プレ-ンソング (中公文庫 ほ 12-2)

著者 :
  • 中央公論新社
3.59
  • (93)
  • (113)
  • (216)
  • (20)
  • (7)
本棚登録 : 1352
感想 : 134
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122036444

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日常をゆるりと描く作品。ドラマチックな展開や出来事はほぼ起きず、ただ主人公らが生きていく。けどそれが「人間が生きる」ということそのもの全てであって、ある種凄すぎる程のフィクション。ゴンタのビデオの撮り方や終盤の”信じてしまう人間だけが信じてしまう、それはもう事実性からどうこういう話なのではなくて、話す側と聞く側の意志だけで意味とかあるいは意味に近い何かを与えていく話で、ぼくはそういう話がすごく好き”という所からも、作者が描こうとする「虚構の日常」へ向けた所信表明なんかも読める、完成され尽してるデビュー作。

  • 20150410読了。
    評判の良さにつられて手に取ってしまった本。
    「評判」「高評価」など前評判が高いと期待値が高くなってしまう。なので、期待をしていたほど、という感じは否めない。
    何もドラマチックなことは起きないただただ日常を描いている。淡々と描かれているそんな本が好きな人ははまると思う。
    前評判通り一文が長く最初は戸惑ったが、いつの間にかそれにも慣れていった。

  • ありのまま。読み終えた後、全ての物事を肯定したくなる。心が洗われる不思議な一冊。

  • 2014年11月読了。
    保坂さんの小説は何度でも読みたくなる。読みながら自身の心象風景がいくつも蘇ってくるそれが楽しくも恐ろしい。

  • 弟に借りた本です。
    池澤夏樹の「スティル・ライフ」と一緒に僕が好きそうな小説ということでオススメされて借りてきたものです。
    先に読んだスティル・ライフの方は若干合わなかったなーと思ってたんですが、こっちは良い感じに楽しめた。

    ■プレーンソング
    タイトルの「プレーンソング」、読み終わってみてなんともこれ以上にこの小説を表す言葉もないだろうなと思う。
    Plain Song。平坦な歌。辞書で調べてみたところ、無伴奏の単旋律聖歌をこう呼ぶらしいですね。著者が聖歌のことを意識していたかどうかはよく分かりませんが、あんまり関係ないんでしょうね。単純に無伴奏の平坦な歌、というところの意味合いが強そうです。

    この小説が無伴奏で平坦であるというのは、いわゆる筋らしい筋がないから。
    著者の保坂和志さんの書く小説はその手の作品が多いらしいですね。
    最高です。筋のない小説大好き。

    ■何も起こらない無敵の青春とその思い出の残り方。
    この小説は何も起こらない。ただひたすらに主人公と周囲の友人たちとの生活や、やりとりや、猫との距離感が描かれている。そういうものと過ごす時間がただ過ぎて、過ぎていく。何も起こらない小説が苦手という人もいるけど、この無為に無敵な時間の過ごし方を知っている方は多いんじゃないだろうか。
    主人公の周りにいる人物たちはそれぞれにひと癖あるので、身近な人物に重ね合わせる類のものではないけど、それでも彼らが主人公と交わすやりとりからは懐かしさを感じる。青春時代には中には鮮烈な出来事やその思い出もあるかもしれない。でも大半は、何がどう印象に残っているというわけでもないのに、全体として雰囲気として、残るものあるような気がする。そういうばくっとしたものがこの小説にはすごく表れている。
    特に、最後みんなで海に浮かびながら交わす会話の描写は秀逸。いつもの通り脈絡なくあっちにいったりこっちに言ったりする話を、15ページ以上も続けるんだけど、誰が何をしゃべっているかもよく分からない。内容もとくに頭には残らない。でも、みんなで海に浮かんでずーっとしゃべってた、というところは印象に残るわけで。青春時代の思い出の残り方。その描き方としてはなかなかこれ以上の書き方はないんじゃないか。

    ■80年代の若者のズレ感。
    そんな若者たちのしばらくの生活の様子が描かれているんだけど、主人公含め誰一人生活の素性は明らかにならない。いったいどうやって生活してるんだろうとか思いますが、はっきりとは描かれないし、描かないところに意味があるんでしょう。写真であったり、映画であったり、主人公の周囲には芸術畑っぽい人間が複数登場する。ただ、あくまで「っぽい」。ぽいというか、片足突っ込んはいるけど、それ以上踏み込むつもりはないというような中途半端な立ち位置。主人公の会社の同僚については同僚ではあっても、仕事上の話は一切なくひたすらに競馬に終始する。この登場人物たちの界隈はまぁ多少独特というか特別な集団ではあるんだろうけど、それでもある程度は時代を表しているんでしょうね。
    解説によるとこの小説の舞台は1986年の冬から夏にかけて、らしい。僕は1986年の6月生まれなので、ちょうど生まれた頃です。時代背景が明確には浮かばないですが、経済的には高度経済成長もほぼ終わりかけバブルの手前、政治状況的には学生運動からは一時代経ち、でも学生運動世代が親になる世代でもない。いわゆる不良とかそういうのも目立った時代なんだろうけど、こういうふわふわした人も多かったんだろうとか、いろいろ想像します。社会的、経済的、政治的ふわふわ。それを「ズレ」と言ってしまうのは失礼なのかもしれないけどね。その時代に生まれその後育った世代としては、無自覚にズレて居ることのできた時代は少しうらやましく感じたりもする。

    同じ「何も起こらない小説」でも、自分の感覚により近いのは、2000年前後まで時代の進んだ吉田修一の「パーク・ライフ」。何も起こらずに過ぎていく微妙な時間が描かれることは同じだけど、それでもパーク・ライフの主人公の男女はもう少し仕事が生活に溶け込んでいる。その変化が良いものなのか悪いものなのかは分からないですが、20年の変化は確かにある。僕が働き始めたのはちょうど2010年なので、またちょっと違ってきているのかなぁ。この時代を切り取る小説、誰か書いてないのかな。

    ■ながーい文章。
    保坂和志、この人の文章はとても長い。1ページが2つか3つの文章だけで構成されてるところもあるぐらい。最初だいぶ違和感があったけど、慣れてくるとだんだん病みつきになる。まどろっこしくて。
    いくつかおもしろくて良いのあったんですが、やはりとびきりなのは裏のあらすじにも引用されてるこれ。
    「うっかり動作を中断しいてしまったその瞬間の子猫の頭のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい、世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる」
    長さとしては大したことない方ですが、やっぱすごいやこれ。なんでこんなの書けるんだ。「夏の星座にぶら下がって上から花火を見下ろして」ぐらいびっくりした。この方の小説はだいたい猫が出てくるらしいので、他にも色々ありそうで楽しみになりますね。ちょっと読んでみよう。

  • 内容自体はとてもとりとめ無いのだけど、
    その「とりとめないことを書き表す」という作者の主張がかなり全面に出ているように思った。
    作中のゴンタ君の行動と発言がかなり象徴的。

    最後の海のシーンはいっそうとりとめなく。
    唐突にみじかい会話文だけが数ページ続いていたりする。
    確かに、ぐだぐだしているところを実際に全て書き表したらこうなるのかも。

    全体としてモラトリアムな雰囲気が漂っていて、どうも私から見たらダメ人間の集まりと言った風なんだけど(笑)、みんなやけに楽観的で自信を持って生きているように見える。
    これは登場人物の若さゆえ?それともバブル前という時代ゆえなのかな。
    いま同じ状況の小説が書かれるとしたら、もっと違う雰囲気になるんじゃないかな。
    この雰囲気はちょっと面白かった。

    競馬と猫のことを軸に話が進んでいくにもかかわらず、最後の最後は犬エピソードで締められるのも面白い。
    意図的に外しているのだろうか。

    一文が長く句点が少ない地の文が、まるで日記のような小説でした。

  • 保坂和志「プレーンソング」 http://www.chuko.co.jp/bunko/2000/05/203644.html … 読んだ。デビュー作。凝った筋や展開の意外性やグロや、単語をいかに変に組み合わせてタイトルにするかに気合いが入っているようなくだらない小説が多い中、これで小説家になろうと思ったのがすごい。褒めている(つづく

    筋もなければ事件も起きない、人物は誰も何もしない。文章や思想の骨格がないと読み通せないと思う。こんなの誰でも書けないよ。「カンバセイションピース」もだけど、登場する中に、傲慢無知だったり厚かましかったり非常識だったりする人物がいて、読んでいて心底その人にいらいらする(つづく

    小説という形態でなければ成立しない。これが映画ならフィルムを変えるとか映像に凝るとか台詞を思わせぶりにするとか音楽やファッションとか、とにかく別の何かで特徴を出さなければホームムービー的な素人の記録動画になるだろう(とは言え最近YouTubeでさえ事件の切り取りだけど)(おわり

  • 芥川の『蜃気楼』とか、俗に言う日常系アニメみたいな、ただそこにある系の話で僕はこういうのが大好き。

  • 何も起きない小説。全体的に曖昧模糊としていて、それがプレーンということなのかな。
    猫と競馬に興味がない自分としては、流し読みに近い形で終わってしまった。

  • 会話文のみで書かれた後半の約15ページ。
    ここに醸し出される雰囲気から、あぁなんかそういうことなんかなぁ、と思う。

全134件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

1956年、山梨県に生まれる。小説家。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2018年『ハレルヤ』所収の「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。主な著書に、『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。

「2022年 『DEATHか裸(ら)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

保坂和志の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
G. ガルシア=...
舞城 王太郎
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×