ゾウの時間ネズミの時間: サイズの生物学 (中公新書 1087)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121010872

感想・レビュー・書評

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  • 随分昔に興味ある題名だと思い購入したはよかったが、途中脱落。この度図書館で見つけて再トライ。
    2017年12月のなんと78版を読んだが、1992年が初版。
    根強い人気があると言うことなのかな。

    一言面白い。
    文系の方には少し縁遠いような理論が入っていると思うが、動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズ
    によらず同じだと言う意外さは、どんな人でも興味が湧くのではないだろうか。

    動物を、そのサイズで分類した時に、基本的な生命維持機能がどう変わるのか。
    新しい切り口での考察は、新しい発見になりました。

    以下、抜粋
    どんな動物も、心臓は20億回 打って止まる
    息は3億回吸って終わる
    獣なら皆変わらず一生に1kgの体重あたり15億ジュール消費する
    もし動物が弾性相似なら,時間が体重の1/4乗に比例する

    ここに10トンの干草があるとする。これを500キロの雄牛2頭に食べさせても、体重2キロのウサギ500匹に食べさせても、結果は同じ。総体重1トンの恒温動物が食べれば、サイズに関係なく、0.2トンの肉が新たにでき、6トンの糞の山もできる。
    ただし食べる時間はサイズで違ってくる。ウサギは草の山を3ヵ月で食い尽くすが、ウシは14ヵ月かかる。時間はすべて体重の1/4乗に比例して長くなっていくのである。
    さて今度は、同量の草をイナゴに食べさせたとしよう。体重1グラムのイナゴ100万匹、つまり総体重1トンのイナゴに食わせたとすると、9ヵ月で草の山がなくなったあかつきには、200万匹(2トン)の新しく生まれたイナゴと6トンの糞ができることになるだろう。
    早く肉を作りたければ、小さい動物を飼えばよい。少ない餌で肉をたくさん作りたいのなら、変温動物を飼えば恒温動物の10倍の収量がある。ウシを食うということは、時間的にみても、エネルギー的にみても、はなはだ贅沢なことなのだ。

  •  ずっと前から読みたかった本。
     動物のデザインには意味がある。大きさにも形にも意味がある。すばらしいデザイン。そして、正しいデザインが何なのかは解らない。

  • 体の大きさに応じて「時間の流れが変わる」というところを切り口に,色々な種族で世界観が異なることを紹介している.生物学者としては「それぞれの世界観を意識し想像してこそ他種族と交流がもてる」という考え方のようだ.中の一節に少しだけロボットのこともあり,「人の世界観を理解し,人の流れる時間を意識することで人にやさしいロボットが出来るのではないか?ロボット・機械は人と同じサイズながら人よりももっと早く動くことができる.それは高性能かもしれないが,流れる時間が違うということは人と共に生きていない.『動物に似せたロボットを作るときに,体長に合わせて歩く速度を決めたりしただろうか?(p.134)』」と書いてあり面白い. 時間の話だけでなく,体の大きさに応じて体のシステムの在り方もそれぞれ異なっていることなども書いてあり,とても勉強になる本.

  • 動物のサイズが変われば時間も変わる。構造や生態にいたるまですべて体重の関数で表せるくらいの勢いで、色々な生き物について網羅されていて面白く衝撃だった。

    相対性理論を勉強した時に、時間が一定ではないということを知ってものの考え方ががらりと変わった気がしたけど、まさに同じ感覚。

    ちょうど12章で構成されていて、毎週一章ずつ講義でやっていくとちょうど半期で終わるくらいだなと思って、大学でこの講座をとった気分。

    もっと早く読めばよかった。(最近こう思う本が多い…)

  • おそらくこの本の初版が出たとき中学生で、長期休みの前に先生の一人が推薦図書にあげていてずっと気になっていた。
    20年立って未だに平積みされている以上、やはり読まねば、と。
    読んで納得、これは読みやすいし、おもしろい。選択授業の関係で生物を取らなかった私でもわかるような言葉で書かれているけれども、内容は濃い。
    そして着眼点が好き。サイズが違えば、時間の流れ方も違う、体のデザインにもきちんとその生物なりの理由があり、人間だけの世界観で測っていてはいけない、ということ。
    これは動物学の本だけれど、いろいろ考えさせてくれる本だ。

  • この本には生物のサイズや体のつくりが自然界から見るとこんなに合理性があって、うまくつくられているものだと感心させられることしきり。
    代謝量と体重の関係、体重と食べる量の関係、レイノルズ数(慣性力と粘着力の比)と体長の関係など、様々な動物のそれらの関係を並べてみると綺麗に比例関係にあるのは自然界の不思議であり何とも見事だとしか表現できず、人間は普段人間の目線でしか考えない、なんとも視野の狭い動物だという気にさせられてくる。
    自分自身は学生時代生物は苦手科目であったが、そのような人でも問題なく読むことのできる、人間が最も優れた生物だという自惚れを拭い去ってくれる内容であると思う。

  • ネズミとゾウが寿命は違えど同じ時間を生きてることに驚いた。難しいけど面白かった!

  • 体のサイズや形態から、その生き物の時間、あり方を考えると、サイズ対比ではどんな生き物にも概ね同じ法則が当てはまるというのは、とても興味深いこと。進化はやはり奥が深い。この法則に基づいてヒトやその技術を相対化すると、自然の道から外れてるなぁ、と思う。

  • グラフとかが結構あってわかりやすく面白かった気がする。

  • 様々な動物についてサイズをベースに進化、エネルギー消費量、食事量、生息密度、行動圏などを考察し、走る、飛ぶ、泳ぐという行動とサイズの関係、さらには動物の各器官とサイズの関係、細胞とサイズの関係などなど広範囲に渡って興味深い論考が満載の好著だ.説明の図表のほとんどが両対数グラフであるのが特徴だと感じた.あまり見かけない図表だが、非常に便利なものだと理解している.植物への展開もあり、さらには棘皮(きょくひ)動物まで考察しており、著者の類まれなる好奇心の一端に触れることが出来たと喜んでいるところだ.

著者プロフィール

生物学者、東京工業大学名誉教授。

「2019年 『生きものとは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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