- Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121600233
感想・レビュー・書評
-
陰翳礼讃を読みたくて。
昭和初期に書かれたんだけど、端的に主張を述べると純日本の美は薄暗い中で見てこそ映える。衣服や美術品はもちろん、人までがそうだと言う。
他にも懶惰の説、恋愛及び色情、旅のいろいろ、藝談、いわゆる痴呆の芸術について、雪、岡本にて、私の見た大阪及び大阪人、東京をおもうが収録されている。当時の東京出身の小説家がそもそも東京をどう捉えていたのかといった話があって面白かった。現代ではPCに引っかかるような書きぶりもあったけれど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「返す返すも東京は消費者の都、享楽主義者の都であって、覇気に富む男子の志を伸ばす土地柄ではない」 ー 407ページ
現在の東京が果たして依然としてこの通りであるのか、あるいは東京のどの部分がそうで、どの部分がそうではないのか、ちょっと考えてみる必要はあるとはいえ、確かに色々なものが埋め込まれすぎていて、自分が埋もれてしまうという感覚はこの時代にもあると思う。
アウトプットに大事なのがインプットというのは勿論そうで、人という意味でも場所という意味でも情報という意味でも、東京に良質なインプットがあるというのはおそらく正しい。僕がまともにちゃんと1年以上住んだのはせいぜい東京と横浜、それから留学してたニューヨーク(の田舎)くらいだが、その中では明らかに東京の情報量は高い。
ただ、アウトプットをするためにはそれとは別に仕組みをつくる必要があるのは必然で、いい意味での孤独を、精神的に疲労していない状態で――ここがおそらく重要なのだ――、確保しておく必要がある。その時、情報量の多寡が精神的疲労につながってしまっているのだとしたら、それは宝の持ち腐れだし、おそらく宿主たるその人までをも腐らせてしまうことになるのだと思う。