小説、世界の奏でる音楽 (中公文庫 ほ 12-14)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 111
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (518ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122057098

作品紹介・あらすじ

小説は、人を遠くまで連れてゆく-。書き手の境地を読者のなかに再現する、小説論という小説、10篇。(本書目次より)文庫版まえがき/まえがき-真に受ける能力-/1 私たちの生を語る言語/2 緩さによる自我への距離/3 グリグリを売りに来た男の呪文/忘れがたい言葉/小島さんの肉声と文学の不死性/K先生の葬儀実行委員として/4 涙を流さなかった使徒の第一信/5 ここにある小説の希望/6 私は夢見られた/7 主体の軸となる現実は…/8 われわれは自分自身による以外には、世界への通路を持っていない/9 のしかかるような空を見る。すべては垂直に落ちて来る。/10 遠い地点からの

感想・レビュー・書評

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  • p.2012/12/21

  • 十篇の、小説論という小説
    …というふうに、著者はこの本について述べている。
    どういうことかといえば、この本は十章の小説論から構成されているが、その小説論のひとつひとつが、そのまま、小説論を自ら実践した小説そのものとしても読むことができるということだと思う。
    すぐれた小説とはどういうものなのかを考える文章それ自体がすぐれた小説として成立している。
    そういう意味でこの本は、小説を読むことの〈刺激〉と、小説と世界を見る目が拓かれる〈予感〉に満ち溢れた一冊だ。

    最後にこの本の中から、たとえばこんな文章を引用してみる。

    だいたい、何かを書いたり創ったり表現したりする人が「いま」という時代に信を置くことが間違っている。「いま」という時代が嫌いで、「いま」と距離を取りたいと思っている人を自分の読者や観客に想定しているはずで、そういう人たちの人数が多いはずがないではないか。何かを書いたり創ったり表現したりすることは、本質的に「まだ見ぬ者に向かって」なのだ。「多数=売り上げに向かって」ではない。

    …小説のみならず、何かを表現しようと考える人にとって、少なからず〈刺激〉と〈予感〉を与えてくれるはずだ。

  • 保坂和志「小説、世界の奏でる音楽」 http://www.chuko.co.jp/bunko/2012/10/205709.html … 読んだ@台北、うおおおお、おもしろかった!!!この人の本自体が初めてで話はあっちこっち連想で飛ぶし文体も独特だしで、慣れるのに手間取ったけど、途中からのめり込み。旅先の時間の殆どが読書に。。(つづく

    そんなに予防線を張らずとも誰もツッコまないとツッコむほど言い訳めいたクドい文章は途中で哲学の様相を帯びる。この人は人間の身体感覚を信じ小説家なのに言葉の力を信じていない、と判った途端に俄然面白くなる。思考をそのままを反映しているような文体だけど幼稚さはない(あたりまえか)(つづく

    あらすじとして要約できないものを小説という。小説を批判するのではなく書いてあるままを信じる。印象に残るたった一つの描写に出会うことが小説を読むということ。小説はライブ。とかとか。「わかる」という定義や、時間の概念と記憶と実体の話がおもしろい。この人の他の本も読む。猫。。(おわり

  • 保坂和志の小説論小説第3弾。小説を読み、思いつき、加速し、立ち止り、まったく違うことを同時進行で考え出す、といった著者の多様な思考の運動に身をゆだねらることができるならば、何にも代え難いおもしろさを得られる名著。

  • また小説書く気になった。

  • 小説論三部作、三作目。少しずつ読んでいたら二ヶ月くらいかかってしまった。一作目、二作目同様、様々な小説の引用を読めること、保坂さんの思考を辿れることがとても楽しい。読んでいると脳が刺激されるのか、とりとめない考えが浮かぶ。

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著者プロフィール

1956年、山梨県に生まれる。小説家。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2018年『ハレルヤ』所収の「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。主な著書に、『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。

「2022年 『DEATHか裸(ら)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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