- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120053481
作品紹介・あらすじ
70歳の夏川秋代は、夫を亡くして公団住宅にひとり暮らし。ある日、「(長女の巴と)家族になろうとしている」と語る若い男が突然やって来た。戸惑う秋代をよそに家に上がり込む謎めいた男。彼は本当に娘の婚約者なのか、それとも新手の詐欺なのか――。
秋代には実は、長女だけでなく、二人の息子にも男の来訪について相談できない理由があった。アメリカで未婚のまま娘を産んだ長女、男らしさの抑圧に悩み在日韓国人のパートナーとうまくいかない長男、借金を重ねて妻子に出て行かれた次男……こじれた家族の関係は修復できるのか。 現代文学の最前線を走る作家が、家族のあり方や人々のつながり方を問う渾身の長編。
感想・レビュー・書評
-
読んでいても、なんとも言えないもやもや〜っとした感じが否めない。
謎の訪問者は、詐欺師なのか…それとも歪んだ家族を修整すべく福音をもたらす救世主なのか…
するりと家に入り込み、家族になり居ついてしまう…
イヤ〜なんで家に入れる。
無理だわ。
でも、どうなんだろう。
自分が心狭いのか…
こういう者への扉なのか…心を開けろと解釈すべきなのか?
いろいろな問題を抱えているからこそ、どうにか新しい風を入れたい…という思いなのだろうか?
今まで読んだことのない内容だから消化しきれなかった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
詐欺の話かと思っていたら、思わぬ方向へ。
それも予測不能な流れが次々に展開されて・・・
家族、地域、ジェンダーなど、様々な事柄が描かれていて、社会問題作か?とも、におわせる。
けれど、それぞれの登場人物が言葉で語るので、話はわかりやすい。
最後はちょっとあっけなかったけど、まあ良しとしよう。
植物描写が前作読んだ「植物忌」とリンクして、違う楽しみ方も出来た。 -
登場人物がびっくりするほど多いわけではないけど、それぞれの言い分(話?)が長すぎて、ちょっぴり斜め読みをしてしまったところもあることを認めます(すみません)。
現実には、難しいことだと思いますが、この小説のように、開かれた扉があって、必要とされる人を招いて幸せな生活が送られるとどんなに素敵なことでしょう‼️
-
有象無象が入り乱れるファミリードラマ?あらすじを見ても想像つかないような内容ですが、読んでいるとマイノリティーについて考えさせられる内容だし、対話の大事さを考えさせられることも多かった。面白いとかいい話だとかいう所からは離れた所で魅力を感じる本でした。
違和感だらけの内容だけれども、荒唐無稽と切り捨てるにはもったいない本でもあります。人には勧めないけれどこの本に辿りついた人と話をしてみたい。そんな物語でした。 -
書評見て図書館予約した。
新聞連載なんですね。
読売取ってても、途中で読まなくなっただろうな。
登場人物がややこしいし、
ニックネーム(?)余計ややこしいし。
家族ってホント厄介だけど、ここまで辛辣な言葉投げつけ合うのだろうか?
他人の介入を得て。
ごめんなさい。
≪ 言葉って やさしく包む 凶器にも ≫ -
もうなんて言うんでしょう・・・
いろんなことそれこそ昔からの積み重ねで、子供たちから一線を引かれてしまった秋代70歳代。
そんな秋代のもとに長女の交際相手だという男が現れる。
いつまでたっても紹介してくれないから一人で合いに来ました。いずれ家族になるんだから、とかなんとか調子のいいことを言ってたびたびやってくる。
そんな怪しげな男、突っぱねるべきなのに子供たちから相手にしてもらえない秋代は寂しさからつい相手をしてしまう。
それから、長男、その妻、次男、その妻そして長女の立場で、子供の頃からの思い出とともに今の状態になるまでの顛末が語られる。
「三人の子供が異常な性格をしているとは思えない。欠点もあるけれど長所もたくさんあってその混ざり合い具合は、そんなに人並みに外れているとは思えない」と思い返している秋代は、いわゆる毒母というのではないが、ちょっと無神経な言動をしてしまうところがある。
顛末を読む限りはちょっと双方問題ありなんじゃないかと思ってしまう。
妻たちもだんだん夫のその本性に気づき始めるが子供を抱えて身動きが取れない。
我慢できずに家を出た妻たちは、夫の妹の家に行く。
女同士、思いのたけをぶちまける、ぶちまける。
これが妻同士なら、愚痴、悪口で終わって進展はないと思うが、妹、つまり小姑が入っているので、幼い頃からの環境や、生い立ちや、家族の様子を聞きながら、初めて聞く話に、あきれたり怒ったり、心を痛めたりと、しているうちにもつれて絡まった毛糸玉の糸口が見つかり、するするとほどけるように、彼女たちの気持ちは知らず知らずほぐれていく。
そこに当の夫や母親までが呼び出されまたもや話し合い。
今までのわだかまりでお互いぎこちないながらも、だんだん誤解は解けて、ハッピーエンドとなるかと思いきや、なんだ?最後のこの展開は?
この場に秋代に付きまとっていた男が現れ、妹の家に同居していた女(他人)ともつながっていた。
他人の家に入り込み食住を提供してもらっているという。
それも無理やりではなく、その家族に迎え入れてもらって。
今回の顛末には彼らの影響がなかったとは言えないが、彼らのこの行動には賛同できない。だましあいとか、そう言うのでもない。
異様とすら思える。
ちょっと私にない異ジャンルでありました。 -
2020年12月22日を境に、200年続いた『土の時代』から『風の時代』に移ったらしい。本書を読み終えて、『風の時代』の人間関係ってこういうことだろうか、と思った。
誰にも悩みはあって、違うのはそれを言葉にできるかどうかということ。言葉にしないからと言って悩んでいないわけではない。
言葉にすること、言葉を持つこと、相手の言葉に耳を傾けること。
簡単なようで難しくて、とても大切なこと。
これまで私の視界には優志みたいな男性たちの生きづらさはあまり目に入っていなかったことに気づかされた。
女性の生きづらさに寄り添いたいと思っても、男というだけで敵にされてしまう辛さ、やるせなさ。
『これからの男の子たちへ』で、男の敵は女ではなくて、あなたに男性性を押し付けている社会だよ、というような文章があって、頭の中で繋がった。
新聞連載だったとのことだが、いろんな立場の人の生きづらさが書かれているこのお話が新聞というオープンな(普段小説を手に取らない人でも目に留める可能性のある)場所で連載されていたこと自体が希望だな、と思った。
ラストはキラキラと光が弾けるようだった。希望の光だった。 -
「家族」の中に「他人」が入ってくる話。丸いまんじゅうを狭い四角い箱に詰め込んだら形がいびつになる、という文章に思い当たることが多々うかんだ。
人はみんな程度の差こそあれ「だまされ屋」だと書かれていたけど自分的には、他人を思い込みだけで見ているから、「だまされ」たという気持ちになってしまって、その経験ばかりが積み重なっていくのかな、と思ったんだけど読みが浅いかな?