同じ年に生まれて―音楽、文学が僕らをつくった

  • 中央公論新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120031809

作品紹介・あらすじ

1935年生まれの世界的指揮者とノーベル賞作家。21世紀の日本への思いを率直に語る、ビッグ対談。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は、小澤征爾さん、 大江健三郎さん(1935~2023)。

    大江健三郎さんの作品、ブクログ登録は2冊目。
    小澤征爾さんの作品、ブクログ登録は1冊目。

    大江健三郎さんの経歴等は、既に調査済みなので、今回は、小澤征爾さんを、ウィキペディアで見てみます。

    ---引用開始

    小澤 征爾(おざわ せいじ、1935年〈昭和10年〉9月1日 - 2024年〈令和6年〉2月6日)は、日本の男性指揮者。1973年からボストン交響楽団の音楽監督を29年間務め、2002年 - 2003年のシーズンから2009年 - 2010年のシーズンまでウィーン国立歌劇場音楽監督を務めた。

    ---引用終了


    で、本作の内容(目次)は、次のとおり。

    ---引用開始

    ・僕らは同じ年に生まれた(大江健三郎)
    ・若い頃のこと、そして今、僕らが考えること
    ・芸術が人間を支える
    ・“新しい日本人”を育てるために
    ・語り合えてよかった(小沢征爾)

    ---引用終了



    本作を読んだのは、2008年なので、今から16年前になりますか。早いものですね。

    以下は、私の当時(47歳)の読後感の転載です。


    『同じ年に生まれて』の読後感です。
    この本は、小澤征爾と大江健三郎の対話集です。
    対話が行われた時期は、2000年後半。
    よって、当時の対話者は65歳位でした。
    ちなみに、この本が発行されたのは2001年です。

    音楽と文学の分野の巨人の対話ゆえ、なかなか凡人の私には理解が及びません。
    何となく雰囲気を楽しんだという読書になりました。

    大江健三郎の小説は高校時代に読んだ記憶がありますが、内容はさっぱり忘れてしまいました。
    最も読んだ作品は、『飼育』や『芽むしり仔撃ち』といった初期の作品です。
    私にとって、その後の作品は難解化し、とても読めるものではありませんでした。

    この本の中で、大江健三郎が、御自身の「大切な先生」を語っておられました。
    渡辺一夫という方です。
    知らない方なので、調べておきます。

    ウィキペディアによると、「渡辺 一夫(わたなべ かずお、男性、1901年9月25日 - 1975年5月10日)は日本のフランス文学者である。
    東京出身。暁星中学校でフランス語を始め、第一高等学校文科丙類を経て、1925年、東京帝国大学文学部仏文学科卒。同大では辰野隆に学んだ。1956年、文学博士(東京大学)。」

  • また面白いものを読んでしまった…。これも手元に置くべき本かも。。

    大江 演奏会の名人芸で、僕たち聴衆が、やはりバッハの音楽を現在生きることができることはある。だから僕達が感動するんだと。原則として中心にある芸術の受容のかたちとして、文学も僕はそうだと思うんですね。文学の場合、演奏家はいませんけど。小説を読む人間が演奏家と聴衆とを共に演じているわけ。上手くゆく場合はね。 (p.98)

    クラシックは西洋のオケでこそと思っているのと、本は原則今生きている人の本は積極的には読まないという信条を持っていたのだけど、その態度を改めるに十分な会話でした。

    大江 …一方、作家たちに言えば、どんな若い作家にも自分は人間を根底から支える文学を創ってるんだという意識を持ってもらいたい。…では本当の文学の読み手を創るための教育の敵は何かといいうと、僕は、あきらかにテレビだと思いますね。…現在のテレビは完全に消費文化で、テレビが映っているあいだだけ消費されるものです。…
    小澤 ええ (p.99)

    本当にそれなすぎるのですが、2000年から四半世紀が経とうとしている中、状況はさらに悪くなっているのか、それとも新人類が生れようとしているのか…

    小澤 …何で音楽でコメディーができたかというと、音楽の根底に、あなたは笑うと思うけど、人間が持っている情というものがありますね。…その情というもののなかには、ちょっといつも悲しみというのがあるんじゃないか。寂しさとか。…日本人だけじゃなくて人間が持っている本性、要するに、芸術が人間の生きていることに交わるとき、どこかにある寂しさとか悲しさ。なぜかというと、人間には必ず死ぬという宿命がある。生まれた瞬間にだれかと分かれなきゃいけないとか、会えば必ず別れというものがあるとか、そういう寂しさもあるし悲しさもある。人間の情というもののなかに必ず悲しみがあるとすると、音楽は、理屈なしに、それを出すのに一番手っ取り早いものを持ってたんじゃないか。音楽の響きのなかにそれがあるんじゃないか。そうすると、それがあったからこそ今度はそのなかから楽しい音楽というのが出たんじゃないか。(p.106-107)

    もうここ100同意でした…

    小澤 …だけど心配なのは、いまの日本の人たちの中には、音楽のダブルスタンダードを当たり前、あるいはそのほうがかえって都合がいいように思う人がいるかもしれない。それが恐ろしいです。そういうことが少し分かりかけてきたんで、僕は命を懸けてでも闘うと思っています。(p.125)
    この発言に対して大江が日本画や文学も普遍的なものにしてやろうという「野蛮なような情熱」が強くなかったと同意しているが、ここも改めて背筋を伸ばすことになった一節。本当に頭が下がるというか、一生懸命真面目に挑んでいる姿に勇気をもらう。

    小澤 …日本人は真面目な人が多いんですね。勉強家が多いんですよ。僕もそうですけど。勉強ばっかりしていると、勉強している相手のスコア、音というのは、だんだん非常に複雑になってきますから、それに無我夢中になると、自分が通訳者になるという使命を忘れる、あるいは気がつかない。これが恐ろしいんです。そうすると、その人の個というものが出てこない…(p.153)

    これは音楽に限らず日々の私の姿勢にも通じるもので(またもや)、また背筋が伸びる。いや本当にまじめに勉強だけしていて、、、自分という媒体を通して発言することを忘れてしまう日々、、、、

    【メモ】ブラームスの弦楽六重奏局の第二番の二楽章(p.156 -光君すごすぎ)

    大江 …音楽の演奏ということは、もう一度生き直すといいますかね、武満徹という人をもう一度生き直すことじゃないか。武満さんの人生のある局面を演奏家と聴衆の僕らが一緒に生き直すということじゃないか、と思うんです。(p.205)

    二人の会話がこうやって紙に残っていることが僥倖だと思える本でした。またいつか読みなおそうと。
    サイードの『音楽のエラボレーション』も読みたい

  •  クラッシック音楽の知識がほとんどないので,読み進めるのが大変でした。でも,世界の舞台でも活躍する二人が,どんな風に日本というものを見ているのか,個人というものを捉えているのか…ということはちゃんと伝わってきました。
     本当の意味での「開かれた個人」の大切さを感じました。
     1935年生まれということは,お二人は,2013年には78歳になるんですねえ。

    • おがちゃんさん
      追記 大江健三郎さんは、2023.3.3に亡くなられました。88歳でした。
      追記 大江健三郎さんは、2023.3.3に亡くなられました。88歳でした。
      2023/03/13
  • 音楽、文学の大家の二人の会話は興味深い。同じ年齢という共通点があるからこそ、共鳴するところも多々あるのだろう。

  • 良い師匠に巡り会うことは大事だなあと思いました。それから、小澤征爾さんの教育熱心なところは、音楽が大江さんの小説のように後世に残らない、歴史上の点のようなものであるため、何か形に残したいと思うと音楽に対する考え方を伝えていくという行いになるようです。

  • 世界に誇る音楽家と文学者の対談面白く読んだ。

  • 100607 「忘れ物」を取りに戻ってへとへとになった電車のなかで,小澤征爾さんんと大江健三郎さんの対談『同じ年に生まれて』を読了。「ディレクション」「エラボレーション」という概念をめぐる話がおもしろかった。大江さんが言及していたサイードの『音楽のエラボレーション』という本も読んでみたい。小澤さんが,武満さんのことをプチ・プランス(星の王子さま)みたいな人,と表現していたのにはグッときた。彼らの対談を聴いていると,「同時代」というものの素晴らしさを強く感じる。

  • 自分の手法で自分の世界を構築した、豊かで自由な感性を持った2人。なにゆえに、こんなにも魂の若々しさを保ち続けていられるのだろう。

  • 不思議な出会いをしたこの本。内容もとっても素敵でした。教育について、芸術について、日本について。おすすめです。

  • [2005.10]

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