人工知能の核心 (NHK出版新書 511)

制作 : 羽生善治  NHKスペシャル取材班 
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885116

作品紹介・あらすじ

二〇一六年三月、人工知能の囲碁プログラム「アルファ碁」が世界ランクの棋士を破った。羽生善治は、その勝利の要因を、「人工知能が、人間と同じ"引き算"の思考を始めた」とする。もはや人間は人工知能に勝てないのか。しかし、そもそも勝たなくてはいけないのか-。天才棋士が人工知能と真正面から向き合い、その核心に迫る、"人工知能本"の決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 人工知能(AI)ってなに? ディープラーニングってなに?という初心者におすすめの1冊。
    ある程度、AIに携わったことのある人にとっては、レビューを見ると物足りないらしいです。

    本著は、AIやディープラーニングの仕組みを分かりやすく例を挙げて解説しているので、とてもわかり易いです。

    さらに、AIはプログラミングが得意な方が書かれた著書が多い中で、その手の専門家、この場合は将棋になるが、プロの視点から攻略や考え方のプロセスを説明しながら、AIについて解説している貴重な一冊です。

    羽生名人がこんなに分かり易い文章が書けることにことに驚きつつ、最後までさらっと読めました。

  • 人工知能を 一番先端的に味わっているのは、
    羽生善治 なのかもしれない。
    人工知能に対する 距離感が 実にいい間合いである。
    将棋は 日本の伝統的文化のひとつで、
    それが 人工知能に 棋士が勝てなくなっている。
    羽生善治は 2015年には棋士が人工知能に負けると予測。

    羽生善治は 勝つことよりも人間らしい指し方が
    人工知能に出来るのか?を 提議する。
    棋士としての 「美意識」が 存在し、
    その美意識は 個人によって 違う。
    人工知能が その美意識を理解できるのか?
    そして、理解するとは どんなことなのか?
    人工知能は、本当に考えているのか?
    単に、計算しているだけなのに。
    アルゴリズムは、考えているといえるのか?
    人工知能が、なぜ創造性を生み出さないのか。
    「誤差逆伝播法」ー引き算の世界。
    人工知能は データがなければ学習できない。
    人工知能が学べるのか?

    人工知能には 恐怖心がないことが
    人間と同じようなことが出来ない要因である。

    将棋の手順は
    「直観」ー「読み」ー「大局観」
    人工知能は 書き換えられていくために、
    「記憶」が、存在しない。
    沢山のデータの中に 埋もれている。

    平面の2次元の認識と空間認識が違う。
    将棋は 平面であるが故に 人工知能が取り扱える。
    小説は「共感」が求められるものには、
    心が欠かせないので、難しくなる。
    「接待」将棋は 難しくなる。

    PEPPERには 感情地図がある。
    ニンゲンらしい反応を示す。
    「オラクル型」 データを大量に扱う
    「ジニー型」何をすべきかが提示される。
    「ソブリン型」自律的な行動をする。

    羽生善治のもつ好奇心と挑戦心が発揮された
    おもしろい作品だった。

  • 人工知能のすごい話はよく聞くので、人工知能ができないこと、をたくさん集めたこの本はとても興味深かった。ハンカチがたためないとか。かわいすぎる。

  • 2016年5月に放送されたNHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」の取材をもとに、羽生さん自身が、その後に重ねた思索等を織り込んだ著書。
    羽生さんは、1996年に複数のプロ棋士へ行われた「コンピュータがプロ棋士を負かす日は?」というアンケートで、米長邦雄氏、加藤一二三氏、村山聖氏らが真っ向から否定する中、その日を「2015年」と答えていたのだそうだ。そして、人工知能の進化を肌身で感じ、それでいて、その進化を、人間を脅かすものと否定的に捉えるのではなく、人間の新たな可能性を切り拓くものと肯定的に考える人であるがゆえに、NHKは番組のレポーター役を依頼したのだという。
    「現在、電王戦を中心としたコンピュータ将棋と人間の棋士との間で起きている様々な事象が、今後、人工知能が社会で応用されていくときに想定される事態を先取りしているように思える」と語る羽生さんは、棋士がコンピュータ将棋を相手にするときに直面する大きな違和感は、「人工知能の思考がブラックボックスになっていること」と「人工知能には恐怖心がないということ」であり、人工知能が今後さらに大きな進化を遂げ、社会的な位置付けが高まったときに、それらは大きな問題となる可能性があると指摘している。
    また、目的を限定した専門人工知能の進歩は順調に進みつつある一方、何でもできる汎用人工知能の開発の道のりは緒に就いたばかりである点について、汎用人工知能とは、人間の脳はどのように知性を成立させているのか、に密接に結びついたものであり、脳の解明と汎用人工知能の実現は「タマゴが先か、ニワトリが先か」のように、いずれかが進めばもう一方も前進する関係にあるのではないかと語っている。
    そして、我々の今後の人工知能との付き合い方として、人工知能の判断はプロセスがブラックボックスであり、かつ決して100%正確なものではないことを、しっかり認識する必要があること、人間と人工知能が共存していくプロセスにおいて、いかに人間らしい価値観や倫理による判断を人工知能に備え付けさせるかが大きなテーマとなること、を挙げている。
    そして最後に、将来高度に発展した人工知能が登場して、人間の知性と比較されるようになってきたときには、人間の知性の特徴が浮き彫りになり、更に、人間も人工知能も包括するような「知性」とは何かが解明されていくのではないか、と結んでいる。
    人工知能の専門家が、その仕組みや産業への影響などを解説したものとは趣が異なり、最強棋士・羽生さんらしい切り口での、人工知能についての考察、人工知能との付き合い方が語り尽くされた、ユニークな一冊である。
    (2017年11月了)

  • NHKの番組も見た。天才がキラキラした目で最新技術を見学していた。

  • 美意識は、時間そして恐怖心から産まれる。

  • 発達著しい人工知能について、人工知能の躍進に最も直面していると言っても良い将棋界の第一人者羽生善治氏が解説する本。とにかく驚かされるのは羽生氏の人工知能に関する知識の広さ、考察の深さです。入門書的な切り口から始まるのですが、人工知能研究の最前線での課題とされる「フレーム問題」、「チューリングテスト」などにも触れています。
    人工知能の課題として「結果が導かれるプロセスがブラックボックス化されていること(医療や裁判で人工知能が導入された場合、その結果を人間が抵抗なく受け入れることができるか)」、「人工知能自身は恐怖感を感じていないこと(負ける恐怖を感じるようになった時、いかに振舞うようになるのか)」、「将棋ソフトにおいては高性能化は進んでも、自ら投了の判断ができるようになるにはまだまだ時間がかかる」、「対戦相手に合わせて程々のレベルで負けるような”接待将棋”ができる人工知能は、実は非常に実現が難しい」等々、非常に興味深い切り口が次々に提示されます。
    一流棋士であり同時に人工知能の最前線を理解できる両方の視点を持つことができる羽生氏だからかこそ得ることができる視点でまとめられた、非常に分りやすいが決して内容が薄くない好著でした。人工知能についておさらいしたいなら、まずはこの1冊といっても良いぐらいです。

  • 将棋の羽生さんが書いた人口知能の本。

    NHKスペシャル『人口知能は天使か悪魔か』を見て読もうと思いました。

    人口知能の本は何冊か目を通したけど、羽生さんの例えが非常にわかりやすくて、一番人口知能を身近に感じることができた本かもしれない。

    非常に馴染みの深い話題から、専門的な内容にスムーズに移行していく書き方は、昔でいう金田一少年の事件簿や古畑任三郎のように、ちょっとしたコメディーから難しいミステリーの内容に読者や視聴者を引き込んでいくようでした。

    これまでプロ棋士より将棋で強い存在は居なかった中、プロ棋士より強いAIが現れ、棋士の存在意義が問われている状況は、地球上で最も高い知性を持っている人間より高い知性が現れるときの、人間の存在意義の縮図を語ってくれている気がした。

  • 世界最高峰と言われる頭脳を持つ羽生さんがどう言う風に人工知能について考えているかがわかりやすかった。
    人間にできて人工知能にできないものは何か?知性とは何か?など、人工知能と人間の違いをあげながら人工知能とは何かについてせまっていく内容だった。

    羽生さんならではの将棋における、AIの指す手の違和感など「美意識」や「恐怖心」という言葉を使って説明されていた。
    人間とは何か?本当に難しいテーマであるが、
    あいまいなこともコンピューターによって0か1に分類できないものはないと言い切ってここまでテクノロジーが発展してきたが、実は0か1に分けられないものこそ人間らしいものなのではないかと羽生さんが言われているように、
    これからもっと人工知能研究を追求して行くことで「人間らしさ」が見えてくるのだろう。

  • 天才棋士が、人工知能研究者との対話などを通じて、人工知能とは、ひいては知性とは何かを探究する。
    将棋も人工知能も詳しくないが、それでも非常に分かりやすく、人工知能のイメージがわいた。
    正直、読む前は、人工知能のことを知るなら人工知能の専門家か、少なくとも記者やライターが取材して書いた本がよいのでは?と思っていたが、実際に読んでみると、天才棋士とAIという組み合わせがとてもよかった。というか羽生さんの探究心がすごい。

  • 今となっては古い内容なのだと思うけど。この分野の初心者としては、専門家諸氏の書いた本より棋士という門外漢の方が書いたもののほうが面白いかと思って読んでみた。

     羽生さんは独特の文体をお持ちですね。

    羽生さんは棋士としての 「美意識」ということをいわれる。
    それは「定石」とはまた違って、プロとしてたくさんの棋譜をみてはぐくんできたものであるらしい。


    「美意識」は時間と恐怖心からつくられているとかいろんなことを言われる。私は将棋はできないのでそれがどんなものかはちょっとわからない。
    また、同じ棋士でも、たとえば藤井聡太さんとかは違うアプローチをしてらっしゃるかもしれないなと思う。

    人工知能は、本当に考えているのか?
    単に、計算しているだけなのに。
    アルゴリズムは、考えているといえるのか?

    「誤差逆伝播法」ー引き算の世界。
    モンテカルロ法というものを使っているらしい。


    人工知能には 「恐怖心がない」
    人間の棋士の盲点をつくことができる。
    が、それが弱点にもつながるのかもしれない。

    将棋の手順は
    「直観」ー「読み」ー「大局観」


    平面の2次元の認識と空間認識が違う。
    将棋は 平面であるが故に 人工知能が取り扱える。
    小説は「共感」が求められるものには、
    心が欠かせないので、難しくなる。
    (もうAIで小説は書かれているかもしれない)

    「接待」将棋は 難しい。
    人間の心に沿って、手ごころ加える→「教育」の本質

    PEPPERには 感情地図がある。
    機械に感情はいらないのでは、という専門家もいる。

    「オラクル型」 データを大量に扱う
    「ジニー型」何をすべきかが提示される。
    「ソブリン型」自律的な行動をする。

    ☆「失敗からの復活」こそが人間の人間たる所以。
    むしろ機械のほうが、感情がないから、心が傷つくことがなく、プログラム通り何度もトライすることができるかもしれない。
    傷つく、恐怖心といった人間の「弱さ」がポジティブポイントなのかもしれない。

  • 背ラベル:007.13-ハ

  • 時間の概念は、人工知能にはない。
    あの匂いを嗅いで思い出すエピソードとか、音楽の一部フレーズを聞いた時に思うこと、五感の要素も人工知能にはない。
    人間にあるものは、そのさまざまな五感で感じ、結びついた記憶と時間の蓄積。

    人工知能が優れたいることは、記録である。場所日付を正確に「記録」することができる。

    美意識を人工知能がもつ日がくるのも、時間の問題なのかもしれない。
    これから失われるもの、変化していくものを見極めて生きたい

  • 3

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685202

  • 羽生善治さんのわかりやすい語り口で人工知能という最先端の問題について触れることができた。自分の生活にも直結してくるであろう人工知能をどう使うべきなのか、今後考えていくきっかけになった。

  • 将棋の羽生さんが人工知能の本を書いてる、という興味から本書を手にとった。4年前の本なので、内容には古いところがあるかもしれないけれど、IT知識なしの自分には人工知能とはなんぞやがわかりやすい文章でよどみなく書かれていた。

  • なかなか興味深い本だった。
    羽生先生の文章も分かりやすく、
    良く取材されていた。
    やっぱり専門分野以外の分野に対しても
    このようにきっちりと調べて
    文章を書けることこそが
    知性なのだと感じた。
    私の羽生先生のような知性を
    身に付けたいと本気で感じた。
    もっと、もっと、もっと、
    読書に励み、勉学に励まないといけない。
    そして、もっと、もっと、もっと、
    見識を広め、さらに深めなくてはいけない。

  • 冒頭「2016年3月、韓国の囲碁棋士であるイ・セドルさんが、イギリスのグーグル・ディープマインド社の開発した人工知能、「AlphaGo(アルファ碁)」に敗北しました。」

    末尾「しかし、本当は、0と1に分離できない物事にこそ人の営みがあるのではないかー紀元前に作られた壺を前にして、ふと気がついたのでした。」

    将棋のプロ棋士、羽生善治さんによる人工知能の本。羽生さんの本は『決断力』、『大局観』以来久しぶり。
    人工知能にも造詣が深い、というのは何かで知っていたけど、想像を超えていた。チューリングやマーヴィン・ミンスキーといった専門家、専門用語も普通に出てくる。だけど、単純に難しい話に終始しているわけでなく、自身の言葉でかみ砕いてくれるため読みやすい。「将棋界は人工知能を先取りしている」の言葉があったが、プロ棋士として、PCやインターネット、さらにはAIといったテクノロジーの進歩を見つめながら、それらとの付き合い方を考え続けてきたからこその言葉だと思う。

    人工知能の三つの分類。
    「オラクル型」検索エンジンやデータベースのように、こちら側で発した問いに、人工知能が回答を示してくれる。
    「ジニー型」指定されたタスクを実行することを目指すタイプで、現在、人工知能と呼ばれているものは基本的にジニー型。
    「ソブリン型」人工知能そのものが、自ら医師を持ち、継続的に作業を行っていくことができるもの。

    「フレーム問題」とは、「人工知能のジレンマ」とも呼べる、大変に重要かつクリアすることが難しい課題。フレーム問題の本質は、ある目的に対して「関係のあること」だけを選び出すことが人工知能にとって難しい、ということにある。
    結局、使う人間側が、AIがどんなフレームの中で計算を行っているかをわかっていないといけないと思った。

    また、人間は学習と推論を同時に行えるが、AIにはできないということも大事だと思った。人間は少ない数から推論を行うこともできるが、AIはビッグデータ(教師データ)が欠かせない。

    羽生さん自身はプログラムを書いたりという、いわゆるAIの開発は行っていないと思うけど、AIの理解とか付き合い方はもの凄い。トップのプロ棋士として第一線で活躍しながらなのに凄い。だからこそなのか。とにかく、この知性に触れることができるのは幸せだと思う。

    今後は、いわゆる文系の人たちもAIとの付き合い方、AIリテラシーを見つける必要があると思う。

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著者プロフィール

1970年9月27日、埼玉県所沢市生まれ。1982年、関東奨励会に6級で入会。1985年12月、プロ四段に。1989年、19歳で竜王獲得。これが初タイトルとなる。以降、数々のタイトルを獲得。1996年には、当時の七大タイトル(竜王・名人・棋聖・王位・王座・棋王・王将)全冠独占の快挙を成し遂げる。2017年に、八大タイトル戦のうち永世称号の制度を設けている7タイトル戦すべてで資格を得る、史上初の「永世七冠」を達成した。タイトル獲得は通算99期、棋戦優勝45 回(ともに2022 年6月時点)。主な表彰として、2007 年特別将棋栄誉賞(通算1000 勝達成)、2018 年国民栄誉賞、同年紫綬褒章。さらに2022年、史上初の通算1500勝を達成し、特別将棋栄誉敢闘賞を受賞。将棋大賞は最優秀棋士賞など多数受賞。

「2022年 『改訂版 羽生善治のこども将棋入門 中盤の戦い方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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