わが友マキアヴェッリ―フィレンツェ存亡 (中公文庫 し 4-6)
- 中央公論新社 (1992年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (629ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122019454
作品紹介・あらすじ
歴史的(イストーリコ)、喜劇的(コミコ)、悲劇的(トラージコ)…。大きく変わる時代を"仕事"の場として生きた一人の男。「君主論」の作者は、なにを見、なにを行ない、なにを考えたか。ルネサンスのイタリアを華やかに彩り、その終焉に立ち合った一人の有能な男の生涯を現代に甦らせる大作。
感想・レビュー・書評
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2022/01/11 木の本棚より 歴史 @図書館 ◇塩野七生
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「君主論」と「マキャベリズム」で有名なニコロ・マキアヴェッリの一生…
を通してフィレンツェとルネサンスイタリアの衰退期を記した書、だな。
チェーザレ・ボルジアより先に生まれ、後に死んだので、
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」を先に読んだ方が色々わかりやすいかと。
この頃のイタリア…というかヨーロッパがどうなってたかを
知ってる日本人ってほとんどいないと思うので、非常に勉強になる。
もちろん読みものとしても面白い。
これを読んだ後に「君主論」を読むとよいかも。すぐ読めるし。 -
マキャヴェリを深く敬愛する著者が、彼の生涯と彼の生きた時代のフィレンツェをえがいた評伝です。全体は三部に分かれており、第一部では、当時のフィレンツェの歴史が概観され、第二部でマキャヴェリの生涯が、第三部では彼の思想が、著者自身の観点から語られています。
マキャヴェリの生涯にかんしては、ときにモームの作品への対抗心も現わしつつ、フィレンツェの外交書記官としての彼の公的な生活のみならず、女や賭博に対する彼の傾倒を示す「非著名な事実」についても、小説家らしい好奇心にもとづいて筆を伸ばしています。
一方第三部では、マキャヴェリの思想にかんする研究書とは異なり、フィレンツェの外交書記官を免職になったのちの彼が、フランシスコ・ヴェットーリやグイッチャルディーニらとどのような交流をおこなったのかということが中心にとりあげられていて、マキャヴェリの思想をいわば生きた姿でえがきだそうとする著者の意気込みが感じられました。 -
権謀術数主義として人口に膾炙する”マキアヴェリズム”のおかげで、陰険で冷酷という印象のマキアヴェッリ氏ですが、この本を読むと、彼がとても人間臭く、情熱的(いろんな方面に)で愉快な男に思えてくる。いや、実際そうだったらしいのだけれども。
そういうわけで、友達か愛人にすると人生楽しくなりそうな彼は、正直、結婚相手にはしたくないタイプ(笑)。外野から遠目で応援してあげたい。 -
辻邦生は、「春の戴冠」において、ルネサンス盛期フィレンツェの香りと風の音まで感じられるように、生々しく描くてみせた。
それと比べると、どちらかといえば論文的な作品と言える。
塩野七生の確立した「歴史的エッセイ」のスタイルだが、小説と論文の中間を歩む、という彼女のいつものスタイルよりも、論文寄りを歩んでいる、かのようだ。
それは、著者に、心のトキメキが少ないからだ。
著者が最も愛するのはチェザーレ•ボルジアだ、次いでユリウス•カエサル。
本書の主人公ニッコロ•マキャベッリには心のトキメキを感じないのだ。
それが、本書の熱量を下げることになったのではないか。
それでは、何故彼女は、長大なマキャベッリの「歴史エッセイ」を書き上げたのか?
それは、マキャベッリとフィレンツェを通して、愛するチェザーレの姿を垣間見るために他ならない。
描かれるのは、春の去った痛々しいフィレンツェの姿、つまり、メディチ家の栄華の失われた後のフィレンツェだ。
それは、チェーザレ•ボルジアの時代到来でもある。
しかし、父であるローマ法王アレッサンドロの後ろ盾によってイタリア統一という前代未聞の企てを進めるチェーザレにとってフィレンツェは、ワン•オブ•ゼムの都市国家に過ぎない。
それが、著者の筆をして、秋の寂寥を感じさせるのだ。
マキャヴェッリは、「君主論」において、フィレンツェの誇るロレンツォ•デ•メディチではなく、フィレンツェの敵であるチェーザレを主役としたのか?
この謎に塩野は迫る。
フィレンツェのマキャベッリを描きながら、著者が見ていたのは、チェザーレの姿だった、というのはそうゆうことだ。
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権謀術数の代名詞のように言われるマキャベリですが、彼の人生については何も知りませんでした。本書は塩野七生さんがフレンツェの歴史と共に彼の生涯を紹介しています。外交書記官として活躍しながらも、44歳にして突然に解任され、仕事がなくなった彼は、思索に耽り「君主論」などの著作を書きます。その後も職を求めますが、「君主論」などの作品が有名になっていたにもかかわらず、逆に理屈っぽいというような評判がたったようで、それが災いし叶わず、最後は58歳で世を去ります。なんとも人間臭いですね。
フィレンツェ、メディチ家が外国から攻められて滅んでいく姿と、マキャベリの最後がリンクしていたのがとても印象的でした。2022年の1冊目。 -
SNa
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マキアヴェッリの人となりがよくわかった。
ただ、私はルネサンスの歴史に疎く、消化できないところも多かった。
学生時代は建築を学んでいたので、ルネサンスの建築というとオーダーと言われる比率や規律を重んじたものを善しとする文化であったという印象を持っていた。
今回この本を読みながら、そういった建築も緊張のある現実であればこそ、虚としてそれが必要であったのか思った。
そもそも「君主論」への助走のつもりで読んでみたけど、そもう少しルネサンス界隈の読書をしようと思った。
森田義之「メディチ家」でも読んでみよう。 -
(「BOOK」データベースより)
歴史的(イストーリコ)、喜劇的(コミコ)、悲劇的(トラージコ)…。大きく変わる時代を“仕事”の場として生きた一人の男。「君主論」の作者は、なにを見、なにを行ない、なにを考えたか。ルネサンスのイタリアを華やかに彩り、その終焉に立ち合った一人の有能な男の生涯を現代に甦らせる大作。 -
マキャベリのことを知ったのは、高校の世界史と倫理である。当時はなんて過激な思想を説く人だろうと思ったけれど、本書を読んで、マキャベリは失われつつある祖国を嘆き愛した、情熱的な普通のおじさんであったと知った。それにしても当時のヨーロッパって本当に劇的。当時を思い返してフィレンツェを再訪したいけど、いつになることやら。
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100113(n 100212)
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2008/02/28 読了 ★★★★
2009/12/23 読了 -
2008/02/28 読了
2009/12/23 移動 -
下手な研究者の書いたものよりも、よほどマキャヴェリの息遣いをよく伝えている名作。特に、友人たちの往復書簡が生々しい。