- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140815328
感想・レビュー・書評
-
明らかにメイカーズを意識した内容だけど、その技術の凄さよりも人物紹介に重きを置いているので、とても頭の良い人たちなんだなとは思うが、どれだけ凄いことをしているのかはよく理解できなかった
とはいえ必読な書籍であることには変わりありませんが詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
DNAを利用するようなバイオ技術は既に大規模な研究機関や大学で行うものではなくなりつつあり,キッチンやガレージで趣味で行うことができるレベルに達しつつある.このような現状において,黎明期の草の根のコンピュータソフトウェアの開発と,その相似性を指摘するのが本書である.
本当に誰でも自由にDIYでDNAハッキングを行える時代が到来するのか.また,そのときの問題点は何であろうか. -
アップルのコンピューターはガレージから生まれ、リナックスはオープンソースと言う新しい取り組みでプログラムを進化させた。バイオテクノロジーと言うと閉ざされた世界というイメージだが、バイオハッカーはコンピューターとバイオテクノロジーは似ているという。DNA検査はガレージで出来るし、ヒトゲノムのような遺伝子情報もオープンソースにしたほうが解読が進み世界に貢献すると言う立場だ。
今では自分の遺伝子情報を調べたければ、キットを買って綿棒で口の中をこすりそれを送るだけで出来る。さらにはDNAを複製することはそれなりの専門知識があれば自宅ででき、ケイ・オールは中古のサーマルサイクラー(温度を上げたり下げたりを繰り返す装置、炊飯釜と大差ない)100ドルちょっととwebで注文したDNA断片で自分で遺伝子検査を行った。
遺伝子組み換え作物に関するエピソードではインドの農民がモンサントの足元をすくった話が面白い。Btコットンと言う害虫を寄せ付けない成分を作るようになった綿はインドでは禁止されたが、ある種子はBt遺伝子を含んでいた。この種子を売った会社、インド政府、モンサントそれぞれの言い分に関係なく農民たちはこの種子をさらに交配させ元々のBtコットンより安くBestコットンという名で売られ続けている。インドでは遺伝子は特許性がなく政府もなすがままに遺伝子組み換え綿を承認し、Bestコットンは農民たちの共有財産となった。
バイオテクノロジーに対しては強硬に反対する人も多い。この理由は宗教的なものと、知らないものは怖いと言う心理、また新しい技術に対して慎重な立場などが有りそれぞれの言い分も理解はできる。しかしイノベーションは必ず起こるし一度起こればインドの農民同様成果を享受するだろう -
アメリカの話だけど、バイオの世界にオープンソースみたいな動きがあるというのが面白い。一番縁遠い様な気がするのだが。品川。
-
目次
PARTⅠハック/オープン
第1章シンプルな遺伝子検査
第2章アウトサイダーのイノベーション
第3章バイオハッカーの源流
第4章自分で科学する
第5章途上国のためのバイオテクノロジー
第6章価格を下げてハードルを下げる
第7章遺伝子組み換え作物はだれのため?
第8章遺伝子操作の所有権はだれのもの?
第9章リスクのない医学の発展はない
第10章キッチン発のイノベーション
PARTⅡリード/ライト
第11章生命の言語を読む
第12章生命の言語を書く
PARTⅢセイフティ/リスク
第13章バイオテロ
第14章アウトブレイク
PARTⅣライフ/サイエンス -
<キッチンからバイオを! 「日曜大工」研究の裾野を広げよう!>
タイトルも副題も余り親切ではないと思うのだが、つまりは、公的機関や企業などの大きな組織に属さないアウトサイダー科学者としてバイオ研究を実践している人々についてのレポートである。自由な発想で新しいバイオ研究を行っている多くの「DIY」研究者を追う、なかなかエキサイティングな1冊である。
どの分野でもおそらくそうなのだろうが、組織に属して研究を行うということは、時に、さまざまなしがらみを背負い、承認やら申請やら予算やらといった諸々のことに縛られる一面を持つ。
コンピュータ業界に関していえば、ジョブズは元々ハッカー集団の一員だった。リナックスはオープンソースで無料だ。ならばバイオもそれに倣おう!というわけである。そのためには、どこでも誰でもできるように、それこそ「趣味」としても楽しめるようにしようというのが、「バイオハッカー」の狙いである。
ここでハッカーと言っているのは、システムに不正に侵入したりといったネガティブな意味ではなく、知恵に頼って自力で創造的に問題を解決することを指す。そのためには、多くの人がツールを使用し、知識を得ることができるようにしよう、ということである。
プログラミングや数学と比べて、組織に属さないアウトサイダー・バイオが一般的でないのは、1つはコストの問題があるからだろう。ドライと違ってとにかくウェットはカネが掛かる。装置は自作すればかなり低価格で作れたとしても、酵素や試薬といった消耗品のコストをどう下げていくのかが重要だろう。本書の中には核酸増幅に必要な酵素を自分で抽出したというツワモノも出てきてすごいのだが、まぁそれにしても抽出にもカネが掛かるしね・・・。
あとは、「バイオ」というと、どうも「アヤしい」「アブない」と思われがちなこともあるのだろう。「生物兵器」とか、「バイオテロ」とかとすぐ連想されがちな。
しかし、DIYバイオはまだそこまではいたっておらず、テロを実践するのであれば、既知の天然毒物(炭疽やリシン等)を使うほうがよほど現実的なのだとか。
バイオについては、研究者と一般市民の間の意識の乖離が特に大きいような気は確かにする。
鳥インフルエンザの感染性に関わる突然変異の論文を雑誌に載せる載せないでモメていたが、ようやく掲載されたようだ。
悪用を心配するよりも、知識を共有して、後の研究に役立てた方がよいということだろう。
インサイダー・アウトサイダーに関わりなく、知識を囲い込むのではなく、オープンにして皆で議論しようという姿勢は大切なものなのだろう。
DIYバイオを実践するには、現実面で乗り越えなければならない問題が多々あると思うが、大切なのは、「気概」だ。
個々の人物がなぜそれほどDIYでバイオをやりたいのか、個人的にはいまひとつ納得しきれなかったのだが、裾野が広げること自体は、すばらしいことだと思う。
日経サイエンス6月号に掲載された本書に関する書評(渡辺正隆氏)がアツかった。
私はそこまでアツくなれなかったけれど、おもしろい見方をくれる1冊である。
*PCRを手軽に行えるようにして、感染症が蔓延している地域で即時診断できるようにしよう、という話が一番印象に残った。これはすごいと思う。
*タイトルは「バイオバンク」じゃなく、「パンク」です。もうここからしてすでに象徴的だが、重要な概念となる原語をそのままカタカナ用語にしているものが目立ち(私も今、つられて「キー・コンセプト」と書きそうになった(^^;))、取っつきにくい感を与えていると思う。パンクとかギークとかハックとか、確かに日本語にしにくい言葉だと思うが、何とかならなかったものなのか。
著者が(多分)ITベースの人で、コンピュータ業界ではよく使う言葉なのもあるのではないかと思うのだが。でもそれを日本語としてそのまま持ってくるのはどうなんだ・・・?
*うげげ、長くなってしまった・・・。読んでくれた方、ありがとうございます&すみません・・・。 -
全体の率直な感想としては、こんなに進んでいるのか!と驚く場面よりもまだまだ入り口にうろうろしているだけなんだな…、と感じる場面の方が多かった。
また、バイオパンクの思想の根底にはソフトウェアの分野で起こったオープン、シェアと同じことが遺伝子でも可能である、という考えがあるという指摘が(良い意味で)頭に引っかかった。興味をもったのは他の分野での考え方をそのまま適用できるのではないか、と考えるに至った思考の過程とそれが広く受け入れられた理由は何か。