- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021397
感想・レビュー・書評
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「贈与」というと、何か、人間の人類学的な基礎に通じるものがあって、興味があったので、タイトルで購入。
この本はそういう人類学的な分析ではなく、中世に特化した贈与の分析。
全体の印象としては、様々な階層での贈与は、最初は神に対する、あるいは上位者に対する畏敬の念が含まれていたが、どんどん形式化して、最後には、市場メカニズムにとりこまれていく(贈与物が売買されたり、贈与の折り紙自体が流通したりする)、というお話。
自分が労働力を割いて復興に無償に協力していることに、なにか歴史的なバックボーンがあるのかと期待したが、ちょっと期待はずれ。
ただし、中世のたくましい貴族や武士のお金のやりとり自体はおもしろい。
(1)贈与のもらうことを、一代限りの職にあるものが断ると、後任者がもれなくなるので、もらっておく。(p67)
こういうの、役職者の特権でよくいわれる。役員がエコで電車で通勤したくても、後輩が困るますよといっていつまでも自動車の送り迎えを続ける組織。まあ、うちだが。
(2)中世の貴族は、贈与を求められると、継続的に贈与するのを避けるため、わざと「ごぶさたしていましのたので」といって贈与の趣旨をごまかしていた。(p72)
これも現代もありそう。お中元とかお歳暮とかの時期をはずして、たまたま、いいものがあったから贈りました、とかいって、今回限りにするのと同じです。
(3)足利将軍は、当時のお金持ちの寺院から贈与をうけるため、しょっちゅうおなりを繰り返した。(p138)
貧乏になるとなんでもやってお金を集めようとする。
なんだか、昔も今もあんまり日本人は変わっていないようで、うれしいようなかなしような気持ち。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。
通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:332.104//Sa47 -
貨幣経済が進展していた中世。贈り物を受け取って横流しや転用、着服があり、賄賂の横行、目録のみ進呈して中々実物を渡さないなど、経済的な困窮という理由のあるが現代人には想像も出来ない一面があった。
贈り物に釣り合いを求めたり要求したり、実利的な面が強かった。
弱者の救済や高額な税の負担は有徳、すなわち金持ちがするべきである。