オリエント急行の時代: ヨーロッパの夢の軌跡 (中公新書 1881)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018816

作品紹介・あらすじ

一八八三年十月、オリエント急行第一号列車がパリ・ストラスブール駅をコンスタンティノープル目指して発車した。車窓には統一間もないドイツ帝国や世紀末の香り漂うウィーン、東欧の大平原、そして没落の色濃いオスマン帝国。鉄道の実用化から半世紀。複雑きわまる国際関係を超え、人々の夢と憧れを乗せた豪華列車が、時代の大衆化と航空機の登場によってその役割を終えるまでを通して描く、もう一つのヨーロッパ現代史。

感想・レビュー・書評

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  •  19世紀末から20世紀前半、帝国主義の時代にパリ・イスタンブール間を結んだ鉄道「オリエント急行」の興廃に、沿線となった地域、特にハプスブルク帝国とオスマン帝国治下の諸国の歴史を重ねた「学究的な観光案内」といえる書。第一次大戦前及び両大戦間期の中欧・東欧史の入門的機能を果たしている。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00171752

  • 面白かったです。

  • 私にとっての「オリエント急行」は、アガサ・クリスティーの「オリエント急行の殺人」であり、
    一般客を乗せヨーロッパを東に走る豪華な列車と言う、第一次世界大戦後の姿でしかなかった。
    つまりは、
    その創設や王侯貴族が乗り込んでいた「王者の列車」であったことを知らなかったので、興味深く読んだ。

    とはいえ、「オリエント急行」そのものの歴史よりは、オリエント急行が駆け抜けていた東欧からトルコの18世紀以降の歴史が語られており、予想よりずっと東欧史の参考になる本だった。

  • <汽笛よ、幻想の国々を貫き響け>


    『オリエント急行の時代』! この書名を見たとき、伝統あるオリエント急行の車内や、豪華客車の旅を満喫する紳士淑女の雰囲気を伝えてくれる本なのだろうな~と想像していました。古き良き時代の鉄道紀行を読むような心つもりで手にとったのです。
     それはこちらの勘違いというものでした。焦点が当たっているのは、「急行」よりも「時代」★
     本書は、オリエント急行が走り始めたころから、没落を余儀なくされるまでの間の世界情勢を追いかけた、政治・社会史本的色彩が強いです★

     この急行列車は、フランス、ドイツ、ルーマニアなど、ヨーロッパの国々をいくつもまたがって走ってきました。すると、列車の進むところはどこも、その土地ごとの文化で栄え、その土地ごとに事情を抱え、そして各々が混乱していたのでした。
     平井正という著者は、そこを何とも事細かに調べ、綴りあげています。世界史に関心のある人には、魅惑の薀蓄にあふれているはず☆

     一例を挙げると、ルーマニアと呼ばれた国の実態は、土地を治めているのが大地主たちで、住んでいるのも国民というより農民って感じ★ 地方が国に属するのではなく、国が地方に「お願いだから、一つになろうよ~☆」と声をかけて、しかも何だか嫌がられているような図式が見えてくるのです。
     もう一つ挙げると、アルザス・ロレーヌ地方。ドイツ領からその後フランス領に戻ってきたこの辺りにとって、国籍の意味とは何なのか……?

     急行を通すために国と交渉したナゲルマケールス氏は、ひどく手間をかけることになりました。国一つに話をつければ終わり、じゃなくて、それぞればらばらの営みがあるのです。国や国家という単位は、接近して見ると幻想でできているのかもしれません……。
     一つの国が、一つの文化や一つの思想に染まっていることはほとんどないし、あればかなり不自然な状態だろうなぁ★ ふと、そんなことを思ったのでした。

  • [ 内容 ]
    一八八三年十月、オリエント急行第一号列車がパリ・ストラスブール駅をコンスタンティノープル目指して発車した。
    車窓には統一間もないドイツ帝国や世紀末の香り漂うウィーン、東欧の大平原、そして没落の色濃いオスマン帝国。鉄道の実用化から半世紀。
    複雑きわまる国際関係を超え、人々の夢と憧れを乗せた豪華列車が、時代の大衆化と航空機の登場によってその役割を終えるまでを通して描く、もう一つのヨーロッパ現代史。

    [ 目次 ]
    プロローグ 発車の日
    第1部 開通記念列車(西ヨーロッパ快走―フランス・ドイツ・オーストリア 東ヨーロッパ―ハンガリー・ルーマニア・ブルガリア
    オスマン帝国)
    第2部 その後の「オリエント急行」(第一次黄金時代 二度の世界大戦を超えて)
    エピローグ 観光列車としての「オリエント急行」

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  • まさに夢の軌跡。過ぎ去った時代のきらめきっていいもんです。

  • (趣味用)

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