経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書 2143)
- 中央公論新社 (2011年12月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021434
感想・レビュー・書評
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インドネシアの経済・政治を、現地在住の長い研究者がまとめている。
・領土も人口も大国。資源も豊富。90年代前半には今のBRICsあたりと並び称されていたが、アジア通貨危機で脱落。
・人口増加率はふつうに減ってきていたが2000年代(90年代1.45%→00年代1.49%)になってなぜか盛り返した。民主化・分権化によりスハルト時代の強制的な人口抑制策が弱まったためか。良し悪しはあるが、他のアジア諸国と比べても人口ボーナスは長く続き、2025から30年くらいまで。
・分権化が進み、資源収入の15から80%は地元に帰属するようになった。地方間の経済格差が生じる可能性も。
・2004年就任のユドヨノがはじめて民主的に選ばれた大統領。経済面では通貨危機やスハルト後の混乱期の影響をようやく脱しつつあるくらいで苦戦しているが、政治・治安は安定した。ユドヨノは軍人出身で、軍が庶民の出世コースであることが伺われる。
・大国インドネシアは重工業も含めたフルセット主義の開発方針を採っている。しかし、資源高のせいもあるが輸出高にしめる工業製品の割合はここ10年で減少している。それに重工業はまだ外資中心である。
・1997年までは定跡どおり農業人口割合は減り続けていたが、その後一転して40%強で横ばいになった。
→著者は、「農業にも成長のエンジンが現れた」(パーム油など価格が上がっているはず)で済ませているが、農業が成長してもふつうは機械化などで従事人口は減るはずであり、他のアジア諸国と比べた生産性の伸び悩み、都市と地方の所得格差を考え合わせると、ここ(たぶん多すぎる人口、中国も近いところがあるのでは?)にインドネシアのアキレス腱があるかもしれない。
・プリブミ優遇策でのしあがった政商がいたり、豪米帰りの経済テクノクラートが政府の中核を占めていたりいろいろ。もちろん華人企業家も多い。詳細をみるコメント0件をすべて表示