WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140819029

作品紹介・あらすじ

もう人間関係、世代間ギャップ、依存症で悩まない! 脳科学者が脳卒中に学んだこと。

左脳の脳出血により、右脳の機能しかなくなったとき、脳科学者のジル・ボルト・テイラー博士は、それまでの認知機能、身体機能を失ったにもかかわらず、この上もない幸福感に包まれた。8年間のリハビリの末、すべての機能を取り戻した博士が、脳卒中の実体験と神経解剖学の科学的見地から得た新しい知見を惜しげもなく開示する。 
左脳は思考、右脳は感情というステレオタイプから脱却し、脳の仕組みを知れば、考え方・感じ方の嫌なクセは変えられる。脳は、ふたつの感情、ふたつの思考、合計「4つのキャラ」のシェアハウスだ。たとえば、心と頭が別々のことを言っているときは、脳の異なるキャラ同士が争っている。キャラたちが、ひとつのチームとして協力し合えば、心穏やかな人生が手に入る。
脳は、今でも進化の途上にある。私たちは、何かことが起こったときに、感じ、考える回路を何度も使ううち、その回路だけが発達してしまい、ほかの回路を作動させることができなくなっている。けれど、それを知って、別の回路をはたらかせることができるようになれば、いつもの自分の考え方や感じ方のパターンとなっている嫌なクセを変えられるのだ。
脳科学の分野の「4つのキャラ」と、ユング心理学の「4つの元型」は符合すると、著者は言う。本書は、脳科学と心理学を融合させ、自分自身の力で、自分の「脳」を動かし、なりたい自分になる方法を教えてくれる。

まえがき 心の安らぎはすぐそこにある
第一部 脳のなかをちょっと覗いてみる    
     第1章 私の物語、私たちの脳
     第2章 脳の構造と人格
     第3章 脳を支えるチーム―四つのキャラクター
第二部 あなたの四つのキャラ
     第4章 キャラ1 考える左脳
     第5章 キャラ2 感じる左脳
     第6章 キャラ3 感じる右脳
     第7章 キャラ4 考える右脳
     第8章 脳の作戦会議―安らぎのための強力なツール
第三部 人間関係における四つのキャラ
     第9章 自分自身とのつながり―四つのキャラと体
     第10章 ほかの人たちとのつながりー―恋愛関係における四つのキャラ
     第11章 分離と再連結社会との断絶と結び直しー―依存症に立ち向かう四つのキャラ
     第12章 この百年をふり返るー―四つのキャラと世代とテクノロジー
     第13章 完璧で、ありのままで、美しい

感想・レビュー・書評

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  • 【はじめに】
    著者のジル・ボルト・テイラーは、ハーバード大学に所属する前途有望な脳神経科学者であったが、37歳のときに脳出血により左脳の機能を一時的に失った。そのときの身体と思考の分析と、そこからの回復について『奇跡の脳』にまとめられていて、すこぶる興味深い。また、彼女を有名にしたTEDトークの講演でも彼女の経験が自身の口から紹介されている。

    【概要】
    本書は、『奇跡の脳』のように著者の体験を描いたものではなく、そういった経験から得られた知見をもとに右脳・左脳を意識した考え方をするべきだという本である。脳を右脳・左脳と大脳皮質と脳幹部分の4つに分けて、それぞれを考える左脳を<キャラ1>、感じる左脳を<キャラ2>、感じる右脳を<キャラ3>、考える右脳を<キャラ4>として、それぞれの特性を解説し、人はこの4つのキャラからなっているのであり、脳全体としてうまく付き合っていくことでよりよい人生を送ることができるというものだ。実際に著者はそれぞれに異なる名前(人格)を付与していて、実際にそれがうまく働いているようである。
    著者は一度、左脳の機能を失うことで右脳だけの知覚を体験することになったが、それは得難い心が落ち着くとい自覚であったという。そこからの回復の過程で、左脳と右脳との違いを明確に意識をすることになったという。
    脳内の4つキャラがどのような生理学的機構で動作するのかの実証的な分析はあまり行われていない。分離脳患者の実験でも右脳と左脳とは別の認識をそうとは意識せずに行うことは事実としても知られている。ただ、著者が言うように明確にそういった<キャラ>が存在するのかはわからない。ただ、少なくとも著者にはそのような解釈を行うことが最も妥当であるし、実行上もそれを受け容れて意識することでよりよく人生を過ごすことができると信じているのである。

    【まとめ】
    『奇跡の脳』は本当に素晴らしい本で、読まれるべき本であった。また、著者の回復に要した努力や体験は賞賛に値するものだ。おそらくはこの本を読む前に『奇跡の脳』を読むべきだろう。
    著者が回復の過程で感じた体験をもとに書かれた本書の内容は実感の伴った嘘偽りのないものなのだろう。本書で書かれている右脳・左脳の区別の話が科学的な実証に耐えうるものかどうかはわからない。しかし、言語中枢を含む左脳とそうでない右脳の関係についての探究は、俗な興味事とは別物として進められるべきものだと思う。

    相応に分量のある本だが、具体的なキャラの話などはあまりできのよくない自己啓発本的なところもあって個人的にはかなり飛ばし読みをしてしまった。

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    『奇跡の脳』 (ジル・ボルト・テイラー)
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4105059319

  • アウトプット部より

  • 脳出血で左脳の機能が停止し、右脳優位になって至福の時間を過ごした経験のある神経解剖学者が書かれた本。

    人の脳には4つのキャラがある。今まで無意識にそのうちの1つのキャラに引っ張られ不幸だった人に、意識的に他のキャラを選ぶ事によって幸せになる事を勧める。ある負の感情に襲われた時に、自分の思考の癖に気づく良いキッカケになりそうだ。

    英語の和訳本は冗長なことが多いが、この本もご多分に漏れず。まず最初に訳者あとがきを読んで、気になった箇所の本文を読むと時間セーブになると思う。

  • 神経解剖学者のジル・ボルト・テイラーさんの最新刊。
    彼女が37歳の時に脳出血を起こし、それから8年のリハビリを経て復活し、その体験を語ったTEDの講演が世界中の賞賛を得たことで有名な方。

    原題は「WHOLE BRAIN LIVING」。
    邦題は「ホール・ブレイン 心が軽くなる「脳」の動かし方」

    神経解剖学者さんの本だから、きっと科学寄りの内容なのだと思って読み始めたら、違いました。脳出血によって、一時的に左脳の機能が完全にストップした経験から、人間の脳の中には4つの性格が潜んでいるというのを説明し、そして、その4つのキャラを見極めることで、人生をより良く生きるにはどうすればいいのか、という、むしろ心理学的というのか、人生訓的な本でした。

    左脳にある考える部分が「キャラ1」、左脳にある感じる部分が「キャラ2」、右脳にある感じる部分が「キャラ3」、右脳にある考える部分が「キャラ4」。

    右脳は基本的に「今、この瞬間」だけを生きていて、左脳は基本的に時間の流れを見渡して分類したり予測したりする。几帳面で機能的な「キャラ1」と臆病で不安症の「キャラ2」が左脳、脳天気で幸せを生きている「キャラ3」と世界と繋がって全てを包み込む「キャラ4」が右脳。

    人はそれぞれ、脳の中に4つのキャラが存在して、キャラが交代しながら暮らしている。なので、自分の中の脳のキャラを把握して、適切な場所で適切なキャラを出せれば生きやすくなるよ。大変な事態が起こった!なんて時は、90秒間深呼吸して、そして「脳の作戦会議」を開けるようにすればいいよ。 ということが書いてある本でした。

    ともすれば、ちょっとスピリチュアルな匂いもしそうな内容だけれど、実際に脳を研究していた研究者で、数年間の「左脳の機能を失った」経験のある著者の言葉には説得力がありました。

    私の中の4つのキャラを切り分けることは難しいけれど、何かの時に、思い出して、今はどのキャラが考えているんだろうか?と考えてみてもいいと思いました。

    キャラ1とキャラ2がメインで、たまにキャラ3がはしゃいでるって感じかなぁ。マインドフルネスとかをやれば、キャラ4に会える気がする。

    (そして、実は「奇跡の脳」を読んでいないので、これから読もうと思っている私であった。TEDも今一度見直してみました。何度見ても泣ける〜。)

  • 自分のなかの感情や思考はどうしてこうも複雑なのだろう。
    時に相反するような、入り交じったものになるのはなぜだろう。
    それは脳のなかに2つの感情と、2つの思考を司る細胞群があるから。
    それら2つのペア同士は完全に独立しているばかりか、まったく正反対の方法で情報を処理している。
    例えば左脳の処理は、過去から現在へというように順序立ててつなぐような時系列処理を行ない、そこから推論や言語、時間感覚や自我が育まれるが、逆に右脳は過去も未来もない、「今ここ」という瞬間の同時処理を行なっているため、全体との一体感を育んでいる。
    その結果、一つの頭の中に相反する二面性が生まれるのは仕方のないことで、我々が左脳と右脳の自律的な視点が引き起こす対立に苦しむのも無理はない。
    もし心と頭が別々のことを言っているのだとすれば、それは脳の違う部分同士が争っている時なのだ。

    人生をよりよいものにしていくには、左脳の「キャラ2」とどう健全な関係を築けるかにかかっている。
    痛みや悲しみ、恨みといった負の感情とどう折り合いをつけていくか。
    右脳のオープンでフレンドリーな「キャラ4」や好奇心旺盛で積極的な「キャラ3」だけになってしまえば、人生は豊かで楽しくなりそうだが、それは著者が自らの病を克服して得た教訓ではない。
    怒りや恐怖はなくなったが、しゃべることも理解することもできず、意味を持った文字や数字も見分けることもできない生活。
    もっと言えば自分が誰なのか、アイデンティティも喪失した状況。
    心穏やかで果てしない感謝の気持ちに包まれた右脳支配の脳だけでは、とても人としての正常な営みを送れない。

    多くの人は、黙っていても左脳の「感じるキャラ2」が優先となって、悲観的に感じ考えてしまうもの。
    しかしキャラ2の感情的な苦痛に耳を傾けないでいると、そのうち身体的な病として表面化するだろう。
    私たちの心身の健康の鍵を握っているのは、この「感じるキャラ2」であることが多い。
    いつも不平不満や泣き言を言っているように見える「キャラ2」は、進んで外部の脅威に立ち向かってくれているスーパーヒーローだとも言える。
    時にはどうしようもない自己破壊的な五歳児にも変貌するのだが。

    著者は、自分のなかのギャラ2をよく理解して、「脳の作戦会議」を通じて、他の3つキャラたちと一緒に育てていく方法を学ぶべきだと語る。
    弦楽四重奏を演奏するように、どのキャラが欠けても、メロディは完成しない。
    あるキャラが暴走しはじめたと感じたら、速やかに一時停止し、90秒の間をあけて脳内の化学物質を一度中和する。
    さすれば「4つのキャラ」全員の息も合わせやすくなると。

    外からの情報を処理するのに我々は、生物学的に必ず、まずは感情に関わる細胞が処理をしてから、高次の思考中枢に送られる。
    ゆえに人間はいかに「考える葦」だと思っていても、我々が「感じる生き物」であるという前提を無視するのは大間違いだ。

    薬物やアルコールなどの依存症からの脱却においてもそうで、左右の感情・欲望中枢の細胞である〈キャラ2と3〉の両方を参加させないかぎり、決してリハビリは成功しない。
    著者が本書で何度も繰り返す、「私たちは感じることもできる”考える生き物"ではなく、考えることもできる”感じる生き物"である」という主張の根本はここにある。
    道理を説いて頭でわかっても、感情的にも降参させなければ、必ず依存症は再発する。
    これは依存症患者だけの問題ではない。
    彼らを支える周りの家族や友人もそうなのだ。
    自堕落で破壊的な素行を目にすると、どうしても〈ハードなキャラ1〉に変貌してしまい、厳しいルールを作って管理してあげたくなってしまうが、それが相手をさらに追い込んでいることに気づかない。
    もっと言えばそれが実は、自分の「キャラ2」の痛みや苦しみを隠すために「キャラ1」に変身していることに気づかない。
    とりもなおさず依存症患者の問題ではなく、周りの人たち自身の問題でもあることを肝に銘じる必要がある。

    「愛する人を見捨てたくない、かなわない夢だとあきらめたくない。家族や友人の〈キャラ1と2〉は必死に希望をもちつづけます。しかし、充分に苦しみを味わい、〈キャラ2〉が打ちのめされ、不安になり、落ち込んで、すっかり無力感と敗北感にのみ込まれると、〈キャラ1〉がリングにタオルを投げ込みます。〈キャラ1〉が希望にしがみつけばつくほど、さらにリスクの高い、次の段階の修羅場へ発展させる許可を依存症患者に与えてしまいます」

    言うは易く行なうは難し。
    実際、回復後の著者は、父親の看病の時にはほとほと手を焼いている。
    世話する娘への感謝の言葉もなくガミガミと小言を言い続けるため、著者もついつい言い返すことに。
    「キャラ2」同士の言い争いだ。
    そこで著者は父親の好きな絵画教室に連れ出すなどして、なんとか関係を保っていく道を見つける。
    それは、左脳から右脳へ意識を向けることで泥沼から脱出できたと振り返っている。

    著者ジル・ボルト・テイラーは、脳の2つの部分を意識と無意識、思考と感情に分けて、ユニークかつもっともらしい見解を示している。
    しかし、専門の脳神経科学者は本書をどう読むのだろうと感じたのも事実。
    「相手にどのキャラが宿っているのか識別して」
    「どのキャラがステージに躍り出てマイクを奪って主役となっている?」
    「舵を取っているのは?」
    「意識の前面に出ているのは?」
    そして時にスピリチュアルな方向に話が展開し、「宇宙の流れとつながり」「境界に溶け込むことができる」「脳は意図的に外部のエネルギー場に影響与えることができる」など、専門家はどう読むだろう。
    一般読者に向けて科学者が、非科学的で主観的な書き方で論じても問題はないが、果たして...。

  • 分かりにくい。

  • 面白かった。筆者の考えでは、自分自身のキャラは左脳的なキャラと右脳的なキャラだけでなく、左右それぞれを皮質と辺縁系のあたりを境として上下に分割することで、上下と左右の組み合わせから成る4つのキャラに分けられるのだという。これらのキャラは、解離性同一性障害のような精神疾患ではなく、誰もが実感できるものであり、状況や状態によって目まぐるしく変化していることがわかる。
    『奇跡の脳』でユングに触れられていたため、本書でも序盤から期待しながら読んでいたが、やはり4つのキャラは元型(ペルソナ・シャドウ・アニマ/アニムス)および自己と対応しているとのことで、我が意を得たりという思いである。

  • 四コマ作戦会議、いなしキャラ3

  • 脳の仕組みについて、左脳が麻痺した経験のある脳科学者が体験をもとに分析。
    脳には、考える脳と感じる脳の領域が左脳、右脳にそれぞれあり、4つのキャラを演じている。
    人間関係において、この4つのキャラとどう付き合って行くが大事。また、ミレニアム世代、Z世代など世代別のキャラの特徴を捉えるなど、人間の特徴を捉え対応するのに、4つのキャラの理解は、人生を生きやすくする。

  • WHOLE BRAIN. ジル テイラー NHK

    脳には左脳と右脳それぞれに思考と感情を司る四つのキャラが潜み
    それを読み解いた稀有な体験を持つ
    ジルテイラーは実に幸運な人である
    神経解剖学を通して人間の何たるかを
    見つめていた彼女は
    釈迦に次ぐ大冒険の快挙を
    意図せずして楽しく成し遂げ
    無限大のお土産を手にし九死に一生を得て
    帰還することができたのである
    居合わせた私たちも思わぬお土産にあずかり
    同じ幸運に浴せたと言えるだろう
    誰もが持つ一つの脳内に
    左脳の三次元時空間に偏った
    五感による部分感と
    右脳の無限を視野にした唯一無二の
    全体観を並列させて
    そのそれぞれに思考と感情の個性を備えた
    四つの分身による共同作業で
    私の一瞬一瞬を描きだしていく構造に
    付帯する気づきをもたらしたのである
    ジルテイラーは緩やかな脳内出血によって左脳が休眠状態となり
    右脳を通して無限なる集合意識に浴する
    チャンスをものにしたらしい
    ある種の臨死体験と言えるのかもしれない
    私たちは四つに分断された体験から学び
    全体観を目指す成長の過程にあり
    この私の脳内にある四つの個性が
    お互いの機能に気付けずにいがみ合えば
    競い争う混沌状態となり
    お互いが俯瞰し合うことで
    相手を知り輪になれれば
    切磋琢磨が起こりその相乗効果は
    計り知れない幸運をもたらすだろう

    惜しいかな
    日本語の文脈になっていない翻訳のまずさで読みにくいのが難点だ

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著者プロフィール

神経解剖学者。1996年、37歳のとき脳出血により左脳の機能をすべて失った。8年のリハビリの末、身体、感情、思考すべての脳機能を回復させた体験を語ったTEDトーク(2008年)は、これまでに2800万回以上視聴され、伝説の講演となっている。体験記『奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき』(新潮社)はベストセラーとなった。本書は、その実践編とも言える著者の2冊目の著書である。現在は、ハーバード大学脳組織リソースセンター(ハーバード・ブレインバンク)のナショナル・スポークスマンとして、重度の精神疾患の研究のために脳組織を提供することの重要性について、啓蒙活動を行っている。

「2022年 『WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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