アーロン収容所 (中公文庫 M 4)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122000469

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、終戦直後から昭和22年5月までの1年9ヶ月間ビルマにおける英軍捕虜として強制労働に服せられた会田雄次氏の回顧録である。西欧ヨーロッパ、英国がヒューマニズムの源流国であるというのは嘘ではないだろう。しかし、人種偏見がいまなおヨーロッパ社会の底流に確実に存在しているということがわかる貴重な体験記だ。

    本書を読むことでできる疑似体験というのは、実際の捕虜生活の苦しさの数千分の一、あるいは数万分の一かもしれない。それでもなおその過酷さと生き残っていくために要領のよさが求められるという現実は、たいへん生々しいものとして伝わってきた。捕虜生活という非日常では盗みに長けているとか、嘘をついても毅然、平然としていられる大胆さが強力な武器になるというのは皮肉なことだった。こうしてみると、非日常的な世界と日常的な世界で求められる能力というのは、非常に大きな隔たりがあるように思う。つまり能力の発揮、その潜在的な力の発露というのはやはり、時代環境によってことなるので、ほとんど運とか偶然性に左右されるものなのではないかと考えずにはいられなかった。

  • 戦争を通して、異国間の文化や人種間の価値観の違いなどを知ることのできる本。
    人間性は、その環境によって様々に感じられるといえことがよくわかった本だった。

  • ビルマ戦線で終戦を迎え、そのまま英軍捕虜として過ごした二年間を綴った一冊。歴史書、文明論、日本人論として優れているのは言うにおよばず、才能の活かし方など自己啓発本と読める箇所もある。
    本書が、こうしたいろいろな読み方ができる良書になっているのは、捕虜という特別な環境に置かれながらも 冷静に客観的に人間を観察できた著者の力量に因るところが大きい。
    時代を間違えば右翼的な書と扱われた可能性もあるけれど、今は日本人なら読むべき一冊として誰にでも推せる。

  • 読むべき本

  • 第二次大戦後の捕虜収容所の話。この前読んだ虜人日記も面白かったが、本作も面白かった。この二作は著者の立場は違うが(本作は学徒の一兵卒、後者は軍属のエンジニア)どちらも逞しさを感じられて頼もしい日本人像に憧れるところがある。また、収容する側の違いも(本作は英国、後者はアメリカ)興味深い。日常から軍隊、前線、敗走、捕虜と変化目まぐるしい中にしか見えてこない人間の本質のようなものがそこにはあるのかも知れない。生きるってどういうことなのかを考えさせらる。

  • 筆者が過ごした、終戦直後から昭和22年5月までの1年9か月までのビルマにおける英軍捕虜生活について書いてあります。初めて読み終わりましたが、どう言い表わせばいいのか…何とも言えません。それぐらいの衝撃です。

  • 2011.11.5読了。

    ナマでありながら客観性を失わず、自分自身の心理や状況にもきちんと向き合っている。読めてよかった。

  • 著者が体験した収容所での出来事が、出来るだけ主観的な要素を除いて、冷静に語られる。捕虜から見た戦勝国というと恨みつらみになりがちだがそんな事はなく、ただ事実として「彼らは日本人とは違う」ことが語られる。違う文化で育てば違う国民性が出来るのは事実であり、「同じ人間なのだから分かり合えるはずだ」と妄信していては他の文化を理解することさえも出来ない。

  • 著者がミャンマーのアーロン収容所で体験したイギリス人による人種差別の体験を中心にして書かれた記録だ。別項で紹介した『肉食の思想』を体験的に裏付けるような内容だ。

著者プロフィール

会田雄次

一九一六年京都府に生まれる。四〇年京都帝国大学史学科卒業。四三年に応召、ビルマ戦線に送られ、戦後二年間、英軍捕虜としてラングーンに抑留された。帰国後、神戸大学、京都大学(人文科学研究所)をへて、京都大学名誉教授。専攻はイタリア・ルネサンス史。著書は『アーロン収容所』『ルネサンスの美術と社会』『ミケランジェロ』など多数。九七年逝去。

「2019年 『日本史の黒幕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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