サイコパス 秘められた能力

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816028

感想・レビュー・書評

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  • サイコパスを特性として調査すると、CEOや裁判官、大統領などリーダーにも多く見られる。スパイや非常に優秀なディーラーにも。彼らに共通するのは、不安を感じず、逆に研ぎ澄まされる集中力。過去や感情に捕らわれず、最適な選択をする能力だった。
    いろいろな実験やインタビューを重ねた力作。

  • 原題:THE WISDOM OF PSYCHOPATHS: what saints, spies, and serial killers can teach us about success
    著者:Kevin Dutton(1967-)
    翻訳:小林 由香利(1966-)

    面白いが議論がやや大雑把。そこに注意して再読中。
    あと、著者自信が魅入られているのはどうなのか。

  • 非情さ、魅力、一点集中力、精神の強靱さ、恐怖心の欠如、マインドフルネス、行動力。これらを持ち合わせた人格特性が本書のタイトルにあるサイコパスであり、本書はその解説本である。サイコパスは、遺伝するのか、共感能力が低いのかなどの調査結果も記載されており、読む程に正常な精神とはどういう状態なのか分からなくなる。


    サイコパス特性(本書内ではスペクトラム)は、凶悪犯罪の方面で注目を集めることが多いが、勇敢さやチャレンジ精神との相性も良いため、リーダー、外科医、特殊工作員、トレーダー、弁護士、詐欺師などにもその特性が見られることが紹介されている。

    本書内で筆者らが懸念を示しているが、学生の共感能力が年々低下しているとの情報もある。その流れに乗って、ますますサイコパスと相性の良い功利主義が台頭する可能性も感じずにはいられない。ただ、このような研究が進むことで、より一層精神の分析が進むことに期待したい。

  • サイコパスと聖職者の共通点とか。
    サイコパスをスペクトラムとして考える。

  • 恐ろしい存在として認識され、名前だけが一人歩きしているサイコパス。
    しかし、犯罪者だけでなく聖職者やエリート役員、特殊部隊員等にもサイコパスと共通する素質があります。
    その素質は時と場合によっては有益であるようです。
    他の同類本に比べ、健常者とサイコパスの将来に焦点を絞っています。
    彼らサイコパスの脳の、新たな可能性を見出している一冊。

  • 新聞の書評で気になったので読んでみた。
    ちょっと長いので読むのが面倒な部分もあったけど、とても興味深い内容だった。
    優れた仲買人、CEOや一流弁護士は機能的サイコパスという、感情を人並み以上にコントロールできる反面、感情が希薄というのが新しい発見だった。

  • 非常にインパクトのある内容だが、サイコパスが何であるかの定義があいまいなまま屋を重ねているので、サイコパスもまた有能なり、という一貫した論旨には首を傾げる。
    一人前のサイコパス、なら、こういった本で学んでテストに引っかからないよう対応するだろうし、優秀なサイコパスならそもそも引っかからないだろう。無意識レベルの検査が必要。
    現状のテスト・測定で聖人、成功者と似たような結果が得られたからといって、同じ集合に含めていいものでもあるまい。明らかに別物であることを示す器質、指標があるはず。ただ、超人になれる資質が生育環境によってサイコパスになる、ということはあるのかもしれない。
    サイコパスが成功する職種、社会環境はそこに大きな歪みがあり、是正すべきであるという考え方も出来る。サイコパスが有能なトレーダーになるのだとしたら、トレーダーという職種が間違っているのだ。
    サイコパスを排除していく社会の仕組みを構築する、という発想が必要なのでは。サイコパスをも受け入れる社会であるべきなのか、いや、その思考こそがいいカモなのでは。

  • サイコパス診断と言う物がある。よくできているようだ、興味のある人はやってみてください。
    http://chikaraul.2.tool.ms/22/

    サイコパスというとどんなイメージだろうか?羊達の沈黙のレクター博士と言えば納得する人が多いかも知れない。精神病質者=精神病質(その人格のために本人や社会が悩む、正常とされる人格から逸脱した)である人、というのが大辞泉の説明だがこれでは何ともわからない。自分のことで悩む中二病までサイコパス扱いされかねない。

    サイコパスの世界的権威であるロバート・ヘアが1980年に作ったチェックリストが今も使われており20項目の質問からなる。以下の四つの因子ー対人面(口がうまい/表面的な魅力、過大な自己評価、病的な嘘、他人をだます/操る)、情動面(良心の呵責や罪悪感がない、情動が希薄、冷淡/思いやりに欠ける、自分の行為に責任が持てない)、生活様式(刺激を求める/退屈しやすい、寄生的な生活様式、現実的、長期的な目標の欠如、衝動性、無責任)、反社会的(暴走しやすい、幼児期の問題行動、少年非行、仮釈放の取り消し履歴、犯罪の多様さ)ーに対して各問0(当てはまらない)、1(やや当てはまる)、2(当てはまる)で答えるとほとんどの人は2店前後でサイコパスの入門レベルは27.6だ。調べてみるとこの質問表はきちんとしたトレーニングを受けた人だけが購入できるらしい。ということで一番上のサイコパス診断はあてにはならない。

    著者によるとサイコパスの決定的な要因は7つ、非情さ、魅力と一点集中力、精神の強靭さ、恐怖心の欠如、マインドフルネス、行動力。これが適度に組合わさるとSOS気質、追求し(Strive)、克服し(Overvome)、成功する(Succeed)の能力が発揮される。そんなに悪い物でもないと思った方は正解、適度なサイコパス特性は犯罪者ではなく成功者を生むのではないかと言うのが著者のアイデアなのだ。

    正常な人格を診断するためのビッグファイブ人格テスト(www.wisdomofpsychopaths.com)に基づきサイコパシーの世界的権威にどの特性があてはまるかを1〜5店で採点してもらったところ明らかな傾向が現れた。経験に対する開放性(知性)では感情の豊かさは1.8で行動は4.3、誠実性では有能さが4.2で義理堅さは1.2、外向性では自己主張の強さ4.5、刺激を求める4.7で温かさは1.7、協調性では率直性、従順、謙遜・・・いずれも1〜2、そして神経症的傾向では激しい敵意3.9、衝動性が4.5で自意識は1.1、不安、傷つきやすさ、意気消沈も低い。

    歴代大統領の伝記執筆者に採点させた所JFKとクリントンを筆頭に何人もの大統領が顕著なサイコパス的特性を示した(上のリンクに結果のリストがある)。サイコパス的特質とリーダー的特質を対比させると上辺の魅力ーカリスマ性、誇大妄想ー自信、他人を操る力ー影響力、詐欺のテクニックー説得力、込み入った作り話を考えるー先を見越した考え方、衝動性ーリスクを負うことができる、スリルを追い求めるー行動本位、感情に乏しいー難しい決断ができるとなる。サイコパシー度が適度な範囲にある時には優秀な能力になりえるようだ。

    いくつかのサイコパス的特性は犯罪者より企業リーダーのほうによく見られる。調査結果ではサイコパス度が高い職業にはCEO、弁護士、報道関係、セールス、外科医、聖職者などが挙げられ逆に低いのは介護士、看護師、職人、美容師、内科医などが挙った。サイコパス特性で他人の感情を理解できるが共感はしないからすると何となく傾向がでている。明らかにこの人はサイコパス的特質が高いだろうと言う人が頭に浮かぶ。スティーブ・ジョブズ、わかる気がしない?

    著者のケヴィン・ダットンは等々自らサイコパス体験をするための実験台にもなっている。磁気刺激を脳の扁桃体などにあてることで普段とは違う傾向が生まれる。賭けをやらせれば外れる心配をせず大胆になったり等々。なかなか興味深い実験だ。

    ちなみに上のHPにサイコパステストもあったのでやってみたが普通の人でした。残念、というわけではない。

  • サイコパスと呼ばれるひとたちが存在する。映画『羊たちの沈黙』『ハンニバル』に登場するレクター博士のような人物はサイコパスだ。そのため,サイコパスという言葉に「冷徹」「猟奇的」といったイメージを感じるひとは多いかもしれない。そして「サイコパス=凶悪な犯罪者」というイメージも。本書にはそうした「犯罪者タイプ」のサイコパスも登場するが,サイコパスに特有の「能力」を活かして社会的な成功を収めている「成功者タイプ」のサイコパスが多く登場する。むしろ後者の「成功者タイプ」のサイコパスこそが本書の中心的な話題である。本書は,オックスフォード大学の実験心理学部教授である著者による,成功者タイプのサイコパスについての本なのである。

    サイコパスに貼られる典型的なレッテルとは「不誠実,他人を利用する,良心の呵責をあまり感じない,自責の念が薄い,傲慢,あさはか」といったものだ(94頁)。そして,「サイコパスはどんな犠牲を払ってでも見返りを追い求め,自分の行為がもたらした影響の重大さを軽視し,リスクはそっちのけになる」(167頁)。しかしながら,そうした特質にはマイナスの面しかないのだろうか。そんなことはない,ポジティブな面もたくさんある,と著者は論じる。例えばビジネスで成功するためには,競争相手を心配するようなおひとよしでは困るはずだ。投資家だったら,少しの失敗にくよくよしたりリスクばかりに悩んだりせず,粛々と投資を続けられれば成功できるかもしれない。つまり,サイコパスの特徴を「冷静沈着で失敗を恐れない,目的を果たすために心の葛藤無しに合理的に判断できる」などのことと捉えれば,サイコパス的な気質は社会で成功するために必要不可欠だと言えるのだ。これこそが本書の主張である。

    本書によれば,サイコパスとは一般のひととまったくかけ離れた存在なのではなく,サイコパス的な特質は誰にでも備わっているのだという。その気質には連続的な濃淡があり(「サイコパシー・スペクトラム」(98頁)),その濃さが高程度だと社会的なさまざまな問題を引き起こすが,中程度であればむしろ有益でさえあるという(99頁)。これこそが社会的に成功しているサイコパスなのだ。

    本書の中で意外に感じたのは,サイコパスは一般のひとよりも他人の感情に敏感だという点だ(169頁)。というのも,普通,サイコパスというのは他人に共感できない人間だと思われがちだからだ。他人への共感がないので,他人の感情を無視して自分勝手に振る舞えるというわけだ。ところが本書によれば,サイコパスは他人の感情にひと一倍敏感で,しかしその感情を知覚的に処理するものの感情として実際に感じないのだという。つまり,自分勝手に振る舞うのも,それによって他人が苦しむことを理解できないからではなく,普通のひとと同じように苦痛に「気づいていながら,突っ走ってしまうだけ」なのだ(296頁)。

    サイコパスに関連する本ではロバート・ヘアの『診断名サイコパス』(ハヤカワノンフィクション文庫)やマーサ・スタウトの『良心をもたない人たち』(草思社文庫)が有名だろう。これらはサイコパスがいかに危険な存在であるかについて書かれた本であると言える。それに対して本書は,もちろんサイコパスを手放しに称賛しているわけではないものの,それでもサイコパスのポジティブな側面について述べられた本である。その意味で本書はサイコパスについて知りたいと思ったときに最初に読むべき本ではないと思う。それでも本書はサイコパスについて知るうえでお勧めの一冊であることは間違いない。まずは『診断名サイコパス』『良心をもたない人たち』を読んだうえで本書を読んでみるのが良いのではないだろうか。

  • サイコパスの人の心理を出来るだけ好意的に見てそれをどのように活用すれば問題を解決することが出来るのか。
    普通の倫理観の持ち主ならば問題に対して躊躇とか心が痛んだりすることでも、サイコパス的な考え方を持つ人では合理的に考えて即座に判断を下すことが出来る。

    その判断のしかたが、やもすると嫌悪的なものを感じさせることがある。
    この点がサイコパス的な人とそうでない人の違いであって、
    世間で成功者と呼ばれる人の多くがこのサイコパス的な考え方をすることが出来る。

    正直な所、顔見知り以上の関係にはあまりなりたくない人たち。

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