ギャラリーストーカー-美術業界を蝕む女性差別と性被害 (単行本)
- 中央公論新社 (2023年1月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120056161
作品紹介・あらすじ
美大卒業後、作家として自らを売り出したいと願い、一人ギャラリーに立つ若い女性作家につきまとうギャラリーストーカー。美術業界の特殊なマーケットゆえに、被害から免れることが極めて難しいという異様な実態がある。孤軍奮闘する若い女性作家につきまとうのは、コレクターだけではない。作家の将来を左右する著名なキュレーター、批評家、美術家など、業界内部の権力者によるハラスメント、性被害も後を絶たない。煌びやかな美術業界。その舞台裏には、ハラスメントの温床となる異常な構造と体質、伝統があった! 弁護士ドットコムニュース編集部が総力を挙げて取材した実態と対策のすべて。
感想・レビュー・書評
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そんな存在がいるとは全く想像もしてなかったギャラリーストーカーというか勘違いされる方々にゲンナリ
そして美術界に今なお色濃く残るジェンダー意識の低さには開いた口が塞がらない
ただこの本が出版されたことや被害者達が声をあげ始めた事、そして現在の価値観にキッチリ合わせてきている学校等があらわれてきているのは素直に喜ばしい
そして何度も何度も目にし耳にした被害者に(だって)非がある的な発言はもう終わりにしましょうよ
悪いのは(その成長過程に大変な問題がある方もいるのは招致していますが)あくまで加害者なのでは
それと俺達だって大変なんだよ的な物言いもあるけど
もちろんあなた達にも困難さはあるでしょう
ただそれを持ち出して、だから俺は悪くないというのは別の話なのでは?と思ってしまう -
美術業界で女性が受ける各種の性被害について論じた本。
画廊等で若い女性アーティストに粘着する「ギャラリーストーカー」という言葉がキャッチ―で、タイトルにもなっている。しかし本書テーマの本質はむしろ、美術業界そのものの抱える女性差別を描くことの方にある。
美術を学ぶ女性は多いのに、アーティストを評価・教育する側には圧倒的に男性しかいない構造。人のつながりで仕事が回る傾向があるため、権力者に逆らえず、パワハラ・セクハラが横行しがちになる。才能があれば性に放埓であることが許されるといった空気。 -
画廊は、まるで無料のキャバクラのよう。若い女性作家を食い物にする美術業界の暗部をレポートし、対策を提言する
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前半は表題通りだが、後半は公共彫刻や教育におけるバランスの不均衡なども
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バレエもそうだし、絵画などの芸術は昔からパトロンに支えられて活動してきたという歴史があり、そういう暗部がようやく表に出てきたという事ですね。
芸術分野に限らず、どの世界でも有名人や影響力がある人と知り合いだとか、人脈を武器に近付いてくる連中はろくでなしや小者。
こういう問題は嫌悪感を覚えるし、無くなって欲しいと思っているが、男性の自分も無意識で言ってしまったようなことがなかったか、振り返ってみると正直自信はない。
悪いと思ってないという問題は根深いし、自分もこれからよくよく気をつけないとと思う。 -
眼が惹かれてずっと眺めていたいもの。心に引っかかって外れないもの。ひとがつくった美しいもの。その作品の向こう側に、この社会の不均衡が凝縮されていたのか。アートの世界には自由な空気があるものだとばかり思っていた。
読み進めるほど、これは美術界だけの問題ではないし、美術界だけで解決できるものでもない、と拳を握りしめてしまう。美術界での改革や対策はもちろんだけれど、社会としてジェンダーの不均衡を均していかなければ。
平山郁夫氏の配偶者が、藝大の前身である東京美術学校日本画科を主席卒業した画家だったことも、あちこちに立つ裸婦像のことも、もう一度その意味を考える。慣れてしまうことは、性被害や差別、搾取に手を貸すことになってしまう。
私には、扇情的に見えてしまう装丁。意図を知りたい。 -
まったく知らなかった業界のハラスメント事情。前半は、クリエイターとギャラリー、ギャラリーに訪れる客との間の問題、後半は芸術全般の業界構造にせまる内容で知らないことも多かった。
ビジネスの世界では当たり前とされているハラスメント対策が、芸術の世界では徒弟制度や予備校時代からの狭い強いつながりの名残か、まったく考慮されていない現実や、やりがい搾取が横行している状態にも唖然。
https://...
https://book.asahi.com/article/14863646