男の子になりたかった女の子になりたかった女の子 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.29
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本棚登録 : 931
感想 : 66
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120054273

作品紹介・あらすじ

今や国内外で話題沸騰の松田青子の最新小説集! 苦しい女性の人生をもっと自由にさせる、笑いとパンチが炸裂した12篇を収録。

谷崎潤一郎『細雪』をモチーフにした〝いつまでも身を固めない〟ゼリーが冷蔵庫で女子トークする「ゼリーのエース」/団地に住む年代の異なる二人の女性の人生がゆるやかに重なる「向かい合わせの二つの部屋」/古い女性観を押しつけてくる物語の〝地の文〟に、登場人物の女性が反抗し、ついには〝地の文〟を撃退する「物語」など、著者らしい笑いと風刺の利いた11編を収録予定。

感想・レビュー・書評

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  • よくわからないな、独特な感性だな…と思ったのが第一印象。
    今村夏子さんの作品を読んだ時と同じような心情。
    作者の頭の中はどうなってるんだろう、と思った。だけど、今村夏子さんとは違ったテイスト。

    昔もらった、機械音の出るバースデーカードを久しぶりに鳴らしてみると、くれた人の意識(?)と会話できるようになっていた話。
    冷蔵庫で固まっていくゼリーが、嫁に行って「身を固める」女性となる話。
    女の子の日のあの赤色が、あるときなぜかオレンジジュースになる話………(?)
    などなどの、短編集。

    どうやったらこんな発想が生まれるんだろう…と、頭の上に「???」を浮かべながら読み進めた。

    だけど、それは中盤まで。
    中盤(「許さない日」)ごろから、「あ、これは『女性』であるがゆえに受けた理不尽さや怒りがテーマなのか」と気づき始める。
    一般的にはフェミニズム小説もしくはジェンダー小説と呼ばれるものだと思う。
    (そのようなジャンルを読むのは初めてなので詳しくはわからない)

    そう考えるとタイトルにも納得だ。
    男の子になりたかった女の子、ではなくて、
    そんな女の子になりたかった女の子。

    はっきりと「男になりたい!女はいや!」とは言えなくて、だけどその一歩手前の状況に立たされている状態の女の子のことを、全編通して、題材として描いているのかなと。

    1つ1つの短編はとても短くて、さくさくと読み進められた。
    けど内容についていけず、流し読みをした部分もあった。

    就活のときのクレペリン検査(という名前だったのかと初めて知った)とか、確かに謎のテストだったなあ。

  • 『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』読了。
    最近ハマっている松田青子さんの短編集。パンチの効いた内容で読んでいるコチラまでもがスカッとする。普段から抱えているモヤモヤしていることをいろんな角度から押し退ける。面白いし、カッコいい。
    これくらい強い気持ちを持っていたら無敵になれるだろうねと思ったりするけどね。以前読んだ『小説版 韓国・フェミニズム・日本』にあった「桑原さんの赤色」をまた読むことができてよかった。復讐の色・赤色のアイシャドウを欲しいけど未だに買っていない。ずっと、真っ赤なアイシャドウを探してる。
    1番最後の「自分で作り上げてきた自分だけの目を信じろ。」でグッときて読み終わった。

    2022.8.30(1回目)

  • 女性の生きづらさ 脱出の道示す
    評 小林エリカ(作家)
    <書評>男の子になりたかった女の子になりたかった女の子:北海道新聞 どうしん電子版
    https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/549852?rct=s_books

    【DESIGN DIGEST】書籍カバー『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子/松田青子』、商品パッケージ『GO:GOOD おいしいオーツ麦ミルク』(2021.5.11) | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
    https://www.mdn.co.jp/di/contents/4575/79390/

    fumi ishino | 石野郁和
    http://fumiishino.com/

    男の子になりたかった女の子になりたかった女の子|単行本|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2021/04/005427.html

  • カードが喋ったり、ゼリーで娘を作ったり…何これ、不思議すぎる!面白い!…と前半は勢いよく読んだが、後半はこの世界観に慣れてしまい、また短編が苦手なこともあり、ペースが落ちる。
    ●『クレペリン検査はクレペリン検査の夢を見る』3度読み(笑)なのに最後のオチが理解できず…。
    ●『「物語」』これまた斬新!主人公は「物語」。登場人物は、みんな脇役!?

  • 初出も作風もテーマもばらばらな、まとまりがなさそうでいてそうでもない奇妙な短篇集。11篇の作品が収録されている。それぞれのタイトルも妙だが設定もかなりぶっ飛んでいる。「天使と電子」では10年以上前に留学先でもらったカードが喋り出すし、「ゼリーのエース」は擬人化したゼリーの娘たちの話だ。改めて振り返ると、どれも女性が主人公のフェミニズム的な話だった……のかな?

  • このタイトルはうまいなあ。はッとさせられ、とても読みたくなった。話題の作家だそうだが未知の作家、読み始めて文章能力に感心する。

    この短編集の最後に「男の子になりたかった女の子になりたかった女の子」があり、それから読む。
    単なるジェンダーギャップの話ではない。「気が付くのがゆっくりだったもどかしさ」「でも、そのほうがよかったかも」という思い、これからも気が行けばいいのよ、と。生まれたときにはひとりの人間個人と思っているはずなのに、知らずに作られていく自分に気づいたときの納得。男の子の格好をするのが「男の子になりたい女の子ではない」ということ。

    11編、それぞれにいいけれども、特に「ゼリーのエース」「向かい合わせの二つの部屋」「斧語り」が好きだ。

    「向かい合わせの二つの部屋」
    古い団地のお向かい同士の二人、漢字は違うがユキさんと呼ばれるふたり。片や20代のカップル、片や40代の女性ひとり暮らし。この二人の暮らしはTVドラマや雑誌やわたしたちが見聞きするものそっくり、つまりカップルはトレンディで、ひとり暮らし女性はクロワッサン記事で、色々あって結局、二人は自分のオリジナルで生きていく、ああ、そうなるよね。なのに味が出ているこの味はなんだろう。

  • ジェンダーに関係する短編多し。

    とはいえ、いろいろ多彩な内容になっていて楽しめた。

    「物語」「桑原さんの赤色」がお気に入り。

  • 194冊読了。
    難しいけどなんかわかるんです。わかる気がするんです。クレペリン検査というものをここで初めて知った。許さない日、向かい合わせの二つの部屋、斧語り、男の子になりたかった女の子になりたかった女の子が気に入ってて、独特な話だけどなにかえぐられた感覚があって頭の中に余韻がずっと残る。なぜかはわからないけど。初めてこの作家さんのを読んだけど、不思議な本。

  • 不思議な話が多かった。
    視点がぽんぽん飛ぶので、今は誰の視点だ?と迷う事が多々あった。
    全てフェミニズム的な視点で、世の中へ疑問や訴えを投げかけている。
    『桑原さんの赤色』
    『斧語り』
    が好きでした。

  • 松田青子さん、一層鋭く、一層柔らかくなってる…!
    どの短編も、じわりと胸に染み込んだ。
    すぐそばにそっと立って見守っていてくれるよう。
    『「物語」』が特に好き!

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著者プロフィール

作家、翻訳家。著書に、小説『スタッキング可能』『英子の森』(河出書房新社)、『おばちゃんたちのいるところ』(中央公論新社)など。2019年、『ワイルドフラワーの見えない一年』(河出書房新社)収録の短篇「女が死ぬ」がシャーリィ・ジャクスン賞候補に。訳書に、カレン・ラッセル『狼少女たちの聖ルーシー寮』『レモン畑の吸血鬼』、アメリア・グレイ『AM/PM』(いずれも河出書房新社)など。

「2020年 『彼女の体とその他の断片』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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