発点になり、他の技を使う場面がきっとでる。
    ③「定義を正す」
    ・「つまり」や「要するに」のような言葉で始まる文を使えばよい。ここで肝心なことは、相手が持ち出した言葉の定義を、自分に有利な定義に作り変えることだ。
    ④アナロジーを用いる
    ・人が慣れていないものを慣れているものにたとえることや、複雑な事柄を単純な事柄にたとえることは、人の理解を得るために非常に役に立つ。しかも、理解をしてもらうだけではなく、アナロジーを高度に使うと、「定義を正す」技の延長線として、議論を自分が行きたい方向に展開させることができる
    ・アナロジーはあるものの性質の一部を取り出して、同じような性質をもつ別のものと比較することにより、その二つのものを同じように扱う状態にするための技である。
    ・アナロジーはもともとの「もの」から飛躍していればしているほど、攻めたり、逆用したりすることがしやすくなる。

  • アメリカの弁護士の思考法を紹介したもの。
    日本とアメリカの法制度・慣習などの違いから、アメリカの弁護士が日常の業務で物事をどのように考えているかまとめられている。
    アメリカでは「法は作っていくもの」という観念の下、法解釈が変えられる土壌があるために、アメリカの弁護士は、法解釈を自分サイドに有利な方向に読み替えて、それを論理的に主張していくスタイルをとる。そのため、法が事実にどのように適用されるかではなくて、事実に照らして、法の解釈を自ら作り上げていくとのこと。なので過去の判例を否定するなんてことも結構ある。
    大事なのは「事実の見極め」と「自分の方の解釈を説得させるための論理構築」。日常のコミュニケーションでの基本スキルに集約される。
    日米の法制度の違いから、アメリカの弁護士の思考法を照らす本書の構成は理解できるのだが、単純にアメリカの法制度の紹介にとどまる箇所が結構ある。3章、6章なんかは特にそう。なので「だから?」という疑問が読んでいる中で何度も出てきた。

  • 人民(陪審員)が地域の目となって、サービスを監視しているアメリカの姿は羨ましく感じました。陪審員制度に色々感じることもありましたが、この本で少し考え方が変えられたかも。

  • アメリカの弁護士が、何を武器に裁判を闘うかを教えてくれる。
    根底にある「政府は法を悪用する」という前提は、いよいよ日本でも必要になってしまった感がある。

  • 「思考パターンのキーポイントは一つは、事実が先にあることだ」

    ものごとをシンプルにとらえる思考法のお話。

    タイトルの通り、法律関係の話が中心ではあるが、むしろ制度や仕組みの話はあまり載っておらず、大半を占めるのは、アメリカの弁護士が実際に行う ”思考のプロセス” の話が多い。
    この方面とはまったく無関係な自分でも参考になるものが多かった。

    アメリカは、”起訴の国”というイメージが強いが、また違った角度からアメリカを眺めることができる。

    コーヒーこぼして5千万円事件の真相が…

  • ロジックで事象を整理し、パターン認識する地頭の良さこそロイヤーの条件ということか。

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