レトリックと認識 (NHKブックス 894)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140018941

作品紹介・あらすじ

現代レトリック論は人間の認識活動に注目する。桜見物を花見というシネクドキ、永田町で政界を表すメトニミー、時は金なりのメタファー。「時は金なり」は、時間が貴重なもので、計量可能なものだという新しい時間意識を生みだした。また、日本人は歴史を川の流れに喩え、西洋人はそれを構築物に喩える。レトリックの認識論的本質をまず捉え直し、時間・身体空間・詩・恋愛の世界や日本人独自の発想をメタファー等を通して見直す好著。

感想・レビュー・書評

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  • 具体例を交えた実践的なレトリック分析。

  • 【書誌情報】
    発売日  2000年08月23日
    価格 定価:994円(本体920円)
    判型 B6判
    ページ数 240ページ
    商品コード 0001894
    Cコード C1380(語学総記)
    ISBN 978-4-14-001894-1

     近年、レトリックの比喩に関心が高まっている。レトリックは言葉の遊びではなく、世界を発見するための言葉の工夫。「時は金なり」というレトリックは、時間が貴重なもので計量可能だという時間意識を生んだが、人々にゆったりと生きることを難しくもさせる。認識や行動を規制したり、豊かな表現を発見するレトリックの入門書。
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000018942000.html



    【目次】
    はじめに [003-010]
    目次 [011-013]

    I シネクドキと認識 015
    日常生活のレトリック――シネクドキ・メトニミー・メタファー/シネクドキの不運/認識と類似性/類と種/プロトタイプ/シネクドキの原理/シネクドキとカテゴリー・レベルの変更―― 一般化と特殊化/プロトタイプの遊動性/日本人とシネクドキ認識の諸相/日本人と自然

    II メトニミーと認識 041
    メトニミーの本質、その記号性/メトニミーの分類/メトニミーとシネクドキ ――グループ・ミューの提案/メトニミーの原理/メトニミーの効果/外観で心理を――写実主義の原理/メトニミー認識の落とし穴(その一)――「作者‐作品」/メトニミー認識の落とし穴(その二)――「入れ物‐中身」/メトニミー的神話作用/メトニミー的神話作用――「坊主憎けりや袈裟まで憎い」/メトニミー的神話作用と宣伝メトニミーと偶然/客観的偶然と縁/「掘り出しもの」の意味/「求めよ、さらば与えられん」

    III メタファーと認識 077
    比喩の三要素/類似性の見直し/レイコフのメタファー論の衝撃/慣習的メタファー/メタファー的写像/レイコフのメタファー論への疑問――抽象的認識とメタファー認識

    IV 時間のメタファー 099
    時間の空間化/「川の流れのように」/歴史に対する二つの見方/無常と終末/進歩の思想

    V 空間のメタファー 115
    空間の座標軸/「前‐後」のシンボリズム/「右‐左」のシンボリズム/「内‐外」の座標軸/「広がり」としての心と体/外部としての身体/日本的心、水をたたえた容器/心と体/身と心/身の非‐中心性/伸縮する身体/空間の専有と住まうこと/中心化あるいは自己中心主義/「身内」的空間/「身内」意識の拡大/身内と世間

    VI 科学と詩 149
    科学とメタファー/錬金術とは/錬金術の二元性/金属の変換、あるいは金属の結婚/天体と金属の照応/錬金術と科学/子供と詩人/詩人と世界/扇のメタファー ――イメージ的類似性/詩作と航海――体系的=構造的類似性

    VII 恋愛のレトリック 179
    花に寄せて/恋愛の発明/恋愛は技術である/シャンソンについて/「愛の讃歌」――誇張法/「サン・トワ・マミー」――待つ女/雪が降る」――雪と雨/「めぐり逢い紡いで」――構築的愛/「秋止符」――「別れ」のイメージ/「関白宣言」vs「部屋とYシャツと私」――男につくす女

    あとがき(二〇〇〇年七月十四日 野内良三) [227-229]
    参考文献 [231-235]

  • レトリックをめぐる、かなり幅広い話題が扱われています。

    まずは、メタファー(隠喩)、メトニミー(換喩)、シネクドキ(提喩)の解説がおこなわれています。さらに著者は、認知意味論のレイコフの議論などを参照しつつ、これらのレトリックが持つ認識的な意義について掘り下げて考察を展開しています。著者は、レイコフが単なる文学的修辞として扱われていたレトリックを見なおして、私たちの認識との間に深い関係があることを正しく指摘したことを評価します。しかし、レイコフは「死んだレトリック」に基づいて認識と言語との関係を考察しており、発見的認識におけるレトリックの意義を見ていなかったことを批判します。また、著者の考えるレトリックの認識上の意義に気づいていた詩人として、「発話が世界の中で意味をなすように発話の方を読み解く代わりに、発話が意味をなすように世界の方を読み解く」ことの可能性を示したステファヌ・マラルメの作品が取り上げられます。

    このほか、時間や空間にまつわるメタファーのさまざまな具体例を取り上げたり、日本と西洋の恋愛に関するレトリックの差異についての考察などがおこなわれています。

  • レトリックについて書かれた本を読むのは初めてでした。
    前半シネクドキとメトニミーについては読み進めることができましたが、後半のメタファーは読み飛ばしてしまいました。
    図が入っていて、イメージしやすいところはよかったです。

  • レトリックを3つに分けて、それの認識について論じている

    ・シネクドキ(堤喩) ・メニトミー(換喩)  ・メタファー(隠喩) の3つは、

    それぞれに合わせた認識が存在するとする。特にメタファーは、時間、空間があるとしている。

    このほかに科学と詩、恋愛のレトリックがある。

  • 文章を書く技術としてのレトリックではなく、
    人間の認知や言語表現に関わるレトリック。
    その実は、レイコフとジョンソンを契機としたメタファー、メトニミー、シネクドキの三つの比喩を主とした人間認知の解説書。
    言語学的な部分は分かりやすくまとめてあると感じた。
    例として詩や歌詞を多く使用しているが、私自身、詩や歌詞にあまり興味がそそられないよう、好き嫌いが分かれるような気がした。

  • 『われわれが今さしあたり問題としたいのはレトリックの死亡診断書の作成よりは、なんだかんだと言われながらも一つの学科目(技術)がかくも永きにわたってその余命を保ったということだ。』

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著者プロフィール

1944年生まれ、東京教育大学仏文科卒業。フランス語、フランス文学専攻。現在関西外国語大学教授。
主な著書として『イラスト・フランス語入門』(第三書房)、『フランス語ひとくちコミュニケーション』(白水社)他。

「1999年 『パルロン・フランセ CD付』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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