日本語教のすすめ (新潮新書 333)

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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106103339

作品紹介・あらすじ

「日本語は英語に比べて未熟で非論理的な劣等言語である」-こんな自虐的な意見に耳を傾けてはいけない。われらが母語、日本語は世界に誇る大言語なのだ。「日本語はテレビ型言語」「人称の本質とは何か」「天狗の鼻を"長い"ではなく"高い"と表現する理由」等々、言語社会学の巨匠が半世紀にわたる研究の成果を惜しげもなく披露。読むほどに、その知られざる奥深さ、面白さが伝わってくる究極の日本語講座。

感想・レビュー・書評

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  • 第4章「日本語に人称代名詞は存在しない」については、家族の中で使われる「父」「姉」など卑近な例を用いて、日本語での指示代名詞について説得力のある興味深い説明がされていて面白い。
    また、著者は海外における外国語学習の位置付けが、例えばライバル国の事情をいち早く把握して出し抜くことであったり(米国)、自国の歴史を他国に宣伝することであったり(中国)して、普段考えているより多様な目的が存在しているということを知れたのは面白かった。

    一方で、著者の過ごしてきた年代を考慮すると仕方がないことのようにも思えるが、国民と民族を同一視する表現や、いわゆる「若者」に対してのステレオティピックな思いが表されているのはすこし気になった。
    また、著者は英語学習強化よりもむしろ、日本語教育施策を積極的に展開することで日本の国力増大を図ろうという、「日本語教」の立場を取る。しかし、個人的には、主にフィージビリティの観点から、世界の主要国(しかも主要国の意味するところも今後数十年でまた変わっていく)のすべてに日本語教育を行き渡らせることと、実質的な国際共通語になった英語を習うことなら、明らかに後者の方がコスパが良いと考える。つまり、私は「日本語教」には入信できそうにない。

    「日本語教」の信者にはなれそうにないが、日本語の響きや表現、日本語で書かれた詩や歌詞などはとても好きなので、「日本語愛好者」くらいで生きていきたいと思った。

  • 言語学の“3K”は、やらない――とおっしゃる言語社会学者、
    鈴木孝夫先生の日本語称揚集成。
    「言語学の3K」とは、
    敬語(の研究),系統論,漢字の起源解釈の三つを指すのだそうだ【*1】。
    本書は『新潮45』で2007-2009年に18回に渡って連載された「日本語万華鏡」の
    加筆修正版で、新しい表題は最終回のタイトル。
    個人的には「日本語万華鏡」のままの方がよかったような気もするけど、
    ともかく、最近になって改めて読み直したくなったので購入。
    日本語独特の曖昧さ、ややこしさと、その理由について、
    また、欧米の言語との違いについて、
    一般人が自明のこととして普段深く考えずにいる問題に光を当て、
    わかりやすく解説。
    日本語は日本国内でしか用いられないマイナー言語だと考えられているが、
    使用者である日本人は一億人以上存在するのだから、立派な「大言語」なのだし、
    政治経済における国際的な交渉力を底上げするためにも、
    日本語および日本文化を積極的に海外へ発信すべきである――とのこと。
    最近は、漫画やアニメを通して日本に興味を持ち、
    日本語を理解したいと考える諸外国の人が増えている様子が、
    盛んにメディアで取り上げられていて、
    少しずつ、いい方向へ向かっているようだけれども、
    相変わらず政治の場では今一つ、二つ、といったところだろうか。

    しかし、連載中同様、
    不意に遠藤ミチロウの名が出てきたところ【*2】で笑ってしまった。

    【*1】『新潮45』2007年5月号「ビートたけしの達人対談」より。
    【*2】『新潮45』2008年1月号,本書ではp.163。

  • 240102〜240111

  • 訃報をきいてから書店に行ったら目についたので入手。
    学生時代に『日本語と文化』『日本語と外国語』(岩波新書)などあれこれ読んでとてもお世話になったが、最近(といっても10年以上前)のこれは読んでいなかったな、と。

  • 「しょうもない愛国本じゃないの」かと疑っていたが、日本語や言語というものの奥深さを感じさせられた。

    日本人が言語について自虐的な見方をしているとの問題意識を背景に、日本語の世界をもっと広げていくことを目的とする「日本語教」を広めよう...という筋書きで、日本語と他言語の比較を通して、どちらの言語が優れているとかいう訳でなく、日本語には日本語なりの面白い世界があるということを、様々な例で紹介している。

    なぜ古代ギリシャ語ではクジラと蛾を同じ単語で表すのか、に対する答えや、日本語で人称代名詞は欧米と使い方がどう異なるのか、など、ちょっとしたトリビアから英語を勉強した人ならなんとなく考えたことがありそうなことなどについて、筆者の身近な経験を踏まえて説明しているため、かなり楽しく読むことができた。

    「日本語教信者になって日本語を世界に広めるべきだ」とまで熱くはならなかったし、現実的にそこにエネルギーを使う意味は何かまではわからなかった。しかし日本語のわかる自分が日本語のことをまだよく分かっていないのはもったいない、もっと自分の使う言語の深みを知りたい、と興味がそそられた。

    なお、「大東亜戦争」という呼称や植民地戦争に対する見方など、やや国粋主義的に思える違和感のある表現もあり、筆者のその姿勢には全面的に賛成できない。ただし筆者の指摘する「日本語が劣等言語というのはおかしい」という点については、その通りだと思った。また、言語により他国と交渉をすることで武力行使ではなく外交による平和を実現するためにも日本語の弱みである「他動機能」的用法の不用意を解消していこう、という提言はとても面白かった。

    そして言語も自由で流動的に変わっていくものであり、それは自分たちが変えて意味を与えていけるようなものなんだと気づいた。日本語はこんなところが弱いからどうやったら、「翻訳調」にならずに弱いところをカバーしていけるかな、とか、主体的に、客観的に自分の言語というものを俯瞰的に分析できるんだと目を開かされた。例えば上記の「他動機能」の弱みを日本語でどう解消すべきか、考えられるようになったといえる。あるいは、英語とその翻訳による文献ばかりの 「Non Violent Communication」と呼ばれるような自己主張に関わるコミュニケーション論についても日本語で考えるとどうなるだろうかというのも考えたい。

  • 文学部と医学部を卒業した上で、経済学や地球環境にも精通してバランスの良い主張が人気の慶応大・名誉教授の鈴木センセイの本。世界中に広がる英語が幅を利かす「英語帝国主義」のもたらす問題点を批判し、極東の一島国だけで話されている日本語を「世界に誇る大言語」と絶賛し、その素晴らしさを解説する。日本で7色とされている虹は英米では6色・ドイツでは5色という「文化と言語」の関係を示したエピソードや、漢字に音訓の両読みがある理由、自らが「日本語教」なる新興宗教(?)を立ち上げた背景など、楽しく読める「鈴木ワールド」入門書とも呼ぶべき本。

  • 日本語の構造について分析した一冊。

    日本語について外国語との比較が非常に面白かった。
    またタイトルの通り、日本語に対しての愛情と情熱があふれてた。

  • 外国人に日本語を勉強してもらうことに非常に共感を覚えた。
    日本の文化である日本語をどんどん発信して、外国人に日本後を覚えてもらい、移住して働いてもらうことも日本の未来にとっては重要なんじゃなのかなとこの本を読んで思った。

  • 音読み 訓読み

    漢字からなる専門用語は理解しやすい

    猿人、pithecanthrope apeのギリシャ語、後半がmanを表すギリシャ語

    英米は新聞や雑誌など少数のインテリを念頭においた高級紙と、一般大衆向けとはっきり分かれている
    日本は国民全てを対象とする一般紙がある。
    日本語が社会の上下を区別する必要のない言語だから

    何度かアメリカの大学で日本語を教えた経験から気づいたことは、学生たちの学習態度がとても攻撃的だということでした。自分たちが理解できないことがあると、外国にはこういう考え方もあるのかとか、あるいはこの点はアメリカ人も見習ったほうがいいのではといった、自分たちの在り方を反省する態度はほとんどみららず、すぐ日本批判すなわち相手攻撃にでるのです。

    中国の外国語教育の重点は、中国のよさ、中国人に考え方を外国に広め外国人に知らせて、相手を畏怖させるという自国のよさの対外宣伝、外国人の啓蒙に置かれていた

  •  言語と文化の関係の部分は面白く読んだ。

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著者プロフィール

1943年岩手県生まれ。三菱系エレベーター会社を経て1967年に独立創業し、鈴木エレベーター工業(現在のSECエレベーター)を1970年に設立。独立系エレベーター保守会社という新しい業態を日本に誕生させる。エレベーターの構造を知り尽くす「技術屋」で、ビジネスの面でもエレベーター業界の風雲児として活躍する。

「2017年 『技術屋が語るユーザーとオーナーのためのエレベーター読本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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