文明の海洋史観 (中公叢書)

  • 89人登録
  • 3.74評価
    • (8)
    • (7)
    • (16)
    • (0)
    • (0)
  • 9レビュー
著者 : 川勝平太
  • 中央公論社 (1997年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120027154

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジャレド・ダイア...
ヴィクトール・E...
有効な右矢印 無効な右矢印

文明の海洋史観 (中公叢書)の感想・レビュー・書評

  • 1997年刊。著者は早稲田大学政治経済学部教授。


     好評媒体を異にする4つの論考(⑴近世日本の鎖国=自給自足の現代的意義。⑵マルクス段階史観への疑問符。⑶文明の海洋史観。⑷現代日本の目指す道と羅針盤。)を纏めた一書である。
     全然方向性の違う論考をひとまとめにしており、所々、方向性の違う叙述(例えば、梅棹忠夫の「文明の生態史観」につき、⑵では反マルクス史観の点で評価する一方、⑶では、社会変革のインパクトに対する論の誤謬を指摘する等)もあって、反マルクス史観以外の著者の立ち位置が明確にならず、読み手に混乱を来しそう。


     ただし本書が梅棹論のアンチテーゼ足り得るかは、甚だ疑問である。
     まず、①シュンペータの議論に依拠しつつ、物産の流入が経済発展と、これと不即不離の社会変革をもたらすというが、では近世期に先立ち、イスラム交易圏の内にあった東南アジアは、人的・物的交流の結節点となっていたことをどう見るのか。
     近世期以降、西欧の物的交流の結節点になっていたことはどうなのか。社会変革が東南アジアであったのか。おそらくはそういう事実は無かっただろうが、この点に関しては判然としない論の展開が見受けられる。

     また、②西田→今西→梅棹と続く(いわゆる)京都学派の発想と海洋史観の関係が不明瞭である。しかも、梅棹はともかく、今西に反マルクス史観のような意図があったかについては、本書の記述からも否定的に見えそうだ。

     ③さらに分子遺伝学が勃興しつつあった90年代半ばで、ダーウィニズム対今西生物学とが全面的に対立している立場だという視座は調査・勉強○○?と言わざるを得ない。
     環境適応性の強弱が進化と絶滅に関わることについて、両論は場面を異にするだけである。

     ④そもそも反マルキシズムというが、段階史観以外のマルキシズムの要素を否定するには別の論を要する。むしろ、経済や資本の分析枠組としての有用性は直ちに否定されているわけではない。かようにマルキシズムの検討不足が見え隠れする。

     ⑤著者の言う海洋史観においては、海からの物産到来が経済発展の、ひいては社会変革の端緒とみる。
     しかしながら、⑴シュンベータに由来するこの見解の妥当性如何?。物産を含むもう少し広い意味での情報伝来こそがインパクトでは?との疑問が生じる。
     加えて、⑵大陸国でも陸路を通じ、沿岸部は海・陸両面から物産が到来する。これらを齎すのは海からだけではない。
     しかも、⑶海と陸の違いは、パイプラインとタンカーの違いに例えられるだろうが、ここからは、流入物産の量、遠距離地域間の直結という違いは見て取れるが、陸が情報や物産を遮断するとまでは言い難い。
     かように海陸の違いを過度に強調し、説得的ではない。

     もちろん、海を介した隔たりが情報を遮断するわけではなく、人的・物的交流を妨げてはいないということは承認するし、想定以上の量と質の交流が、それこそ古代から続いていたことは積極的に首肯すべきだろう。
     しかし、だからと言って、文明発祥とその高度の発展の要因が海の道からの物産流入にあったというのは、余りにも短絡的かつ実証性に乏しい。
     梅棹は実は地域の生産性という観点で、環境を重視している上、西洋一極への批判はしながらも、大陸にある中国文明の勃興を否定しているわけではない。実際のところ、中国文明の揺籃地は、黄河流域においては、かなりの内陸にあることをどう考えているのだろうか?。

  • 唯物史観と海洋史観を陸からとらえた歴史感とし、それに反駁を加える形で海洋史観を打ち出した書物。
    どの理論が正しいのかのポジションを取ることに意味はないと思う。
    海に関しての考察がもっとあれば非常に読みやすかった。
    唯物史観と生態史観の説明で半分以上w
    唯物史観と生態史観のおさらいにはちょうどよい。

  • 今西、梅棹の流れ。

  •  唯物史観と生態史観の2つに代表される戦後日本人の歴史観に挑戦した論考である。

     奴隷、農奴、賃金労働者など生産に携わる人間の生産力、生産性を主たる社会変容の推進力とする唯物史観と、内陸に生きる遊牧民の暴力を主たる社会変容の推進力とする生態史観では、これまで「海洋」という視座が顧みられることはなかった。それ故、特に日本の歴史を適切に捉えることが出来なかったのではないか、というのが川勝の問題意識である。

     川勝の提示する海洋史観は、海外から押し寄せてくる外圧を社会変容の推進力の一部とみるものである。貿易によりもたらされる新規の文物が徐々にせよ、急激にせよ、輸入国に生活革命をもたらす。新規の文物をもたらす海洋の役割を歴史を理解するための視座に取り入れるべきである、というのが、その主張だ。

     相当雑駁に要約してしまった。主張は過ぎるくらいに簡潔であるが、これを導くまでに、西田、梅棹、マルクスらが著した文献の丁寧なレビューがある(第2章にあたる転の章)。川勝の主張に賛同するかどうかはともかく、この部分を読むだけでも価値があると思う。

  • [ 内容 ]
    新しい歴史観、遂に出現。
    近代はアジアの海から誕生した―。
    戦後、誰も疑うことのなかった陸地史観による通説に真っ向から挑み「太平洋文明の時代」に日本の進むべき道を提示する。

    [ 目次 ]
    序 新しい歴史像を求めて
    起之章 「鎖国」と近代世界システム
    承之章 歴史観について
    転之章 文明の海洋史観
    結之章 二十一世紀日本の国土構想

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • <a href="http://bbs1.sekkaku.net/bbs/?id=mitosemi&log=2407">【三戸ゼミ掲示板】にて、ご紹介頂きました。</a>

  • 2章が難しすぎます…。
    海洋アジアのレスポンスとしてイギリスの近代世界システムと日本の鎖国が誕生するという話。
    かなり興味深い経済論。

  • 近代西洋:「存在と時間」、京都学派:「存在と空間」
    −格物致知−

  • 近代日本がなぜ発展できたか、丁寧に理解したい人向け。

全9件中 1 - 9件を表示

文明の海洋史観 (中公叢書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

文明の海洋史観 (中公叢書)の作品紹介

新しい歴史観、遂に出現。近代はアジアの海から誕生した-。戦後、誰も疑うことのなかった陸地史観による通説に真っ向から挑み「太平洋文明の時代」に日本の進むべき道を提示する。

ツイートする