- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022134
感想・レビュー・書評
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文章も平易ですらすら読める上、何より分かりやすいのが良い。最近のクイズ番組とかで漢字の正しい書き順の問題が出ていたりするが、本書を読むとそういった問題の意味のなさが非常によく分かる。小学校の先生方は指導要項があって仕方がないのかもしれないが、小学生の子どもを持つ親を含め、本書には一度目を通しておくと、子どもたちの漢字嫌いが多少なりとも減るのではないだろうか。これまでの教育指導の原点がどこにあったのか、も含めて漢字教育や漢字自体の考え方など、まさしく漢字再入門書として必携とも言える。
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良書。漢字について少し考えたことがある人なら、一度は疑問に思ったことについて、一通り説明をしてくれる。
漢字は何種類あるのか? 漢字の字形に正しい字形はあるのか? 漢字にはどうして様々な読み方があるのか? 筆順はどうして生まれたのか? 部首とは何なのか? 常用漢字とは何か?
このあたりの6つの話題が取り上げられる。
個人的には、とめ・はね・はらいの字形と、筆順の教育に対する筆者のスタンスが好きだった。
歴史的に遡ると、「正しい字形」「正しい筆順」なるものは存在しないという結論になる。「木」という文字一つとっても、有名な書家でも縦画をはねて書いた人は多くいるし、書道字典によっては、むしろはねている方が多かったりするもののもある。
筆順についても、「右」と「左」の書き順がお隣の中国では、どちらも横画から書く例を挙げて、必ずしも正しい筆順などないことが示される。私たちがよく学校で習い、この部分何画目でしょうというクイズが出される筆順は、1958年(昭和33年)刊行『筆順指導の手びき』によるものであるそうだ。終戦直後の漢字改革にあって、教育現場の混乱を避けるために文部省が作った指針のようである。それがいつしか「正しい筆順」として権威をもつようになったのだそうだ。
いずれにせよ、字形と筆順に、こうでなくてはいけないという決まりはない。ただ、筆者は、文字が他人に何かを伝えるために生まれたものである。だからこそ、「土」と「士」、「末」と「未」のように、点画の長さや位置で意味の変わってしまうものは、しっかりと書き分ける必要があるし、歴史的に能率的だと考えられた筆順の知恵については敬意を払う。そのうえで、ただ一つの正しい字形と筆順に拘らずに、読みやすく、伝わりやすい字を書くことが大切だと言う。
筆者は、最後に、創作漢字コンクールと、「萫」と書いて「ハーブティ」とふりがなを振っていたカフェを例に出して、これからも新しい漢字が生まれるかもしれないということまで言っている。漢字について、その成り立ちの歴史をしっかりと理解したうえで、どこまでが許容されるべきで、どこは違っていてはいけないのか。そうしう漢字に対する心構えを身につけれる一冊だった。
学校現場等で、子どもの漢字指導に関わる人には、特に、ぜひとも読んでほしい本である。 -
<目次>
はじめに
1時間目 漢字の数
2時間目 とめ・はね・はらい、ってそんなに大事なの?
3時間目 音読みと訓読みについて
4時間目 筆順について
5時間目 部首の不思議
6時間目 学校教育と常用漢字について
ホームルーム 新しい時代と漢字
<内容>
予想通りの本で喝采した。それは、とめ・はねなどの問題と筆順の問題だ。以前から文字は他人が見て読めるように(もちろん丁寧に)書けることが大事で、とめ・はねなどや筆順は(ある程度)いい加減でもいいと感じていたからだ。著者によると、超有名な中国の書家などの文字も筆順は違うらしい。結局は戦後すぐに文科省(のある人が)個人的な指針として作ったものが一人歩きしたらしい。
また、以前から謎だった「法」「演」「漢」が「サンズイ」であることも解決した。結局は旧字体がとても大切である(「法」は本来「灋」。古代の裁判で羊がうそをついた人間を角で突き、川に流されることから)、ということだ。それによって本来の意味がわかるのだから。私は漢字の意味をとらえれば、さまざまな熟語(たとえば歴史用語なども)も間違えることなく書けるようになる、と考えているので、やっぱり我が意を得たりだった。 -
勉強になりました。