運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書 710)
- NHK出版 (2023年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140887103
感想・レビュー・書評
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行動遺伝学が日本で流行らないのは、単純に理解できる人が少ないからでは。学校教育で統計を教わった人が増えてくれば、そのうち流行るんじゃないだろうか。
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人生の行動の3割は遺伝
ふうんと思って読んでみたが、なかなか未来の示唆に富んだ名著だった。生物学の内容だから、生物学がわからない人にはむつかしいかもしれない。
双子研究による統計で導き出される遺伝率で、行動の何割かは遺伝だと説明できる。知能すら遺伝する。境界知能もさう。
経済環境が自由であれば、自身の遺伝的形質も発現しやすい。反対に、貧しくて制限された抑圧的な環境だと、いかに才覚のある遺伝といへども発揮できない。
そして、非共有環境すらも、みづからの遺伝的素質によって選び取る。すなはち、「延長された表現型」である。 -
久しぶりの満点レビュー。
橘さんの本は、いつもインフォーマティブで良いのだが、時に身も蓋もないことがある。この本では、もう少し常識人よりの安藤先生との対談の形をとっているので、いつもながらの的確な情報提供をしつつも、多少常識よりの結論に落ち着くことが多いのがよい。
最先端の研究者との対談でも、ぜんぜん位負けしないところは、さすが橘さんと思わせるが、それに対して実に誠実に議論を進めていく安藤先生も、尊敬に値する。
帯の煽り文句は、煽りすぎ。売れるかもしれないが、品位を落としていると思う。
タイトルの「運は遺伝する」というフレーズは、この本の中心的な話題である「知性が遺伝する」というのとはズレているので、本の中身を的確に表しているわけではないが、運と遺伝の関係についての発言もちょっとは(3ページくらい)あったので、嘘とは言えない。 -
九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1450688 -
行動というサイコロの試行。
統計の本ってことで、いいかな。
設計図(ブループリント)とは、誕生時に各人に与えられた地図のようなもの。最初の基本であり、唯一であり、自身により書き直すことも、環境からの影響によったりして修正も少々なら可能か?という代物。
そこから如何に自分自身の運を、最適な間引きや篩にかけるか、サイコロを振る、振り続けられるか、なのか。それすらも遺伝ということになるんだろうが。
性格は株式のチャートの移行変位のようにも感じるな。かなり気まぐれ感がありつつも、統合的。
人生ってバクチなのね。いい鉄火場を探すのも大事。
安藤さんは意外と、古典教養好きか。 -
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p18 遺伝子診断 23andMe ,Genelife(1万円強)
p22 人間には3つの自分がある。一つは自分の思う自分、2つ目は他人が見た自分、そして3つ目は本当の自分だ
チャールトンヘストン
p34 Green Chord 介入可能な遺伝子診断
p79 トルストイ アンナ・カレーニナ
幸せな家族いずれも似通っている。だが、不幸な家族にはそれぞれの不幸な形がある
p81 学校や塾の教師なら、小学校のときに一生懸命勉強して難関中学に入った子供も中学になると、たいして勉強ができなかった子供にどんどん追い越されていくことをしっています。後者は一般に地頭がいいといわれますが、成長とともに遺伝的な資質が現れてくると考えれば納得できます。
なぜ親は幼児教育(お受験)に夢中になるのかも説明できそうです。幼児期は遺伝より環境の影響の方が大きいから、親の努力が結果に結びついて報われやすい。ところが思春期を過ぎると、本来の遺伝的な資質で成績が決まり、子育ての努力は報われなくなる
p91 幼児期には母親の態度で子どもとの愛着が形成されうが、それは人格形成には影響を与えない
p121 ここからわかるのは、親の子育てによって子供の性格が決まるというよりも、子どもの正確に合わせて親が子育てのパターンを変えているということです。すくなくとも、親が子どもに一方的に影響を与えているものではなく、親子も相互作用のある人間関係の一種で、影響は片方向でなく、双方向で生じているのでしょう
p186 ワーキングメモリは大きく分けて3つの機能で構成されていると考えられています。一つは抑制機能、2つ目は注意を適切な対象に向けるスイッチング機能、3つ目は古い情報を新しい情報で上書きする機能です。
子供のときに行われたマシュマロ・テストの結果とワーキングメモリの中心的機能はかなり重なっていて、かつ遺伝的影響が非常に大きい
p195 イギリスで行われた研究で、若い男性の失業者や、失業期間の長い中高年を支援してもさしたる改善はみられなかったけど、母子家庭を支援したら大きな結果があったそうです
p214 身体的な感覚を扱うネットワークが先に発達して、その後、社会的な評価を扱うネットワークが発達してくる
p227 2006年のアメリカ映画 idiocracy
アメリカ陸軍の人間冬眠実験に選ばれた平凡な青年ジョーは、期間一年のはずが、さまざまなトラブルで実験そのものが忘れ去れ、500年後に目覚めることになる。そこは人類の知能が大きく低下した世界で、ジョーは唯一のインテリとなり、内務長官に任命され機器に立ち向かう話
p254 東アジアの一番端にある島国に押し込まれ、人口稠密なムラ社会に適応するために自己家畜化していったのが今の日本人だというのが私の仮説
p265 SNSによって初めて評判が可視化された