元禄御畳奉行の日記: 尾張藩士の見た浮世 (中公新書 740)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121007407

感想・レビュー・書評

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  • 尾張藩士の日記。37冊に及ぶという。
    野次馬根性全開で、心中や藩主の未亡人の奔放な性の噂などが記された日記が何故かお城の奥深くに残されていたらしい。隠されていたのだけど、一部の藩士が楽しんでいたようだ。
    磔を見に行った日記の末尾に、磔台の値段が書いてあるのがたまんない。
    あっけない幕切れもよい。

  • 神坂次郎 (1984)『元禄御畳奉行の日記――尾張藩士の見た浮世』中公新書

    ・著者の神坂次郎(1927-)は、時代物が多い作家。
    ・名古屋城下の御畳(おたたみ)奉行「朝日文左衛門重章」の書いた『鸚鵡籠中記』を紹介するというもの
    ・2008年には文庫化(中公文庫)された。
    ・新書版は、文字がつぶれ気味で読みにくいかも。


    【目次】
    目次 [/]

    八千八百六十三日の日記 001
      もうひとつの元禄
      朝日家の来歴
      武芸者志願
      花嫁のくる夜
      親父どの攻略
      御目見の衆

    武士学入門 023
      文左衛門の初登城
      刀の忘れ物
      酒飲めば世は愉し
      文左衛門の劇評
      天野源蔵との出会い
      生類憐愍の令
      でんぼこ殺生

    御畳奉行どの 057
      文左衛門出世する
      文左衛門の俸給
      二人の妻に妾ふたり

    元禄社用族 071
      御奉行どのの上方出張
      京の義恩蝶・大坂の縮皮で豪遊する
      御奉行どの遊び疲れる
      御側同心頭御国御用人になる

    おかしな侍たち 089
      ところてん自殺
      奇妙な刃傷
      好色な落し物
      愛欲無惨
      ばくち侍
      女左衛門と母ばくちに熱中する

    浮かれ妻騒動 109
      密通ばやり
      さまざまな姦通
      不義の季節
      女のいくさ
      本寿院様ご乱行

    心中ばやり 129
      さまざまな恋
      文左衛門心中を目撃する
      ものぐさ心中
      文左衛門無理心中事件に活躍する
      女左衛門またまた心中に遭遇

    城下の事件簿 145
      姿なき怪盗
      けったいな泥棒たち
      御勝手不如意につき簡略節減令
      にせもの列伝
      盗っ人宿駕篭かきと裸女

    街談市語 169
      町の噂
      丑の刻まいりの女
      土に毛が生える話
      江戸城内の喧嘩
      貧窮無類の世
      士水之介乞食になる

    文左衛門の退場 189
      娘の嫁ぐ夜
      文左衛門酒に倒る
      ひとつの終焉

    あとがき(昭和五十九年七月 神坂次郎) [200-201]
    参考文献 [202-203]
    関連年表 [204-208]

  • 関ヶ原より百年、江戸文化の花開いた元禄時代に生きたある尾張藩士の日記に沿って、特に武士階級にとって、この時代はどういう時代だったのかを読み解いてゆく。

    日記の著者は、朝日文左衛門という尾張藩百石取りの藩士で、初め城代組本丸番を勤め、のちに御畳奉行に出世する。 延宝二年(1674)に生まれ、18の時から45歳で亡くなる前年まで、体験したことや見聞したゴシップなどを細かく記した日記を書き続け、これを「鸚鵡籠中記」と題した。 この日記は尾張徳川家に250年間秘匿され、世に現れたのは昭和40年代とのこと。

    文左衛門は、実に自然体で生きている。 お役目を適当にこなしながら、酒と女と芝居をこよなく愛し、釣りや博打を楽しみ、ヒステリックな妻に悩まされつつも浮世の楽しみを満喫する。 お役目の旅行では接待の酒席や紅灯の世界に酔い痴れ、ついには酒が元の病で世を去ることになった。 好奇心旺盛で、様々な武術(腕前は今一つのよう)や読書にも親しんだ。 この好奇心の発露たるゴシップ好きと記録マニアのおかげで、その頃の流行や世相がよくわかる資料となっている。

    元禄時代は文化の爛熟期。 武士階級は、長く続く戦乱の無い世のために緊張感を無くし、経済の発展によって大商人が現れる一方で、餓えや貧窮に苦しむ下層の民衆もいた。 政治的には悪名高い生類憐れみの令が発布された頃だが、表向きはこれに従いつつも、尾張藩のあたりではかなり緩やかだったようである。 また元禄と言えば思い出すのが「忠臣蔵」。 討ち入りがあったのもこの頃だが、文左衛門の日記からは特に大きな感銘を受けた様子はない。 芝居として流布してから、世間の注目を浴びたようである。この頃流行ったのが心中で、これは近松門左衛門の「曾根崎心中」の影響が大きいそうな。

    こんな世の中じゃあっという間に滅んでしまいそうな気もするのだが、徳川の世はまだまだ続き、その間に明治維新が起こるだけのポテンシャルが日本人に養われていった。 今の世の中も、文化の爛熟と精神の弛緩が甚だしいように思えるが、なんとかなるような気もちょっとして来る。 [2 Apr 2007]

  • 元禄時代のゴシップ好きで日記魔な武士、朝日文左衛門の日記。平和すぎてたいくつだった当時の武士の生活や庶民の生活がうかがえます。

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