奇跡の四国遍路 (中公新書ラクレ)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121506146

作品紹介・あらすじ

遍路を終えて半年余りが経つ。「遍路とは〝自分との和解〟である」。一四〇〇キロ歩き継いで辿り着いた、私なりの答の一つだ。一巡で〝和解〟できなければ、二回、三回と巡る。歩行による円環運動は、巡礼者を螺旋状に少しずつ高みへと引き上げてゆく。やがて桎梏から解き放たれ、自らを赦し、和解を果たしていくのではないか。 結願の後、三か月間にわたって『東京新聞』で遍路での経験を連載した。連載を通じてわかったのは、いつか「歩き遍路」をしたいと願っている人が、潜在的に多くいることだ。新聞の一般読者はもちろんのこと、私の周辺にも「実は以前からお遍路をしたいと思っていた」「遍路をしたことがある」など、思いがけない反響があった。連載を読んで遍路に発つ決心をした女性もいた。春の旅立ちに向けて既に身支度を始めているという。本著が、迷い苦しむ人の背中を押すきっかけになれば、執筆者として望外の喜びだ。 ――あとがきより

感想・レビュー・書評

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  • 2017年4月桜が綻び始めた頃、著者は全行程
    1,400㎞に及ぶ四国八十八ヶ所巡礼に旅立つ。

    全札所を徒歩で回る「歩き遍路」。著者が挑むのはぶっ通しの「通し打ち」。美しくも厳しい四国の山野を剥き出しの身体ひとつで四国を一周する。巡礼者は、弘法大師 空海の化身とされる金剛杖を突きながら歩く。『同行二人』と言われる所以である。その上部には梵字が描かれ、卒塔婆を模している。もし行き倒れになっても、それが巡礼者の墓標になる。かつては遍路=歩き遍路であり、遍路宿なども少なく野宿だっただけに、いかに通し打ちが過酷であったかを物語る。時代は移れど1,400kmには、遍路ころがし(難所・悪路)が待ち構え、荒天に行く手を阻まれ、容赦のない炎天、慢性的な足の痛みに耐え、重いリュックによる肩の擦りむけ、時に道に迷い、耐えかねる空腹…は、皆が等しく経験する。でもその道中には、土地の方からの「お接待」という施しがある。癒され、激励を受けながら、毎日ぼろ切れのようになってひたすら歩き継ぐ。

    さて、本書。
    著者が毎晩、遍路宿で睡魔と戦いながら懸命に書き綴った日記を元に編まれた。そこには、両親の快癒祈願・自身の悩みや不安・出会いと別れ・痛む足・風の匂い・道標も見えない真っ暗な夜道の歩行の恐怖・置き忘れた金剛杖が戻ってきたエピソード・不思議な出来事・奇跡的な邂逅…が記され、最後にその日のことをひとつの俳句にしたためる。

    巻末には、情報学者 西垣通氏との巡礼問答が収載され、通し打ちを終えての感想を語る。
    ◉小さな一歩も弛まず重ねていけば、必ず終点にたどり着くということを身体に刻んだこと。
    ◉遍路とは「自分との和解」である。自らを赦し、和解を果せたと。
    ◉即効性はないが、東洋医学のようにじわじわと効いている感じ。
    ◉身体の痛みに耐え、ぼろぼろになりながら、祈り供養して歩くことで生まれ変わる。それは、自分自身の魂の救済に他ならない。「白衣は死に衣装であり、産着である」。

    最後の坦懐は強烈であり、強く胸に迫る。この約70日間にわたる道中記を読みながら、何度も唸ったのは、木々・草花・鳥・虫の息づかいが今にも聞こえてきそうな筆致。さすがは俳人だけあって、その切り取り方が巧みである。また一期一会の出会いで得た交流描写に鼻の奥が何度もツーンとさせられてしまった。

    心地よい波動が立ち昇ってきそうな実に清澄な一冊である。

  • 若者には戦わずして諦めている敗北感がある。
    その原因はスポーツにある。一流になれないと早々に諦める。スポーツビジネスの犠牲者。

  • 新聞連載を途中から読んでいたので、最初から通しで読めて良かった。お遍路さんはいつかしてみたいと思っているので想いが募る。
    西垣通さんからの八十八問は、俳句、AI、外国や外国人との比較など多岐にわたって掘り下げられていて、一般向けに書かれた連載ではうかがい知れない深い考察がされていたことを知った。そして黛さんの剛柔併せ持つ強さも。
    他のお遍路さんや地元の方との縁、絆。読み終えるときには自分もジワリと涙となった。

  • 歩き遍路エッセイとしては良本。

    著者が俳人と言うだけあって四国遍路の描写が上手い。
    読んでいると、自分が過去に歩いた時を思い出し、楽しく読めた。

    個人的には後半の質疑応答が要らなかった。
    後半は著者のスピリチュアルワールド強めな内容になっている。ただ、時折心に響く言葉も。

    著者が遍路中に出会った人たちの物語を、著者なりにもっと語ってくれた方が、四国遍路エッセイ本として、より魅力的な内容になっていたと思う。それくらい、著者の人物描写には惹かれるものがあった。


    ただどうしても気になった事が一つ、

    【サンティアゴ巡礼】

    が、ひたすら本書に登場する。

    同じ【巡礼】というカテゴリーで、著者がどちらも体験しているから、その比較として登場するのは理解できる。ただ事あるごとに「サンティアゴ巡礼」を登場させるのはいかがなものか…


    本書くらい出てくるのであれば
    【サンティアゴ巡礼と四国遍路】
    とタイトルを変更した方が良いのでは無いかと思った。

  • なぜか読むのに時間がかかってしまいました。
    現代の遍路旅を支えるものにコンビニもあるな、と読んでいて感じました。コロナ禍では遍路する人の数がどうなっているのか。ちょっと気になる。

  • もう、歩きお遍路するしかないでしょ!

  • ふむ

  • 遍路。著者が行き着いたのは「自分との和解」。 孤独。五感が研ぎ澄まされる。縁。サイン。「絆と煩わしさはカードの裏表、どちらか一方は選べない。」 無数の人々の思いがつまった遍路道。何かあるに違いない。 ヨーロッパの巡礼街道は直線、日本のは円、というのも興味深かった。

  • 俳人の著者による四国八十八か所巡礼の記録。「歩き遍路」の過酷さや、出会った人々の人情、不思議な出来事などが綴られている。外国人遍路との考え方の違いも面白い。この本と読むと巡礼に出たくなる。

  • 厳しいことで知られる徒歩による通し遍路に挑んだ黛さん。様々な困難をくぐり抜け、八十八か寺に参拝。リアルで感動的な体験記。

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著者プロフィール

俳人。神奈川県生まれ。1994年、「B面の夏」50句で第40回角川俳句賞奨励賞。2002年、句集『京都の恋』で第2回山本健吉文学賞。2010年4月より1年間文化庁「文化交流使」として欧州で活動。スペインサンティアゴ巡礼道、韓国プサン~ソウル、四国遍路など踏破。2021年より京都×俳句プロジェクト「世界オンライン句会」を主宰。著書に、句集『B面の夏』『忘れ貝』『てっぺんの星』、紀行集『奇跡の四国遍路』、随筆『暮らしの中の二十四節気』など多数。

「2022年 『句集 北落師門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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