突風 (中公文庫 A 9-6)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122000797

感想・レビュー・書評

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  • 表題作を含む7つの短編集。ただし、「結婚式」という短編は、同じ中公文庫の他の短編集にも所収されていた。この単行本は、文字が他の文庫に比べて小さいのが難。

  • おもろいよ

  • 初期短編集。
    「金庫」「突風」「黒い血の女」「理由」「結婚式」
    「「静雲閣」覚書」「穴の中の護符」収録。

    推理小説らしいのは「金庫」
    他は、男女間、日常生活に潜む落とし穴を描いた小説。夫の浮気相手の恋人ところへ乗り込む「突風」における妻の大胆さ、幼さが面白かった。

  • 推理作家のイメージが強い松本清張ですが、この本ではそれらしいのは最初の1作目だけ。
    後の6話は人間模様、人間心理を描いた話となっています。

    『金庫』の主人公は安月給で働くサラリーマン。
    彼は同僚と古新聞を持ち寄っては倉庫で読むことを楽しみとしている。
    そして、自分たちの住んでいるC市でかつて起きた啓道事件に興味をもつ。
    啓道事件とは、啓道会という新興宗教の支部長という立場であったある女性が起こした事件で、彼女が着服しているであろう金の一部、500万ほどがまだ行方不明であるという事に彼らは着目する。
    その金の行方はどこに?
    ヒントは別の古新聞の記事にあった。

    これは残酷な話だと思った。

    『突風』は夫が浮気をしている事を知った主婦がその相手であるホステスの女性に会いに行く事が発端となった話。

    とても皮肉だけど、人間の心理ってそんなもんだろうとも思う話だった。

    『黒い血の女』はタイトル通り、どす黒い血の流れる女が生家の財産を後を継いだ妹のものにしたくないと画策するという話。

    『理由』は何もかも水準以上でよくできた妻に飽きてきた男の話。
    男は妻とどうやったら円滑に別れられるか画策する。

    『結婚式』は出来すぎた妻と浮気をする夫の事を側で見てきた第三者の目線による話。
    彼らのことを思い巡らすのが結婚式の場というのが皮肉。

    『「静雲閣」覚書』
    元子爵のお屋敷で今は高級割烹旅館「静雲閣」を買った男性。
    彼は庭の隅に建つボロボロの土蔵に目をとめ言った。
    「ここに以前は小さな建物があったはずです。そして、或る狂人が住んでいたといいます」
    彼はその夜、女中相手に自分が何故その事を知っていたのかを話し始める。

    『穴の中の護符』は江戸時代の根岸が舞台。
    身寄りのない死体を引き取りに美しい女が現れる。
    翌朝、その界隈の何軒かの家の庭に穴が掘られ、その穴に伏見稲荷の護符が撒かれるという陳事件が起きる。
    先の死体を引き取った件と護符の撒かれる事の因果関係とは-。

    読んでいてどれも登場人物が素朴だし、時代も素朴だと感じました。
    その上に成り立った話ばかりで、今の時代では成立しないものばかりです。
    だけど陳腐さは全くなく、さすがだと思いました。
    やはり本当にいいものは時代を超えるんだな~と実感です。

  • 松本清張作品としては少々異質な短編集です。

    「清雲閣の覚書」は、
    ちょっとじ〜んとくる話でした。

  • 詐欺師が隠した財宝を暴こうとする「金庫」
    夫の浮気相手のヒモのところへ乗り込む「突風」
    妹が継いだ財産を妬んだ姉が殺人を犯す「黒い血の女」
    よくできた妻が不倫を悔いて自殺する「理由」
    よくできた妻が夫の不倫を黙認する「結婚式」
    ある過去を持つ男が屋敷を買い取る「「静雲閣」覚書」
    囲われ者の暮らす一帯に伏見稲荷の護符が撒かれる「穴の中の護符」

    こうして見ると不倫かお金の話ばかりだなぁ。
    一番インパクトがあったのは黒い血の女。

  • 「金庫」
    「突風」
    「黒い血の女」
    「理由」
    「結婚式」
    「「静雲閣」覚書」
    「穴の中の護符」

    解説にも書かれてあったのだが、推理小説というよりはノンジャンルの短編集という印象。
    つい、栗本氏の短編を思い出してしまった。栗本氏は松本氏の小説を読んだことがあったのだろうか。

    「結婚式」が一番印象に残ったのだが、解説に書かれていたように「突風」と「結婚式」は確かに対照的な逸話。夫の浮気を題材に、それを解決する妻の立場を書いている。愚かな妻と賢い妻、どちらがいいのか、考えさせられる逸話だと思う。
    それから「理由」は後味の悪い内容だった。夫の悪知恵のせいで死んでしまった妻の復讐をしようとした妻の弟も姉のためにとはいえ考えなしだし、夫も自分勝手過ぎるし、一番かわいそうなのは死んだ妻だ。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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