- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122055476
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
亮子が訪れた恋人・匠の実家。そこは二つの棟で卍形をしている異形の館だった!双子の家族がそれぞれの棟で暮らし、対立し合っている旧家。こんな屋敷で何も起こらないはずがなく…。惨劇の裏に隠された驚くべき真相とは。
どうしたらこんな形にビフォーアフターするんだと言わんばかりの奇妙な館!そこに集う老婆を頂点とした双子の家族たち。張り詰めた均衡と、その静寂を破った殺人事件。事件によって家族の表情が変わっていくところが面白い。ドロドロもありつつ、引っかき回す宵子がサバサバしていてさっくりと読みやすい。もっと心情描写があってもよかったかなと感じるけど、仮面の下に隠された迷いが垣間見える人間臭さ。すべて暴き切らないところが余韻としていい落としどころなのかなとも思う。
トリックも卍の館を見事に活用していてよかった。こんな変な形をしている館を利用しているのに、奇をてらわずシンプルな仕掛けに立ち返ってくるのが面白い。伏線も丁寧に広げてあり、ミステリ好きな人にはピンとくるものも多いかも。後半のコタツ・ディテクティヴは意外な展開だった。ミステリの定石を踏まえつつ、手堅く楽しめる作品。 -
今邑彩さんのデビュー作。
2つの家族が暮らす卍型の館で起こる殺人事件。
不気味な卍型の館、そこで暮らす家族の醸し出す異常な雰囲気など館もの要素がすべて詰まっている。
物語のテンポもよくすらすら読めるが不気味さは残っている。
あとがきに酷評されたとあったが、とても楽しんで読むことができた。 -
オーソドックスな本格の雰囲気が感じられて個人的には好みの作品です。様々な要素が詰め込まれた割には綺麗に纏められていて、文章も読みやすく楽しめました。これを機に他の作品も読んでみようと思います。
-
オーソドックスで良い
-
3-
-
文章がこなれていて、ミステリとしても手堅くまとまっておりデビュー作としては申し分ないでしょう。
館の形が卍、という設定からしてそれを使ったトリックがあるのは見え見えですが、それを成立させるための工夫が随所見られ、デビュー作からして卒のなさが際立っています。
示唆的なプロローグや、滲み出る怪奇色も相変わらずで、やっぱり僕好みの作家なのだと再認識しました。 -
今邑彩のデビュー作、『卍の殺人』を読了。鮎川哲也賞の前身である「鮎川哲也と十三の謎」の〈十三番目の椅子〉受賞作。
今邑作品はこれが初めて。卍型の屋敷で起きる殺人事件が描かれる。
作者自信はあとがきで「発表当時、ミステリファンの間では酷評だったのではないか」と書かれているが、デビュー作としては文章も読みやすく、プロットも十分面白いと思った。卍型の屋敷での事件という時点で、ミステリファンとしての心をくすぐられる。月並みな評価かもしれないが人物の書き分けも一定水準を上回っている。たまに、誰が誰と会話をしているのか判らない作品もあるのだが(気のせいかどうか翻訳ものに多い傾向がある)、そんなことも無し。
ただ伏線が多く、それでいてあからさま過ぎる点が見受けられるのも確か。犯人は判らないまでも、どんなトリックを使ったかは、ある程度ミステリを読みなれている読者には解ってしまうかもしれない。
今邑彩は昨年、残念ながら早くも逝去されてしまったが、本作以外にも数々の作品を遺した。それらの作品も、今後必ず読んでみたいと思っている。