看板学部と看板倒れ学部 - 大学教育は玉石混交 (中公新書ラクレ 422)
- 中央公論新社 (2012年7月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121504227
感想・レビュー・書評
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大学関係者として耳の痛い話のオンパレード.
こういう厳しい時代だからこそ,ちゃんとした取り組みができるのかどうか,それが真剣に問われている.
大学というのは教育機関であって,企業とはまったく違うものである.
だから理念よりも存続することを優先しようとする時点でもう価値を失っている.
そんなことを考えさせられた.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
志願者数を多くすることばかりを大学側は考えるために、あえて「中身を伝えない」という戦略を取っているという事実を紹介し、よりよい学部選びはいかにしてなされるべきかを提案する本。そういう意味では高校生や高校教員向けの本であると言える。
特に「同じ学部名称でも、内容には違いが」という章は、非常に参考になる。例として「環境情報学」が挙げられているが、学問分野自体が未成熟なものについては、注意が必要、ということが分かる。関係ないけど、最近マンションの広告をよく見ているが、全然内容を伝えないけど言葉の響きは格好がいいようなイメージ先行型の広告が多い気がするが、学部の名前も同じようなものらしい。「『国際』『子ども』『コミュニケーション』『ビジネス』『心理』『情報』『環境』『スポーツ』などの言葉」(p.120)を適当に二つ組み合わせてみると、それっぽい名前ができる、というのは妙に納得した。「珍しい学部」でネット検索してみたら、「グローバルメディアスタディーズ学部」とか冗長な感じだし、はたまた「経営成功学部」とかは完全に宗教だし、違和感を感じずにはいられない。
最後の第六章「これからの学部選びを考えよう」では、高校生(やその親)の色々な「思い込み」が紹介されており、大学選びを通して自らの将来を考えるにあたってはぜひ読んだ方が良いと思う。(14/10/13) -
立教大学の観光学科は1967年に設立された。看板学部だった。
留学生に人気なのは、経営を学ぶ学部。
リベラルアーツ教育が普及しているアメリカの大学でも、どの分野に強い大学かという大学ごとの細かなランキングが存在している。 -
受験料収入と学生集めが基本原理となっている大学経営。マーケティングにより決定される学部名であり,教育や研究内容を表さないことがある。高校の文理選択や進路選択が早すぎるために,入学後のミスマッチが増加する傾向。
大学教育にたずさわる者として他人事ではなく考えさせられる。マッチした学生を募集し,適切な教授と学びの機会を与え,社会に送り出す不易の過程を確立することが経営の安定化の原理であろう。 -
勉強になりました。
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大学プロデューサーの著者による、昨今の大学事情解説。高校生の進路選択のための情報提供という位置づけだが、結局は「最近は大学も学部もたくさん増えてるけど、学部名の雰囲気とかで選ぶんじゃなくて自分で良く考えなよ」ということになってる。だから本書は目の前に受験を控えた高校生の進路選択にに大して役立たないだろう。しかしそれよりも本書で語られている、日本の大学の歴史とか、最近の状況、入試における志願者数至上主義、訳分からん学部が乱立する事情などの問題点など、そして著者の考える大学教育への提言が参考になって面白かった。
アメリカの大学のことも実はこれまでよく知らなかった。本書によると、アメリカの大学は建国の歴史を背景としてリーダー養成のために作られ、それゆえ基本的にどこかの専門学部に入学しないで4年間広く学ぶリベラルアーツ教育を行い、専門家養成は大学院からというシステムであるのが特徴であるようだ。その学部課程だけを真似て日本の大学で最近「国際」「総合」「グローバル」「教養」学部みたいなのが乱立しているようである。
オープンキャンパスとか大学のパンフレットは基本的に大学の宣伝で、受験してもらいたいためにやるのだから、本当の情報は得られないよ、あんまり役に立たないよ、という著者の主張はオープンキャンパスに駆り出される側としても実に納得。オープンキャンパスなんか早く無くなって欲しい。 -
経験上,こういうタイトルの本にはまともな本が少ないのだが,この本は例外.学部の栄枯盛衰の観点から大学教育の現状を分析していて,高校生やその親の進路選択の参考になりそう.「四文字学部」「流行学部」「ひな壇学部」「カタカナ学部」などの言葉を初めて知った.
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11/1読了。母校の付属中での不祥事、先日の東洋経済での特集記事、そして部活を引退したばかりの受験生を持つ親として、何かと大学に関する話題が多い今日この頃。最近の大学事情の知識をアップデートするために読んでみました。最近の看板学部候補の新設に見られる動向を通じて、大学側の思惑を詳らかにし、これからの国際化に向けて大学のあるべき姿を示しています。受験生やその親のみならず、大学の抱える問題の現状に関心ある方にもオススメの一冊です。
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大学にとっての本当の顧客は、高校や受験生ではなく、「未来の地域社会」。受験生、在学生、保護者、設置団体、企業、高校、予備校、OB・同窓会等は、「未来の地域社会」をいっしょに創るための「広義のパートナー」。そんな思いを確信させてくれた本です。
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大学にとっての本当の顧客は、高校や受験生ではなく、「未来の地域社会」。受験生、在学生、保護者、設置団体、企業、高校、予備校、OB・同窓会等は、「未来の地域社会」をいっしょに創るための「広義のパートナー」。そんな思いを確信させてくれた本です。