言語の脳科学: 脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書 1647)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016478

感想・レビュー・書評

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  • “言語に規則があるのは、人間が作ったからではなく、自然法則に従っているため“という仮説を検証する。言語をサイエンスの対象と捉え、チョムスキーの言語生得説に対する誤解・批判を脳科学の立場から捉えなおす。

  • 言語の文法はもともと脳に備わっている、という
    考え方にとても共感しました。こちらは2002年発行で
    少し前に発行されたものなので、最新の本を
    読みたくなりました。

  • 前半はチョムスキー(の言語論)、後半は読字や発話と脳の関係で現時点でわかっていることを紹介する構成。同じ著者による最新のチョムスキー解説が出版されたので、その予習として最適と判断、あまりなじみのないチョムスキーの言語学を読んでみた。

    2章と3章は、スキナーやピアジェへの批判などが紹介されていて読み応えがある。4章は言語学全般についての解説、以降は脳科学に寄った内容となっている。

    読み終えてあらためて著者の最新刊の『チョムスキーと言語脳科学』 (インターナショナル新書)の目次を見てみたが、なんかほとんど一緒じゃね?

  • チョムスキーの生成文法の立場から、脳において文法を司るモジュールが存在しているという仮説を検証するためのさまざまな実験を紹介している本です。

    いわゆる認知言語学的なアプローチではなく、チョムスキーの主張する普遍文法を認知的なアプローチによってたしかめようとする立場がとられているところに、本書の特色があるといえるように思います。

    ただ、こうした立場からの研究プログラムの提示にとどまっているという印象もあります。一方で、とくに日本のアカデミズムにおける文系と理系の断絶、あるいは心理学と言語学の断絶が、著者のような言語についての研究を阻んできたという議論に多くのページが割かれており、言語の科学的研究はどのようにしてなされるべきなのか、という問題に関心をいだく読者にとっては、紹介されている個々の研究成果を知ることができるだけでにはとどまらない、知的刺激を受けることができる内容なのではないかとも感じました。

  • 大学で学んだ分野で、懐かしく読んだ。大学生の僕がチョムスキーの言語生得説に興味を感じたのは、無味乾燥な言語学の中で、唯一それがSFマインドをくすぐったからだと気づいた。「最新の脳科学はそれを裏付けようとしている」とあるが、証拠はまだ見つかっておらず、今もそのsense of wonderが維持されており喜ばしい。筆者は公式通り、聞いたことのない非文を非文と分かることを言語生得の根拠(45頁)とするが、幼児が聞いたことのない非文を類推で非文と学習すると考えるのが自然ではないか、と当時思ったし、今もそう思う。

  • 脳はどのようにことばを生みだすか、チョムスキーは、「言語は心の一部である。人間に特有な言語能力は、脳の生得的な性質に由来する」と主張している。しかし、これを裏付けるための脳科学からの証拠が未だ不十分なため、多くの誤解や批判にさらされている。
    言語の能力は一般化された学習のメカニズムでは説明できないユニークな特徴を持っており、その秘密は人間の脳にある。この特徴が原因で、古典的なアプローチだけではなかなか突破口が開けなかった。流体力学や統計力学、量子力学は、古典力学を見事に発展させた。言語についても同じで、言語の研究は、近年の認知脳科学の発展に伴っう欧米を中心とした急速な発展や、他の新しいアイデア、手法、それらの組み合わせによって、これからどんどん面白いことが分かっていくであろう。

  • チョムスキーの生成文法の理論を最新の脳科学と絡めて解説した本。著者は東大総合文化研究科助教授の方。

  • チョムスキーの生成文法理論、失語症、モジュール仮説の話は体系的にまとまっており読みやすかった。
    単純な文・理の区別だけでは割り切れない分野の話であり、これからの発展に胸が膨らむ。
    ただ、本書の半分ほどが結論のはっきりしない実験の羅列であり、文系の私がただ読み進めるのはかなり骨の折れる作業であった。

  • 言語については、-今も大部分はそうであるが―大学では人文学科がその役割を担ってきた。
    しかし、現在はMRI等の非侵襲的かつ定量的な手法が開発されており、理系分野の領域ともなっている。
    文系であろうが、理系であろうが中心的な課題は同じで、脳はどのように言語を理解し、学習しているのだろうか、ということである。

    本書はどちらかと言うとMRI等の知見から得られた結果をもって、過去の症例をあわせて脳の機能を解説している。

    が、MRIからの結果から、○○の理解は脳の△△の場所が活性化しているので、ここが担っている可能性が高いという議論が後半の大部分があてられている。
    正直、ウェルニッケ野といわれてもピンとこない。
    やはり、言語を学習するという人間独自の能力は後天的なものなのか、先天的なものなのかという論点を絞って、それらに対する過去の実験結果を示し、考察を述べてほしい。
    本書は内容は豊富であるが、反面、中心的な議論がぼやけているように思える。

  • 人は生まれた時にすでにあらゆる言語の文法を理解するためのベースとなるような普遍的な文法を持っていて、環境などの外部からの刺激によって言語を司る脳の機能が最適化されていくと。
    普遍的な文法のようなものを持っていないとすれば、赤ん坊が言語を獲得できていく説明がつかない…という話だったかな。

    いろんな具体的実験の内容や、脳の専門的な話は難しかったが、失語症や手話の話など分かりやすい内容もちょくちょく挟まっているので何とか読み終えられた。。

著者プロフィール

言語脳科学者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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