三十一文字のパレット (中公文庫 た 54-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122031111

感想・レビュー・書評

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  • かつて「中央公論」に連載されていた、現代短歌の解説風エッセイ。掲載歌は、現代短歌の中ではよく知られたわかりやすいものが多く、解釈・解説もオーソドックス。それだけに、驚くようなものもないのだが、現代短歌鑑賞の入門にはよさそうだ。

  • 短歌を普段から読みつけてないもので、私は読んでから味わうまでに労力がかかります。
    俵万智が、その労力を省いてくれ、更に圧倒的な知識と感受性で解説までしてくれる本です。
    紹介される歌も楽しいけど、俵万智がそれを軽々と表現するのも、見事だなーって思います。

  •  俵万智さんが中央公論誌に連載していた短歌評をまとめたもの。
     1回につき3つくらいの短歌をテーマごとに選び、俵さんがあれこれ感想を書いていて、そのどれもが驚きと発見に満ちていた。
     短歌って昔のものでしょ?短歌ってどんなもの?短歌のなにがおもしろいの?そんな人にぜひ手にとってほしい1冊。

  • 色とりどりの短歌を、俵万智が紹介する短歌エッセイ。

    私の個人的な感想だけれど、俵万智さんの評論はあまりうまくないように思う。やっぱり彼女は、他人のものについてあれこれ言うよりも、歌やエッセイなどの創作のほうがしっくりくる気がする。

    けれども、「俵万智が紹介している」というだけで、私のような短歌初心者はなんとなく安心してしまうのである。
    俵万智さんが紹介しているなら、読めそうだな、とっつきやすそうだな、と思えるのだ。

    私は『サラダ記念日』を読んでいないけれど、いくつか彼女の歌を読んだだけでも、俵さんの歌が新鮮で、瑞々しくて、それでいてちょっと優等生くさいところにとても共感できた。
    短歌は難しいものではなく、私たちの生活のすぐ隣にあってもいいものなんだよ、ということを、押し付けがましくなく教えてもらうには、やっぱり俵さんの短歌は最適なのだと思う。
    そういう意味で、俵さんは短歌に新たな「目安」を作った人かもしれないな、と思った。

    この本で印象に残った歌は、次のとおり。
    かぎりなく憂愁にわがしずむとき水辺にあかき椅子はおかれる  村木道彦
    桃色の踵をしたる幼子が追い抜くときにわれを見上ぐる       阿津木英
    草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝て削るなり       北原白秋
    硝子瓶に黄な春の芽がうつるので何故か真昼が巨大でたまらぬ  前川佐美雄
    風もなきにざつくりと牡丹くづれたりざつくりくづるる時の至りて   岡本かの子

  • いろいろな歌人の短歌がテーマごとに集められている。
    万智さんのコメントが鋭い。
    「ガラスの不思議」にはどっきり。砕け散ったガラスは,もう役に立たないが,その破片の美しさにはっとすることがある。壊れてみて,なくしてみて,はじめてその美しさに気づくことは多い。でも,その時はじめてもう修復はできないことにも気づく。「デジタルには過去も未来もないようだ」という一節にもドキリとした。8時50分は9時10分前であることも教えてくれた時計。ひとは,過去と現在と未来の流れの中で生きていることを忘れそうなデジタル時計。日常のさりげない再発見の数々が歌になっている。
    私もそんな眼を持ちたい。

  • 印象的だった評論と短歌を。

    うすく濃く樹樹はみどりを競ふかな極相林(クライマックス)の照葉樹林

    「みどり」というひとつの言葉では、とても束ねきれない様々な「みどり」。二色のみどり(というのも妙な言い方ではあるけれど)が並んだ場合、必ずどちらかが濃く、どちらかがうすい。しかし、Aと並んだとき濃いみどりだった葉も、Bと並べばうすいみどりになる場合がある。要するに、互いが互いの「みどり」を濃くもし、うすくもするという関係の中で、無数の「みどり」は存在しているのである。「競ふ」という語によってさらに補強され、たった一つの「みどり」という言葉が、無数の「みどり」になった。

    三十一文字という限られた文字数のなかで、無数の「みどり」を表現しているというのに、短歌での表現力の可能性の大きさを感じました。それぞれのみどりの比較によって、みどりは濃くもうすくも感じられ、無数のみどりになるという解説はわかりやすく、的確だなと思いました。

  • (2003.11.11読了)(2003.10.19購入)
    この本は、『中央公論』誌に、一つのテーマに沿って、毎月三首ほどの現代短歌を紹介するコラムとして5年間連載したものをまとめたものだそうです。 
    詩人の大岡信氏の『折々のうた』も面白いけど、これも結構面白かった。テーマの沿って選ばれた短歌とその短歌に触発されて俵万智の心に浮かんだ情景がなかなかいい。
    以下に3つほど紹介します。

      体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ 穂村弘
    彼女は、体温計を口にくわえているので、「ゆきだ」とうまく言えないのである。うるせえな、なに子どもみたいにはしゃいでんだよ、というポーズ。そこには、愛情を素直に表現できない若者らしい照れが感じられる。
    (「うるせえな、なに子どもみたいにはしゃいでんだよ」という台詞は、万智さんらしい。)

      きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えむとする 寺山修司
    新しい家具は、二人の生活のスタートを、象徴するものの一つだろう。ぴかぴかしていて、木の匂いなんかがして、嬉しいのだけれど、まだ慣れていなくて、引き出しの場所などにはちょっと戸惑う。・・・
    (万智さんも新しい家具で、二人の生活始めたいだろうに。)

      期待どおりも期待はずれの一種だと気付く週末送られている 檀裕子
    彼に送られて帰路につく、それが、どういう意味で「期待どおり」であるととるかによって、解釈は微妙に変わってくる。
    (続きの文章は、本を手にとってお読みください。)

    著者 俵 万智
    1962年大阪府生まれ
    1985年早稲田大学第一文学部卒業
    1987年第一歌集『サラダ記念日』出版、現代歌人協会賞受賞

    ☆関連図書(既読)
    「みだれ髪 チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.07.06
    「みだれ髪Ⅱ チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.10.09

    (「MARC」データベースより)amazon
    三十一文字(みそひともじ)の中に、うたう人の心を凝縮させる短歌の世界。現代短歌の第一線で活躍する著者が、毎回さまざまなテーマの下に3首づつ選び、計205首の歌についてそれぞれのイメージのすばらしさを綴る。

  • 俵万智さんが毎回テーマに沿ったいくつかの短歌を選んでます。
    いろいろな歌人の歌をいっぺんに読めるし、万智さんのコメントも楽しく読めます。

  • しばらくお待ちを・・・。

  •  短歌ってそれだけで読んでいても面白いけれど解説されないと気付けないことも多くて。俵万智さんの言葉で紹介されることによって、わたしの中でのその短歌の意味がどんどん深められてゆくのが心地よい。

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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