残留日本兵 - アジアに生きた一万人の戦後 (中公新書 2175)
- 中央公論新社 (2012年7月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021755
作品紹介・あらすじ
「恥ずかしながら帰って参りました」-。残留日本兵といえばすぐに思い浮かぶのが、横井庄一や小野田寛郎、そして、"水島上等兵"。彼らの苦難の歳月は、自伝をはじめ多くの書籍や映像で描かれてきた。だがいずれも悲劇の英雄として語られ、時々で話題を集めたにすぎない。本書は、アジア各地で綴られた全記録を辿り直すことで、「大日本帝国崩壊後」の残留日本兵たちの真の姿を明らかにする、初の試みである。
感想・レビュー・書評
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とかく神聖化又は英雄視されてしまう残留日本兵の実態を地域ごとに類型化しつつも、一人一人がどういった理由で残留したかを描き出した作品。
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本書で取り上げられた方々の“戦後”は様々である。且つ、膨大な人数の一部である。
日本に帰らなかったのには、一人一人の人生があり、理由がある。
「『生きるため」に「残留」』を選んだ人生を想う。 -
小熊英二と何が関係あるか知らないが、ともかく、残留日本兵の動向についての冷静な整理、、、にみせながら、「歴史の美化」というものの警戒を怠ってはいない。つまり、イデオロギーから離れ、「死のうとした」のではなく「生きようとした」人々の生の歴史を描こうというのである。しかし、それもまた、薄められた「他者から」というイデオロギーに過ぎない。、、、、、最後の最後に天皇陛下の御下賜金を受け取ったというのは、皮肉か、それとも著者の節操の無さか、、、、中公新書の研究者の書く跋文にこの手の御礼の文面が多いのは気になる。偉そうなことを言う前に、自前の金で学問しろ!とは、言い過ぎか?
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毎年終戦記念日のある8月になると太平洋戦争の事を考えさせられる。
なるべく当時の関係する本を読んでいるがこの本も面白かった。横井さんや小野田さんだけじゃないんだよなあ。 -
様々な理由で終戦後帰国しなかった人たちのインタビュー。
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著者が推定する1万人規模(一部に居留民含む)の中から100の事例を取り上げる。地域は東南アジアを中心に、中国(主に山西省と旧満洲)、ノモンハン捕虜のソ連・モンゴルも。
台湾出身者もいたり。残留の動機は自由意思も、日本軍の又は現地側の強制もあり、自由意思であっても思想だったり戦犯裁判逃れだったり。10年以内には帰国した者も、現地国籍を得て長期定住した者もおり。
引き続いて大国との戦争又は内戦が起きた国では、現地の正規軍又は非正規軍に属した者が多かったとは言える。と言うより、だからこそ軍事知識・経験がある旧日本兵が求められたわけだ。それも、越のように冷戦下で他国の軍事援助が得られる段階になると、旧日本兵の役目は終わる。
著者はまた、彼らは日本社会では、戦争と引き揚げが過去のものとなる60年代以降、哀れな「棄民」の戦争犠牲者か(このイメージに合わない小野田寛郎は批判を受ける)、又は90年代以降の「解放史観」の中で英雄か、と見られたと指摘する。しかし本書で見る彼らは、一般化できないほどとにかく多種多様だった。 -
ふむ
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残留日本兵といえばすぐに思い浮かぶのが、横井庄一や小野田寛郎。
しかしその他にもたくさんいた。100人以上もの人の手記を集め、分析。
これは貴重な資料だ。 -
第二次世界大戦以降、様々な理由から日本に帰国せず
現地に残留した日本兵の実像を、
数多くの人物を紹介する形で説明する一冊。
サンプル数が多く、またそれらがよくまとめられており、
当時の社会や国際環境についても触れられていてわかりやすい。
特にインドネシアや中国で残留日本兵が果たした役割について
興味深く感じた。