特攻――戦争と日本人 (中公新書 2337)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 157
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023377

作品紹介・あらすじ

第2次世界大戦末期、追いつめられた日本陸海軍は、爆弾もろとも敵艦船などに体当たりする特別攻撃=「特攻」を将兵に課した。当初は戦果を上げたが、米軍の迎撃態勢が整うと効果は低下。軍は特攻専用の航空機「桜花」、潜水艇「回天」なども投入する。だが大勢は挽回せず、敗戦までの1年弱の間に航空機だけでも4000人が犠牲となった。本書は、日本人特異の「戦法」の起源、実態、戦後の語られ方など、その全貌を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 良質な入門書という評判を知り手に取る。平易な文体で特攻の歴史を俯瞰でき、その点においてはとても有意義な内容だった。次第に敗戦の色が濃厚になっていく中、資源も生産力も不足する日本軍はまさしく負の連鎖に陥っていったという印象を受けるが、逆にそこから抜け出すためには何が必要だったのかと考えてしまう。特攻を推進・命令した側にも特攻による戦果の限界の認識があったようで、彼らの心情や益するもののない作戦を止めることができなかった背景についてはもう少し踏み込んだことが知りたい。

  • 特攻の歴史を概観できる新書。特攻が「組織的行動」になる前から、その雄姿を讃える土壌があったこと(楠木正成、肉弾三勇士…)をはじめに指摘。そこからどう「特別攻撃隊」として編成していったかが語られる。止む無く始めた特攻も、「敷島隊」の戦果から積極的に採用されていくが、米軍の対抗策から次第に戦果も上がらなくなっていき、末期には特攻じたいが自己目的化していく。
    本書が珍しいのは、短いながら「特攻」の戦後史が書かれている点だ。かつて神と崇められたが、戦後には犬死と評価され、「特攻くずれ」という差別語も生まれる。また『戦艦大和ノ最期』も当初(1950年代前半)は戦争賛美として批判されたという。戦前戦後の断絶・ねじれ。

    あと時々説明として入るトリビアルな解説は、それら知識に疎いので勉強になった。>特攻は二階級特進、攻撃機と戦闘機の違い、部隊名の付け方( 「三四一空 」は 、三 =戦闘機部隊で 、四 =呉鎮守府所属の 、一 =常設部隊)

  • 戦争

  • 特攻しなかった人たちの本を2冊続けて読んだあとだっただけに本書は少しパンチが弱かった。しかし、本書は特攻は志願か強制かや、特攻の成果はどれほどであったか等、調査や生存者のインタビューに基づき、航空隊だけでなく、その後の桜花、回天、大和、震洋までバランスよい記述をしている。これでは、特攻を美化する人たちも反論できまい。また、特攻を最初に命令したという大西瀧次郎についても大西自身がそれを「外道」であると認識していたこと、最後は自分も特攻したことを挙げ、口だけ「おれもあとに続く」といいながら戦後もしぶとく生き残った将校たちへの批判を忘れない。

  • 12月8日 太平洋戦争開戦記念日

  • 一方的な見方を一方的な見方で修正しようとした感じで少々残念。この手の本はどんなに周到にしているつもりでも著者の思い入れがどうしても表出するもの、その意味でもったいないと思う。
    それにしても特攻を巡る疎外態のおぞましさはまさに戦慄モノ。まだ100年も経たない紛れもない事実が自分の生活する国の歴史に存在することをやっぱり強く意識しないと。例えば北方面がどうとか言って優越感を煽ってる場合じゃない、似たようなもんだったんだと思うんですがね、当方は。

  • 特攻(航空機に限らない)の成り立ちから実情、関わった人々、そして戦後日本での位置付けの変遷までを包括的に説明していて、この作戦、というより現象に関心を持つ人への入門的な内容。興味を引くトピックが配されていて、読者をぐいぐい引っ張る。戦後70年が経ち、特攻を改めて客観的且つ冷静に再評価する事は、日本人が将来、別の形で同じような境地に立たされる事がないよう、必要不可欠な義務と言える。

  • 特攻。
    世界戦史の中で日本だけが実行した十死零生の自爆攻撃。
    特攻が実行される前、その下地、特攻が許容される日本人の潜在意識、という歴史的且つ精神的な背景。
    そして特攻が実行されるに至った経緯、発案者、実施者、命令する側から見た特攻、命令される側である一般兵士の特攻。
    視点によって全く違う特攻が其処にある。戦後、生き残った命令者は特攻は自発的なものであったと言い張り、生き残った特攻隊員は自分の意志すら確認されない命令であったと言う。もちろん自発的な特攻もあったのだろうし、有無をいわさず特攻部隊に異動になる事もあったのだろう。
    一括りで全体を説明することはとても難しい。大正時代から昭和初期に男子として生まれたが故に特攻せざるを得なかった多くの若者たち。
    重く深く考えさせられる話でした。

  • 2015年10月新着

  • 読んでいて、今までで一番落ち込む本。
    まさかこのような本で池田さんに会うなんて。

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著者プロフィール

1967年生まれ。東京都出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、同大学大学院修士課程修了(日本政治史)。1996年、毎日新聞社入社。2019年から専門記者(日本近現代史、戦後補償史)。著書に『戦艦大和 生還者たちの証言から』『シベリア抑留 未完の悲劇』(以上岩波新書)、『「昭和天皇実録」と戦争』(山川出版社)、『特攻 戦争と日本人』(中公新書)、『戦後補償裁判 民間人たちの終わらない「戦争」』(NHK出版新書)など多数。
2009年、第3回疋田桂一郎賞(新聞労連主催)、2018年第24回平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞(同基金主催)を受賞。

「2022年 『戦争の教訓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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