科挙: 中国の試験地獄 (中公文庫 み 22-18 BIBLIO)
- 中央公論新社 (2003年2月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122041707
感想・レビュー・書評
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科挙については、浅田次郎の「蒼穹の昴」以来、興味があったが、本書はその内容を丁寧に説明してくれている。
以前読んだ「西太后」もそうだが、中国や中国人の考えの成り立ちを思う上でとても参考になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
中国の隋王朝に誕生した科挙制度
試験で官僚を登用するために誕生した制度であるということは知っていたが、制度が清王朝まで中断を挟みながらも継続して実施され続けた事や年数を経過する中で複雑化していた事は初めて知った。
一方で科挙で広く官僚を集めたことで政治において、貴族による世襲が徐々に衰退し、皇帝による中央集権化が進んだということは非常に面白く感じた。 -
子供のころから選抜されて何度も何度も試験、進士まで資格がいくつか。
隋代から始まり1904年まで。武挙や制挙もあったが重用されず。
文が武を支配下に。
官吏登用試験はヨーロッパより1000年も早かった。
カンニングや賄賂も横行。
閉じ込められて試験、気がふれるものあり、怪談あり。
学校制度とは別に。 -
新書文庫
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受験戦争のための題材は科学・数学ではなく四書五経と詩…もしこれが科学であったら中国、ひいては世界の発展にどれほど寄与したのか知れない。当然のごとく流された「科学・数学は商人・町人がやるもの」という一節はなかなか興味深い。
科挙の受験制度は面白い。もし受験前にこれを読めば受験に対する考えは大幅に変わっただろう。賄賂が当たり前と読む前は思っていたが、天子にとってみれば有益な人材を登用したいわけだから、ここまで徹底して平等にとこだわるのも納得がいく。
何度も試験をくぐり抜け、いよいよ科挙に合格しても、末年には飽和していたというのには、どれほど難解であろうと合格者をとり続ける限り、訪れる当然の結果ではあるが、現代においてもこれは見られる問題であると思う。
全体としてはとても面白かった。現代日本の教育制度についてはいろいろ文句たらたらだが、本書を読むと凄まじく進歩しているのだと実感できる。 -
西暦6世紀の隋の時代から始まった有名な試験制度。優秀な官僚を育成することにより貴族政治から脱却を図った。四書五経だけでも43万文字があり、それをすべて暗記しなければならないのでとんでもなく過酷な試験で、学校に入るための試験(学校試)が県試、府試、院試の3段階あり入学が許可される、学校でさらに定期試験にあたる歳試があった。この後に本当の科挙と呼ばれる3年に1回開催される試験が、郷試(地方で開催される)、会試(中央に集まって開催される)、院試(天子の前で試験を受ける)と3段階あった。倍率は100倍くらい。郷試、会試は1カ月にわたり外部との接触を遮断された独房生活を強いられる過酷な試験であった。
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主に清時代の完全形態としての科挙に焦点があてられ、これでもかというほど詳細に記述される。科挙にまつわるエピソードが非常に多く伝えられていることが印象的だった。どれほど心血が注がれていたかが推察される。今の日本の受験戦争が顔負するように感じられるのは、そこに掛けられたものの重みが圧倒的に劣るからだろうと。
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雑然とした施設に二晩三日閉じ込められ、中には、精神的に追い詰められて発狂した受験生が登場するくだりを読むと、かつては「受験地獄」と評された日本の大学受験なんて、科挙の足下にも及ばないと分かる。中学・高校の時にこも本を読んでいたら、また違った人生になったかも。