- Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122020061
感想・レビュー・書評
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若書きの谷崎ノワールは江戸末期の歌舞伎のよう。商家の箱入り娘お艶と奉公人新助は身分違いの恋をしていますが、悪人の口車に乗って駆け落ちするとテンポよく人生を転落させます。深窓の佳人と朴訥実直な奉公人は、たがが外れると男を手玉に取る毒婦と血に飢えた殺人鬼へと変貌し人間の二面性をあらわにします。まだ文章に凝っていない時期なので一気に読める痛快ピカレスク小説です。昔の映画作品があるようですが、リメイクを希望します。
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「お艶殺し」
楽しめた。短編でもこういうふうに序破急がはっきりしていて登場人物が少なくてもストーリー自体がしっかりと浮き上がってくる素晴らしい作品。
「金色の死」
いろいろと芸術論を述べていても独善的で押しつけがましい芸術はつまらない。谷崎の文章をしてもその芸術性は伝わってこなかった。どこかウォルト・ディズニーを想起させるものがある。商業的には大成功者だけど。 -
文章が美しい。
「その晩は生温い風が秘めやかに吹いて、夕闇の小路を行きかう人顔が木蓮の花の如くほんのり白く匂うような、闌な春の最中の朧月夜であった。」 -
作者20代のほぼ同時期の2作、その後の作品の底流を感じさせる『お艶殺し』、話の流れが良い。
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めちゃくちゃ面白いのに作者の気まぐれなモチベーションがダダ下がりしたため連載打ち切りになった漫画のような作品だった…谷崎潤一郎は好きだけどこのたたみ方は正直どうなの?ゴールデンカムイの作者に漫画化して欲して完全版にして欲しい。
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内容(「BOOK」データベースより)
駿河屋の一人娘お艶と奉公人新助は雪の夜駈落ちした。幸せを求めた道行きだった筈が。気ままな新生活を愉しむ女と破滅への意識の中で悪を重ねてゆく男。「殺人とはこれほど楽な仕事か」―。文学とは何か、芸術とは何かを探求した「金色の死」併載。
令和元年7月8日~11日 -
表題作と『金色の死』の2篇。先は江戸時代の駆落ちの話。女の言うままに為していたらどんどんと泥沼に沈んでいった男。振り返るに女が欲したのは、自らを解き放てる環境であって、愛ではなかったのだろう、最初から。人生の価値を掴んでいる女性だと感じた。後のは、互いに現代芸術の表現者ながらも嗜好性が大きく異なる二人の男達の話。瞬間を極めようとするなら最期はそうなるよね、と思った。こちらも自らの人生観に沿って生き切った点で共通すると思う。ただやや退屈で谷崎にとっては黒歴史らしい。
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金色の死も読了