- Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121018960
作品紹介・あらすじ
日本の経済はどうなっているのか。本書は、その歴史と現状の両面にわたって、客観的なデータにもとづきつつ、その全体像を提示するものである。まず明治から今日までの歩みを、各種経済指標や国際比較を使って素描する。ついで、国際経済関係、産業、企業経営、職場と仕事、財政、金融などの現状を取り上げ、重要な論点を整理。さらに、アメリカ標準を安易に前提とする議論に対しては警鐘を鳴らし、代替案の可能性を模索する。
感想・レビュー・書評
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【書誌情報】
『日本の経済――歴史・現状・論点』
著者:伊藤 修[いとう・おさむ] (1956-)
刊行日:2007/5/25
判型:新書判
ページ数:320
定価:本体900円(税別)
ISBN:978-4-12-101896-0
日本の経済はどうなっているのか。本書は、その歴史と現状の両面にわたって、客観的なデータにもとづきつつ、その全体像を提示するものである。まず明治から今日までの歩みを、各種経済指標や国際比較を使って素描する。ついで、国際経済関係、産業、企業経営、職場と仕事、財政、金融などの現状を取り上げ、重要な論点を整理。さらに、アメリカ標準を安易に前提とする議論に対しては警鐘を鳴らし、代替案の可能性を模索する。
〈http://www.chuko.co.jp/shinsho/2007/05/101896.html〉
【目次】
まえがき(二〇〇七年三月 伊藤修) [i-iii]
目次 [iv-viii]
序章 日本経済への視角 003
1 日本経済観の系譜 004
日本資本主義論争
大塚モデル
各種の日本異質論
アメリカという国
2 日本社会は非近代的で不健全なのか 013
「欧米先進国」
アジア的・非民主的
政府主導型
「輸出指向」か「輸入代替」か
日本の産業政策
3 システムとしてとらえる 022
比較制度分析
複層構造
企業中心社会としての日本
第1章 日本経済の歩み――明治から戦後復興まで 029
1 近代経済発展の概観 030
近代経済成長
国民一人当たり所得
テイクオフに成功した国としない国
「貧困の罠」と「受容能力」
2 戦前の経済発展(1868〜1930) 040
明治期の経済発展
第一次大戦以後
戦前の経済と社会の性格
3 戦時の統制経済(1937〜1945) 047
計画経済化
企業と金融の変化
産業の変化
税制と社会保障
4 戰後占領期――改革から復興へ(1945〜1955) 052
戦争によるダメージ
国際環境の組み換え
大資産家の没落と平等化
戦時の遺産
アメリカ的改革指示と日本的変質
第2章 高度経済成長 065
1 高度成長の時代 066
高度成長の二〇年
国際環境
2 成長と循環 068
成長の構造
成長の足跡と景気の波
経済運営の戦略」
3 政策と社会 077
成長と政策
成長分野と停滞分野
高度成長は日本社会を変えた
第3章 1970年代の日本経済 085
1 二つのショックと高度成長の終焉 086
ニクソン・ショック
第一次石油ショック
高度成長の終焉
円切り上げへの対処
2 成長率低下への調整 098
一九七〇年代後半の調整
3 減量経営と戦後社会の転換 101
減量合理化
戦後社会の方向転換
第4章 1980年代の日本経済 107
1 国際経済・通貨の激動 108
第二次石油ショックとレーガノミクス
貿易黒字と対外資産の増加
日米経済摩擦
内需拡大
経済構造調整
2 「小さな政府」運動 120
新自由主義改革の始まり
3 バブルの発生 123
バブル経済の発生
資産価格の決まり方
投機はよいことか
過剰なマネー
なぜ金融引き締めに入れなかったか
負債・資産の両建て併増
バブルの何が問題なのか
第5章 バブル崩壊以後の日本経済―― 1990〜2006 139
1 バブル反動不況(1990〜1997) 140
山高ければ谷深し
大停滞の性質
金融部門の痛み
「追い貸し」?
2 不況の二番底(1997〜2002) 149
通貨・金融危機
小回復から二番底へ
政策の失敗
日本社会の問題点の噴出
3 長期停滞からの脱出(2003〜) 156
長期不況からの脱出
構造改革
公然と打ち出した優勝劣敗主義
景気回復の「暗」の側面
長期不況下でおきた構造変化
第6章 国際経済関係 167
1 貿易の構造 168
世界のGDPの分布
日本の輸出入
東アジア経済圏
2 国際収支と為替レート 174
国際収支
為替レート
3 理論的な混乱をめぐって 179
空洞化の恐れ
世界大競争
国の勝ち負け
内外価格差
自由貿易の原則と留保条件
4 補足として――市場経済の限界 188
市場の失敗
《公》の役割
第7章 日本の産業 193
1 産業構造 194
産業構造の変化
経済のサービス化
2 企業間関係 196
維統的取引関係
下請け制
3 市場構造 200
集中化と競争化
国際的巨大統合の急展開
第8章 日本の企業経営 207
1 「日本的経営」 208
経営目標の特徴
企業行動の特徴
リーン生産体制
長期成長指向
2 コーポレート・ガバナンス 214
所有構造
モニタリング・システム
バブル崩壊後の変化
3 権限と責任 220
日本の組織の病理
無責任の体系
第9章 日本の雇用と職場 227
1 長期雇用と年功賃金 228
長期雇用と年功賃金
広い職務範囲
拘束と強制出資のしくみ
2 財界の雇用戦略 233
『新時代の「日本的経営」』
3 労使関係 235
「良好な労使関係」の内実
労働違法国家
仕事中心の生活
4 非正規雇用と女性労働 240
非正規雇用の激増
不条理な身分制
女性労働と少子化
まともな国へ
第10章 日本の財政と社会保障 247
1 財政の現状と考え方 248
小さな建設政府
財政支出の内訳と公共投資
政府債務の累積
債務比率をゆっくり削減
2 税・社会保障負担 258
税制の原則
個人課税は軽い
法人負担も軽い
3 社会保障をどうするか 268
世代間対立か
助け合いは効率的である
今後の社会保障のプラン
財政の将来像
第11章 日本の金融 279
1 戦後金融構造の転換 280
資金不足から成熟へ
金融制度のゆくえ
郵貯をどうするか
2 金融政策をめぐる論点 285
金融政策論争
論争の解釈
バブル崩壊後の金融政策
3 金融行政の原則 292
金融行政の根拠と役割
銀行破綻処理の原則
4 金融行政の転換 296
戦後日本型金融行政とその行き詰まり
新しい行政の原則
おわりに [300-303]
主な参考文献 [304-305]詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の経済について歴史的見地から辿った一冊。職場と仕事という実感に近い内容まで扱う幅の広さに感服する一冊。メモ。(1)企業の負担は法人課税だけではない。社会保険の企業側負担も事実上は税負担と同じであり、雇用に対する税である。…OECDのRevenue Statisticsに依れば、日本は7.6%。ドイツ9.1%、フランス14%と比較し低い。(2)日本が財政赤字を出している根本的は理由は税金が安過ぎること。(3)これからの日本の社会保障はベバリッジ型、全国民住民を対象にミニマムを保障し、財源には税金を充てるべきではないか。個人選択の原理を基本に、二階建て部分の選択制、支給開始年齢の選択制が望ましいのではないか。(4)不良債権の実態は低収益資産。資産の減価の大きさが自己資本の額を超えた時、資産を全部処理しても債務が払いきれなくなる。これが、債務超過。
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150314 中央図書館
明治以降、日本経済が発達してきた流れを、一息で押さえ、近年はやや詳しく記述して、産業構造、企業経営、雇用、財政、金融もあわせて論点を整理している。
問題意識としては、以下のとおり。
高度経済成長までは成長ドライブ力が細かい問題を覆い隠していたが、成長がとまり、高齢化、共同体の弱体化のもとでは社会のネットワークを強化するためにある程度の負担が避けられない。正当性、納得性を確保するために、
<blockquote>能力に応じた負担、必要に応じた受益、を基本にすること。だれが・どんな根拠で・どれだけ負担しまた受益するか、だれが、どんな根拠で・どんな権限と責任をもつか、を十分明確にしたルールを整え、そのルールに従って透明な運用を行うこと。(pp302-303)</blockquote>
経済学の立場の意見としては、真っ当なものである。 -
(後で書きます。参考文献リストあり)
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戦後の産業保護政策は、ほぼすべての産業に及んでいたのかというとそうではなかった。
割合が逆、むしろ保護されていた方が少ない
これを知れたことが、一番の収穫だった。 -
この先生の講義に潜り込みたい
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明治以降の経済史の俯瞰から、現状抱える問題の掘り下げまで内容盛りだくさん。それでいて図表が少なく、分かりやすい言いまわしが心がけられているのが伝わり読みやすい。時折著者の強い主張がやや唐突に現れるのはご愛嬌か。リーマンショック以前に書かれているという点においてやや残念だが、それを差し引いても余りある良書。
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戦後経済の歴史という縦軸と、現代経済の現状という横軸から日本の経済を捉えた本。今の日本は低税率国家であり既に非常に小さな政府によって運営されているなどこれまで知らなかった貴重な知識が得られた。経済系の本を読むのは初めてだったがなかなか興味深いジャンルだなと思った。