おばちゃんたちのいるところ-Where The Wild Ladies Are (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 1193
感想 : 121
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122067691

作品紹介・あらすじ

追いつめられた現代人のもとへ、おばちゃん(幽霊)たちが一肌脱ぎにやってくる!



失業中の男に牡丹灯籠を売りつけるセールスレディ、シングルマザーを助ける子育て幽霊、のどかに暮らす八百屋お七や皿屋敷のお菊……そして、彼女たちをヘッドハントする謎の会社員・汀。

古より疎まれた嫉妬心や怨念こそが、あなたを救う?! 胸の中のもやもやが成仏する愉快な怪談17連発。〈解説〉はらだ有彩

感想・レビュー・書評

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  • R2.12.20 読了。

     タイトルのWildについて、「しこり、すなわち『モヤッ』とする気持ちは社会の中で頻繁にスルーされる。同じく、怪奇現象や心霊現象などというものも、『おお怖っ』と楽しむことはあっても、実在はしないことになっている。(中略)甘やかに放置され、スルーされ続け、丸く馴染みかけたしこりたちを松田青子さんは摘みあげる。そのしこりたちを丸めてゴミ箱にシュート……というには少々、突飛(Wild)で、荒れ狂っていて(Wild)、狂乱をはらんだ(Wild)方法で破裂させる。観客がニヤニヤと笑ってやり過ごすには野蛮(Wild)すぎる情景を出現させ、突きつける。(解説より)

     歌舞伎や落語や戯曲などの怪談話をモチーフとなっている17編の掌編小説。どこかの話の中でこの登場人物が出てきたなあというような連作にもなっている。ミステリーというよりはファンタジー(?)要素のほうが多いかなあ。

     私は「ひなちゃん」「クズハの一生」「彼女ができること」「最後のお迎え」「チーム・更科」「菊枝の青春」「下りない」が面白かったし、好きな作品ですね。

  • おばちゃんなどの幽霊が現れて、見える人の悩みを和らげたり、見方を変えたりする話。
    短編集であり、少しずつ話がリンクしている。下地にに歌舞伎と落語など演目があり、元ネタを知ってると楽しめる部分があるらしい。(よくはわからない)それよりもさらに根底に他作「女が死ぬ」でも扱われたようなテーマ「女性として生きるのめんどくさいこと多い」や「男」への怒りがある。

    幽霊がいても普通の日常、不思議な感じがすごく読んでいて心地よくまた何度か読むと思います。「オンナが死ぬ」の時もそうでしたが、いつも読みやすい。

    お岩さんとか、男への怒りを持つ幽霊もいるので馴染んでるのかな、なんか私には「女の話」が浮いているように感じた。

    現代の感覚なのか「センスを感じさせる」部分がなんだか読んでてムズムズした。この感じが伊坂幸太郎さんの作品に出てくる登場人物の台詞のような、鼻につく感じでちょっと嫌でした。

    話はどれもゆったりとしてて好きなのに、内面に、怒りが見える先輩から話を聞いている時のような気持ちになりました。

  • 松田青子さんが世界幻想文学大賞 | ロイター
    https://jp.reuters.com/article/idJP2021110801001157

    「おばちゃんたちのいるところ」書評 化けられるほどしつこく生きよ|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11622001

    おばちゃんたちのいるところ|文庫|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/bunko/2019/08/206769.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      松田青子が語る、世界幻想文学大賞受賞の背景 「英米では小説のもつ批評性を認めてもらった」|Real Sound|リアルサウンド ブック
      ht...
      松田青子が語る、世界幻想文学大賞受賞の背景 「英米では小説のもつ批評性を認めてもらった」|Real Sound|リアルサウンド ブック
      https://realsound.jp/book/2021/12/post-920219.html
      2021/12/13
  • これは傑作。

    もとが歌舞伎や落語なのも大好きポイントです。
    一肌脱いでくれるおばちゃんたち、大好き。
    根本にあるモヤモヤを、しっかりと感じながらたのしみました。

  • 頂き本。

    落語や歌舞伎のお話をモチーフにした短編集。
    松田青子カラーの、軽妙さ、シニカルさ満載。

  • 平積みされていて、気になったので購入。

    冒頭の「みがきをかける」が、失礼した女性のところに、亡くなった親戚のおばちゃんがずかずか入り込んでくるという話なんだけど。
    生きている女性より、亡くなったおばちゃんの方が生き生きしている(?)のが面白い。
    更には、そんなおばちゃんに触発されて、女性が抑えようとしていた負の感情箱を、パカパカと開けていくのだけど、そのシーンの描写が上手くて、思わず笑ってしまった。

    キツネ好きの私は、万能キツネのクズハさんのお話も良かった。
    人間として生きながら、でも人間のやっていることが理解出来なくて、ふーん、っとシニカルに見ている感じが、いい(笑)
    でも、そんなクズハさんも、結局人間の中でやっていく方を選ぶ。
    未練や、執念や、そういう思いから、まあでも便利だし、居心地いいし、で現世に居座ることにしていく、そんな軽さが悪くない。

    亡くなった人や妖怪が、謎のイニシアチブを取って働いている話が多く、笑ってパラパラ読めていく、気分転換な一冊だった。

  • 一番最初の話 みがきをかける で、一気に物語に引き込まれました

    各作品にモチーフがあって、そこに新しい設定(社会.会社)が加わり、不思議空間と生きてる人、もう生きてない人の交わりがあり、、

    面白かったです!
    結局一番怖いのは 生きている 人間です

  • 落語や歌舞伎の話を現代化した
    愉快な怪談集

    不気味だけれど憎めない
    幽霊の世界も捨てたものじゃない
    明るい気持ちになる

    1つの話が短く
    移動時間や隙間時間に良い

  • “女性”の話に飽き飽きしている世の中の空気を感じる。その気持ちは分からなくもないけど、分かりたくはない。

    『おばちゃんたちのいるところ』に描かれるファンタジーは、ファンタジーではない。
    青子さんが描くユーモアあふれる世界に、リアルがチクチク織り込まれている。

    傷ついていないふりをしているほうが幸せになれると自分を納得させて生きてきた、とくに社会に出てからは更にはっきりとそれを自覚して。
    世の中のおかしさに気づかないふりをしていないと、気を抜くと、怒りや虚しさや悲しさやいろんな名前のない感情に自分が侵されてどうにかなりそうになるときも、たくさんある。

    毎日社会を生きていく中でどこにもいけない感情を、力強く認めてくれる物語だった。
    この世のどこかに、意外にそばに、おばちゃんたちがいるかもしれない。
    おばちゃんたちが人知れず、守ってくれている。
    それだけで少しだけ、力がもらえる。勇気が湧く。
    この物語がそばにあると思えるだけで、少し強くなれる。
    讃歌みたいな、お守りみたいな本に出逢えた。

  • 現代の怪談といえばいいのか?

    歌舞伎や落語、民話でのお化け、怪異なものたちが、現代社会に現れる。
    個性豊かな彼女らが、現代人のそばでひっそり、時には猛烈に、その「能力」を発揮し、活躍していたりする。
    むしろ現代人たちの方が業が深く、病んでいるように見える。

    そういう短編が緩やかにつながって一冊が構成されている。
    汀さんや茂が勤める謎の会社がカギを握っているらしい。

    こんな愉快な小説を今まで知らずにいた自分が残念。
    そしてこの本を古本100円でゲットしたことに、少々の後ろめたさを感じる。
    どうか化けて出ないで。

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著者プロフィール

作家、翻訳家。著書に、小説『スタッキング可能』『英子の森』(河出書房新社)、『おばちゃんたちのいるところ』(中央公論新社)など。2019年、『ワイルドフラワーの見えない一年』(河出書房新社)収録の短篇「女が死ぬ」がシャーリィ・ジャクスン賞候補に。訳書に、カレン・ラッセル『狼少女たちの聖ルーシー寮』『レモン畑の吸血鬼』、アメリア・グレイ『AM/PM』(いずれも河出書房新社)など。

「2020年 『彼女の体とその他の断片』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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