- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122020351
作品紹介・あらすじ
後漢は衰微し、群雄が覇を競う乱世に、一人の青年が時を待っていた。三顧の礼にこたえ、劉備のもと、「臥竜」孔明は、南下する最強の敵、曹操に立ち向かうべく、赤壁の戦いへと赴く。透徹した史眼、雄渾の筆致がとらえた孔明の新しい魅力と壮大な「三国志」の世界。
感想・レビュー・書評
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三国志は読んだのだが、冊数多く、再び読むには体力が要るので中々腰を上げにくい。それが為に、物語の大筋や主要な登場人物は覚えていても、細かな部分は月日と共に抜け落ちていく。どんなに興奮して読んでも、それは残念ながら自然の摂理で仕方のない事だ。だからこそ、こうしたスピンオフのような著作が有難い。しかも諸葛孔明、陳舜臣。固い感じだが、口語体のタッチで読み易い。劉備と出会う前の諸葛家のストーリーが読める点では、三国志よりも詳しい。上巻は赤壁の戦いの途中まで。続きが楽しみだ。
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三国志の中では神がかり的に無敵の諸葛亮が、等身大の素の姿で描かれており面白かった。
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諸葛孔明は有名ですよね。
ズぅ~~~っと気になっていた人物。
赤壁の戦い(レッドクリフ)でもキーパーソンの一人。
君主に仕える参謀として一級の人物。
策略を用いる天才。
泣いて馬謖を切る。
死せる孔明生ける中達を走らす。
ぼくの持っている彼の知識はこの程度。
・・・・・・
読み終わって、えっ?この程度?
という感想。
レッドクリフの記述も、えっ?っと思うくらい短い。
単に枝葉が湿気ないように雨から守ったという程度。
彼が晩年指揮したという戦いも、スカッとした勝ちは皆無。
逆に、負け戦ばかり。
実際の彼も、三国志の中で蜀漢を安定させようとした夢半ばで亡くなっている。
彼の実績は?
陳舜臣の小説はいつもこうだ。
以前読んだ【耶律楚材】もそうだった。
どんなスゴイ人物で、どんなスゴイ実績を残したのか?
彼はそういう描き方をしない。
逆に避けているとすべきだろう。
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耶律楚材も諸葛孔明も君主に仕える秀才。
二人には共通するものがある。
陳舜臣の小説は、小説の部分を極力押さえる。
架空の人物、架空の会話。
どれも控えめだ。
得意じゃないのか?・・・とさえ感じる。
だが意図的だと思う。
素材も孔明も押しも押されぬ天才的な参謀。
逆にそのスゴさを描かないほうが、本当のスゴさが伝わる。
そんな彼の意図を感じる。
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さて、彼ほどの人物が何故、先頭に立ってリーダーを目指さなかったのか?
かなり若いときから、自分は参謀として君主に仕えるという道を選択する。
彼ほど才能がないのに、お山の対象になろうと目論む人間は沢山いるのに。
それは、秀才と天才の違いだろう。
真のリーダーとなるためには「閃きのある」天才で無ければならない。
逆に秀才は「理詰め」であることが武器だ。
「理詰め」になるほど「閃き」を恐れる。
孔明は、それを知っていたのだ。
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やはりスゴイ男だった。 -
これだけの小説を執筆するにあたって、作者はどれだけの資料を蒐集したのだろうかと思わせるほどに、事細かに主人公とその時代の人々のことが描写されている。
上巻は赤壁の戦いまで。三国志によく知られている赤壁の戦いの詳細は語らず、そこに至るまでの孔明と呉の賢臣たちとのやり取りを中心に描かれていることも新鮮である。 -
曹操推しの私ですが、孔明にも惹かれます。冷静な政治家でありながら、劉備のムチャクチャさを撥ねつけられない…そこにグッときます。
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十数年ぶり再読、覚えてる箇所の方が少ない
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諸葛孔明の28歳までを描いた歴史小説。歴史小説が苦手ですが、意外と面白い。
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「人間孔明の実像に迫る」
所蔵情報
https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=K26703 -
<上下巻読了>
三国志の登場人物の中でも、日本人には特に人気の高い、諸葛孔明を主人公とした歴史小説。
生い立ち前から逝去までが、時代背景も併せて、丁寧に綴られる。
ここに登場する諸葛孔明という人物は、決して、完全無欠の鬼才の軍師としては描かれない。
あくまで堅実に、現実的に、謹厳な官吏として、彼は乱世を見据えている。
その優秀さと高き志、誠実さ故に、内紛や人間関係に翻弄され、時に失敗もし、苦悩する。
神格化された偉人というより、血の通った生身の人間としての為政者であり、その豊かな喜怒哀楽が鮮やかに表される。
また、蜀漢の衰退の一因に、人材不足があったと言われるが、実際には、個々の人材は優れていても、人間同士の組み合わせの如何によって力を発揮できなかったり、不調和から国家の不利を招いたりという事態があったことが記され、その説得力に唸らされる。
全体的に、抑制の効いた淡白な筆致だが、それが却って奥行きのある、味わい深い上質な文章となっている。
そして、五丈原にて、孔明の最期の台詞に、熱い感慨が込み上げてくる。