少女は花の肌をむく

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120048586

感想・レビュー・書評

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  • 僕自身早生まれでもあって、精神的な発達も遅く、小学校の高学年から、女子がどんどん変わっていってしまって、何を考えているのかさっぱりわからなくなり、ちょっと遠い存在に感じていたことを思い出した。
    この作品で、少女たちの世界がとてもリアルに描かれている一方で、僕の知っていた女子はいったいどうだったのだろうとも思う。クラスにはちょっとかっこいい出木杉君のような男子がいて人気があったけれど、彼をめぐってこんなかけひきがあった気はしない。女子の注意はどちらかというと、テレビの中のアイドルのほうに主に向かっていたような記憶がある。かしこくて委員長タイプの女子が力を持っていて、うまくクラスを回してくれていたからかもしれない。おだやかなクラスの人間関係の中で、一歩ひいたところにいて、本の世界と中学受験に没頭できていたのもそのせいなんだろう。

    こんな世界を描ける朝比奈さんは、子どもの頃、みなを観察してこんなふうに分析していたのかなと思う。ちょっとしんどそうだ。

    後半突然20歳の世界に進む。サークルの男女差別的な待遇に疑問を持ちながらもそれに適応していっている阿佐に、野々花が批判を述べる、というエピソード。
    こういう風景って今でもあるのか不思議。時代設定は現代のように思われるけど、柚木麻子が『早稲女・・・』で書いてた話は彼女自身が大学生だった頃の印象だったんだが、今でも残っているのかなあ。年齢自体は柚木さんが81年生まれ、朝比奈さんは76年生まれ(ちなみに私は70年生まれ)。僕自身が大学生の頃、はじめはいっていた京大の男子と近隣女子大の女子でできているサークルにはこういう雰囲気があって、そこではまさに京大の女子は「早稲女」的扱いを受けていた。
    僕はなんかそれになじめず京大の内部の男子・女子だけのサークルに移っていったんだけど、女子の大学進学率が高まった今、きっとこういう男女差別はだいぶ珍しくなっていそうなんだけど、違うんだろうか。

    こういうものが許せない野々花が、ヤリマンと批判されても屈しないという性格に描かれている、キャラクターの造形の対立構造みたいなものは納得できるのだけれど、その心情があまりよく理解できないのは僕が内心そうした女性を認めたくないからなのか。美人の女の子は、まわりから言い寄られることがあまりに多いので、男性に対する警戒心が高いはず・・・という定型的な見方から逃れられないからなのか。

  • 小学校で同級生だった少女達が、年を経て20才に成長。10才と20才、その時どきの心の移り変わりや考え方の違いを描いたお話。

    1人ぼっちになることを何よりも恐れて、常にまわりの動向に目を光らせている少女に、芸能人のように美しいADSD 気味の少女、まわりから「変人」と扱われていつも1人でいるこれまた発達障害のある少女。

    ラストがちょっと変な感じ、現実はこんなものなのかな?他の二人は良いにしても、野々花のラストはこれでいいのか?春太はこれでいいのか?

  • 小学校時代から振り返り
    大人になった20代
    それぞれ考え方は違うけどなぜか今は仲良しでいる女子
    ちょっと設定が無理な気がするなあ。

  • 女子は皆が共感できる小説ではなかろうか、と思った。
    女子の心情が事細かに、痛々しいほどに書かれており、自分の小学校時代と大学生頃を思い出しながら読んで、とても面白かった。
    まるで自分の事かのようでつい応援したくなった少女、阿佐。
    到底私には理解できないけれど、自分の思うがまま生きてどこか羨ましい少女、野々花。
    変わっているけれど恨めない少女、咲。
    小学校の頃は、女子特有のどこかのグループに入らなければならない焦りとかあったな...でも結局その時の友達なんて大人になってまで関係が続くわけでもなく、"季節ごとに取り替えてゆく服"ていう表現そのもの。大人になれば居心地のいい、それは意外と当時は仲良くなかった友達、ていうのは分かる気がする。
    二十歳の阿佐と野々花が一回言い合いになった時、どう仲直りしたのか気になるけれど、そうゆう喧嘩とかすれ違いを経験してこそ3人の友情はより深いものになっていたのかな、とスッキリした結末だった。

  • の底に沈め、終わったことしていた過去の思いや経験が読みながら、ざわざわと蘇る。子どもの頃や思春期が綺麗で懐かしさに満ちた善きものなんて、嘘。実は生々しく、残酷で小さな社会だったと私の昔の断片を思い起こす。阿佐・野々花・咲3人の小学生のクラス替えの様子から物語は始まる。同調圧力、マウンティング、派閥作りが微細に描かれ、女子特有の面倒くささが充満。言葉にできない感覚を文字にできる作家さん。

  • おもしろかった。女子同士の関係があるあるだった。三者三様なのに、どの子にも共感できる不思議。

  • 少女達の彷徨を掬いとった傑作長編。

    三人の女の子を通して、思春期女子をリアルに描いた作品。
    十歳と二十歳、大きく分かれた二つの章によって描かれています。
    元・女の子としては身に覚えがあり胸が痛む内容です。あれもこれも、わかるなぁ。
    三人のうち二人は“普通じゃない”と言われてしまうタイプで、それがまた切ない。
    私も群れるのが苦手だったな…。大丈夫だよ、人それぞれでいいんだよと言ってあげたい。

  • 一人を恐れ陰口にも励む十歳の阿佐に共感出来ず、変わり者の二人の方が馴染んだ。後半はアパレルショップで働く咲と芸能活動を始めた野々花の個性が硬質な十歳時より浸透し柔らかく、不思議に友達になっている二十歳の三人が、大学でサークルに励む阿佐はやっぱりたまに苦手だけれど、パステルカラーのように心地好かった。

  • 少女のうすらどろどろした心情を書いたおはなし。

  • 女子。恋。小学生。大学生。仕事。モデル。
    十歳と二十歳の彼女たち。女子特有の世界。それぞれにコンプレックスを抱えてたり、抱えてなかったりだけど、十歳の彼女たちはみんな気高いな。三十歳、四十歳の彼女たちはまたどんな風なんだろう。

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』『人生のピース』『さよなら獣』『人間タワー』など多数。

「2021年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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