- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122018594
感想・レビュー・書評
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最初の一文がとてもよい
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透明感があって、触れると消えてしまいそう。
「雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ」(P32)あまりにも美しい言葉をいつまでも転がしていたくなりました。
表題作も良いですが、「ヤー・チャイカ」も秀逸です。現実と、それを俯瞰するような宇宙的な視点。万人向けではないものの、日々生き急ぐように何かに追われる生活に、ストップをかけてくれるような素敵な作品でした。 -
ステイルライフ:まだこの作品を超えるような池澤夏樹の小説には出会えていない。独特の雰囲気と手ざわり感。
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難しい。たぶん 自分の 内なる世界 と 外の世界 の 2つの世界を目線を変えて 描いた小説2編。タイトルに 意味があると思う
「スティルライフ」は 静止画の意味。星や外の世界を 静止画として 自分の内なる世界と別物として見る目線。小説の中での 佐々井の役割=外の世界を暗喩
「ヤーチャイカ」は ロシア女性宇宙飛行士のコールサインを意味。宇宙(外の世界)から 自分の内なる世界を見る目線。小説の中での 恐竜の役割=自分の内なる世界の変化を暗喩 -
1987芥川賞。
薄味で、綺麗で、静かな作品。
「スティル・ライフ」では宇宙、「ヤー・チャイカ」ではロシア。自分から離れたどこか遠くのことを思い、想像力でどこまでも行ける。
ここではないどこかと想像力で繋がることは、精神の均衡を保つのに良いのだとおもう。自分ひとりだけの孤独な想像力の旅は、他人と共有することはないけれど、別に寂しくはない。
「スティル・ライフ」では、佐々井という友人が、主人公にその遠くのものをもたらしてくれる。
ムーミンで言えばスナフキン。星野道夫さんの本なら、アラスカの遠い海のクジラのように。 -
この世界が君のために存在すると思ってはいけない。という書き出しだけでレベル50くらい強くなった気がした。背筋がまっすぐになる。
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美しい言葉がいっぱいのさわやかな文章。
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確か中学生のころ、一度、どこかのテストか教科書で読みました。
その時は抜粋でありそれほど面白いというものでもなかったのだけれど、その後全文を読み、それ以降たびたび手に取っている「スティルライフ」。
改めて今回読み返して見る。
浮遊感とでも言うべき雰囲気と、それを引き立たせる理系を交えた文体の魅力は今後、何度この本を手に取らせることでしょう。
そして冒頭の1ページ。
それはたぶん、これからずっと私たちを勇気づけてくれます。 -
冒頭の一節でノックアウト…。いっぺんでこの作品のとりこになってしまいました。この静かなる、しかし内側から何か強い光線を放ったような眩しさ。そんな文体で物語は始まってゆきます。 “チェレンコフ光”という言葉が出てきますがこのチェレンコフ光に似た微弱なる青白い光が常に背景にあり、その光がこの物語の終わりへと導いていくような感覚で読みました。全体に散文的なイメージ。けれども詩的でもある。時には自分の中に存在するもう一つの世界に呼応してみる平静な心を持った方がいいのかな。「たとえば、星を見るとかして」
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紀伊国屋書店が実施していた『本のまくら』フェアで手にとった一冊。 『生物と無生物の間』を読んで以来、理系の人が書く小説を読んでみたかったけど、まさしくこれ!って感じで言葉のチョイスが絶妙でした。 良い本に出逢えたなー☆