- Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122015616
作品紹介・あらすじ
人が死ぬというのはどういうことなのか。人が生きているというのはどういうことなのか。驚くべき事実を次つぎに明らかにして、生命倫理の最先端の問題の核心を衝く。毎日出版文化賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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そもそも脳死とは何か。脳死の判定において何が問題になっているのか。人間の死とは何かについて難解なテーマではあるが詳細にとてもわかりやすく書いてある本。 読んで面白いと感じた点は、瀕死状態から復活した臨床例を見ると人には魂のようなものがあるのではないかと思った。また、医学と言うのは経験則的なものの集合体であり結局のところ人間の中でどういった反応が起きているのか解明されていないことも多いと言う点だ。
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自分がいずれ死ぬのも避けて通れません。とても参考になりました。
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「自分で考え、表現する」見本のような本。
自分の考えを、読み手に納得させるために、どれだけの丁寧さ、緻密さが必要なのか。圧倒される事ばかりだった。
死は、命は何なのか。現代科学で解明できていない事を、法的に、医学的に定義することは、一見不可能に思われる。
そんな中、確実に死んでいる状態を、事実の中から拾い集め、生と死、殺人と脳死の線引をしていく。
全てが明らかになっていなくても、自分の考えを、論拠の上に成り立たせる。
これができる人は、今でも少数なのではないかと思う。 -
論理学の本を読んでいる様だった。
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「脳」という特別な存在の臓器を中心に、人間の身体のメカニズムを紐解き、そして人間が死ぬということはどういうことか、生死を正しく判断するにはどうすべきかを、本書は徹底的に追求して問題提起している。
今から30年も前に書かれた作品なので、もしかしたら現在では既に事実と異なっていたり、取り上げている問題自体が時代遅れになっているかもしれない。
それでも作品としては、科学的な部分を分かりやすく伝えてくれるので面白くは読める。
ただ、文庫本にして500ページを超えるボリュームがあることと、文章の端々からどうも急いで執筆してのではないかという感じを受けたので、本書を強くはおすすめしない。 -
脳死に関する徹底的な取材と考察。
著者は「知の巨人」とかもてはやされる前のジャーナリスト時代の作品が一番面白いと思う。 -
2007
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サイエンスをテーマにしたノンフィクション作品を数多く手がけている立花隆の代表作の一つです。脳死をめぐる問題に対して、まずは科学的事実を分かりやすく紹介することに務め、その上で従来の脳死判定基準が孕んでいる問題の指摘をおこなっています。
厚生省の「脳死に関する研究班」が1985年にまとめた報告書の判定基準(いわゆる「竹内基準」)の根拠が薄弱であることを指摘し、また、イギリスのパリスに代表される脳幹死基準への反論を提出しています。
著者の議論で、ときおり臨死体験が引き合いに出され、やや奇異な印象を持ってしまいますが、要は「内的意識」の停止を知ることはできず、できるのはせいぜい意識の発現が見られないことを確かめることしかできないのだから、脳機能停止ではなく脳の器質死を基準とするべきというものになるかと思います。
死についての社会的・哲学的議論や、脳の働きについての専門的な議論のいずれにも偏ることなく、ニュートラルな立場からの批判的考察になっており、個人的には非常に説得力があるように感じました。 -
死に対する現状の利害に関わる道具としての知識や法律と
真理に関わる倫理観の全てに行き渡り
客観性と意見を兼ね備えた素晴らしい内容である
心肺停止を死亡の判断基準としてきた過去に対して
何故今脳死を判断基準にしようという要求があるかというと
二つの利害関係が浮かび上がってくる
一つは臓器移植で命を永らえる事ができるかもしれない人々による
欲望であり要求である
もう一つは医療関係側とそれに飲み込まれた政府官僚の
欲望と企業的縄張りの利益追求からの要求である
又利害に関係なく
死の誤認によって判定後に生き返ることのない完全な死を問う
倫理に沿った全くの学問的要求もあるかもしれない