「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885178

感想・レビュー・書評

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  • 司馬遼太郎の作品は戦後の復興期から日本人の心を捉えて離さず、彼の作品により脚光が集まった歴史上の人物も多数存在する。

    その一方で、司馬史観と呼ばれる、彼特有の歴史の捉え方は、彼の作品の影響力の大きさから、誤った事実を普及しているとして、否定的に捉えられることも多かった。

    その司馬史観について、歴史学者の観点から切り込み、彼の思想を読み解き、その思想を理解した上で司馬遼太郎の作品を楽しむべきとした本作。

    司馬史観の存在は知っていたものの、体系立てて整理したことがなかったため、大変勉強になった。

    ここからはややネタバレになるが、司馬遼太郎の思想として、昭和初期を鬼胎の時代と位置づけ、日本にとって非常に悪い時代とし、そこに至る過程を整理する中で、特に江戸、幕末、明治を紐解き、さらにその源流として織田信長の時代にまで遡っている。

    そのため、国盗り物語→竜馬が行く→飛ぶが如く→坂の上の雲、という作品が彼の思想の本筋として存在している。

    それに付随する作品、特に作者は花神を推奨していたが、これらの中にも名作が多く、そこには本筋以外の彼の思想が現れている。

    彼の作品は、荒唐無稽な日本礼賛ではなく、本質的な日本人の良さを浮き彫りにし、そうした良さを理解した上で国家の形成に役立ててほしいということを伝えている。

    歴史的に正しいかということも、もちろん大切ではあるが、そうした彼のメッセージを理解した上で、日本の、特に近現代史に触れることはメリットしかないように思える。

    そうしたことに気付かされる、大変有意義な書籍であった。

  • 20210112

  • 司馬遼太郎の歴史観がわかりやすく書かれている。ためになる。

  • 簡潔に江戸〜昭和の歴史を敷衍できる。
    あと、司馬さんの本を読んでみようという気になる。

  • 新書はほとんど読んだことがない。学生時代に仕方なく課題として読んだぐらいで。実は「司馬遼太郎」さんの本も未読。少し恥ずかしいなと思い、「いざ!」読む前に初心者の心構えが知りたくて読んでみた。読みやすくて、わかりやすくて、作品と歴史の関わりも知ることができ、司馬遼太郎さんの考え方も少し知ることができ、読んでよかった。

  • 司馬遼太郎の小説は、明治前後のものが多いが、本書を通して昭和という時代をどのように捉えていたかを知ることができる。青春時代を戦時中で育ったゆえに、原点は昭和にあるのかもしれない。

  • 「なぜ昭和の戦争で陸軍が暴走したのか」というテーマのもと司馬遼太郎が作品を書いていたことを説明し、その作品を紹介する形で日本人がたどってきた歴史を振り返り、今後私たちが同じ誤ちを繰り返さないように何をすべきか、本書の最後に司馬遼太郎の言葉を引用して締めている。
    それはずばり共感性と自己の確立。
    本書で紹介されている司馬遼太郎作品を読んでみようと思った。

  • R2.3.1~R2.3.8

  • 発売当初、書評欄で紹介されてから気になっていた本で、書店でいったい何回手に取っては棚に戻すを繰り返したことか。
    日本史を題材にした小説を読みたいと思い、司馬遼太郎作品は、「竜馬が行く!」のほかは挫折の連続。小説の途中で、司馬氏の説明、独演が挟み込まれるのに抵抗有り。本当に魅力的な作品を知りたくて、尚且つ、司馬歴史観満載の日本史をひも解く作品として読むならば、という心構えを教えてくれる本として手にとった。

    結果、読みたい本として挙がってきたのは、「花神」「峠」。

    こうやって誰かに解説を加えてもらうと興味が勢いづいて、本を読もうという気持ちが倍増するから不思議。

  • ・ナショナリズムとパトリオティズムの違いは、お家自慢のたとえで考えてみるとよくわかる
    ・ナショナリズムは、何ら自分の努力で手に入れたわけではないのに、家柄を自慢し、他の家をバカにする。
    ・パトリオティズムは、自分はたまたま名家に生まれついたのだから、一層きっちりして周りから尊敬される家にしよう。
    ・明治期の日本がお手本にしたドイツはヨーロッパでは後進国で、市民社会がまだできておらず、君主の権力が非常に強いものだった。日本の国情によく似合っていた。つまり「ドイツ」という服を着て歩くのが一番華々しく自分の体にも合った。
    ・大隈重信や福沢諭吉はイギリスの服がいいと言ったが、伊藤博文によって追い出された。
    ・天皇の国家がドイツの服を着て大日本帝国を名乗った。この服に合わせた「軍隊ブーツ」が一度履いたら死ぬまで踊り続ける「赤い靴」だったのが落とし穴だった。

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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