- Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122020863
作品紹介・あらすじ
三週間ほど前から、わたしは奇妙な日記をつけ始めた-。春の訪れとともにはじまり、秋の淡い陽射しのなかで終わった、わたしたちのシュガータイム。青春最後の日々を流れる透明な時間を描く、芥川賞作家の初めての長篇小説。
感想・レビュー・書評
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脆く今にもこぼれてしまいそうな美しさと醜さを、ヴェールに包んで差し出してくるような儚さを感じる物語だった。食に魅了されていく主人公の様子や、弟のまつげの描写がとても綺麗であった。病という言葉の中には収まりきらない彼女たちの姿を、これから先もふと思い出す事があるだろうと思う。
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春に近づくこの季節にこの本を読めてなんだか良かったなあ、と思った。
主人公のかおるやその弟、恋人の吉田さん、それぞれが人とは違うこと(異常な食欲や病気等)を持っているけど特段それに悩まされることもなく淡々と日々を過ごしていく。
大きな感情の波も無くごく当たり前にも思えるような、そんな優しい情景ばかりが描かれているけど紛れもなく彼女たちが過ごした時間は甘くほろ苦い青春だったんだろうなと思う。
私は中学から高校へと進み、皆が若さを言い訳に出来る甘酸っぱい時間が終わりに近づくことを悟り始めた途端に口を揃えてやれ青春だ一致団結だと言い始めることに同調圧力じみた気持ち悪さを感じていて、青春という言葉を口に出すことを気恥しいことのように感じていた。
けどこの本を読んだあと、紛れもなく私は今過ぎ行く青春という時間の中にいるんだろうなあと素直に呟ける気がする。
かおる達が一度目に野球場に行った時、二度目に野球場に行った時で抱く感情が違うように日常を過ごす中で今にしか感じられないものは沢山ある。
だから別に学校に行けなくったって、夏休みを太陽の下で謳歌出来なくったって、今の過ぎ行く時間を愛おしく思えているということ、それだけで胸を張って青春を過ごしていると、現在進行形でそれなりに私も甘酸っぱい時間を過ごしていると思えた。
小川洋子さんの書く文章はどれも儚げで優しくてどれも噛み締めたくなるようなものばかり。 -
やや狂気に近い食欲が、静かに淡々と書かれている。
真夜中の空腹に寄り添ってくれるような作品 -
初めて読んだ小川洋子作品。
食欲の描写、とくに
アイスロイヤルのくだりがすごくリアル。
弟のことも、まつげや細々した描写が繊細。
世界、空気感が伝わってきて
自分が学生の頃を肌感覚で思い出した。
真由子の真っ直ぐなところが好き。
吉田さんは、今の大人の私からみると
あまり好きになれないかも。
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登場人物一人ひとりが魅力的でさらっと読めちゃう。
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芥川賞作家の小川洋子の作品。止まらない食欲の主人公、研究者の恋人、難病を抱える血のつながらない弟、過保護の母親、友人、など魅力的な登場人物。先が気になり、読み進むが、食欲の理由、弟の病気、恋人が一緒にロシアに行った相手、などはっきりしたオチがなく、読み手に考えさせる部分も多く、その部分が消化不良であった。