運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書 710)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140887103

感想・レビュー・書評

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  • 行動遺伝学が日本で流行らないのは、単純に理解できる人が少ないからでは。学校教育で統計を教わった人が増えてくれば、そのうち流行るんじゃないだろうか。

  • 面白かったけど、題名はこれが的確なのか?
    行動遺伝学という学問から見た、真実に
    ある程度の衝撃を受ける。
    知らなかった‥というのが本音、
    もうちょっと違うタイトルでも良かったような気がする。

    ヒトゲノムを解析する驚異的なテクノロジー、GWAS=ゲノムワイド関連解析、ジーワスの裏付けの事実を知る。

    人生の全てに遺伝が関わっているのだから、
    もちろん運も例外ではない。
    と、対談相手の安藤先生も言っている。

    ・偶然の出来事の26%は遺伝で説明ができ、
    本人に依存する出来事との遺伝率30%と統計的に
    優位な差はない
    ・親から子へ受け継がれる遺伝子の顕性遺伝と潜性遺伝がある。ハンチントン病は顕性遺伝で、変異型の遺伝子が一つでも発症してしまうけれど、大人に塗らないと発症せず、その前に子供を産んでしまうことで遺伝子が生き延びている例である
    ・親の経済格差が子どもの教育格差を生むとの予測と同レベルで、遺伝子を調べたポリジェニックスコアにより、子どもが大学を卒業するかどうかの予測と一致する、受精卵をゲノム解析した時点で、これから生まれてくる子どもが大学を卒業できる可能性が高いのか、低いのかわかってしまう
    ・欧米では保守とリベラルの逆転現象が起きている。欧米のリベラルは遺伝ガチャを容認し、運の平等主義=遺伝決定論を主張しており、保守派は遺伝よりも本人の努力を重視している
    ・日本では素朴遺伝観の域を出ず、人の能力を決めるのは遺伝ではなく環境だ、大事なのは教育だとされる批判がある
    ・遺伝は内在+不可変、環境は外在+不可変となり、遺伝と環境は対立し、一方が正しければもう一方は間違っているという議論になりやすい
    ・外在でも不可変なもの、自分では変えられない環境要因、家庭環境や生まれ落ちた地域社会、時代背景など、変えられない環境はさまざまある
    ・内在でも変えられるもの、努力であり自由意志でコントロールは可能だが、環境もまた遺伝の影響を受けており、遺伝が影響する領域は環境にも及ぶ
    ・遺伝率を見ると計算や認知、学歴のような知能だけでなく、やる気や集中力のような性格とされるものも、ほぼ半分は遺伝で説明できる
    ・人間関係や家族関係、子育て、宗教、スピリチュアリティの要素にも3割程度の遺伝率が見られる
    ・遺伝率の混乱、ある人のIQが100の時スコアのうち50が遺伝で決まり、残りは環境や学習で決まるということではない!その人の属する集団のばらつき全体のなかで、遺伝によって説明できるばらつきの相対的な大きさが50%という意味である
    ・人生は遺伝だけで決まるわけでも、環境がすべてでもなく、コンディションも加えたランダムな組み合わせである
    ・統計学による平均への回帰により、通常どの能力についてもサンプルを多く集めグラフ化すれば、正規分布し、ベルカーブを描く
    ・子どもをあたりにしなければという強迫観念
    ・知能にせよさその他の能力にせよ、持って生まれた能力を社会で最大限に発揮できることが、自分らしく生きることであり、それを阻むのが環境なのだから、リベラルの理想「遺伝決定論の批判」が実現すれば、生まれや育ちのような環境の違いはすべてなくなり、遺伝率は100%となる
    ・問題は遺伝的な特質のなかである表現型を高く評価し、別の表現型を嫌ったり排除したりする社会の構造である
    ・言語能力が低かったり、心の理論がうまく構築できない子どもは、未知の世界を怖いところだと感じるようになる、友人や知り合いだけの狭い世界で生きて行く方が快適になるだろう、これが保守のパーソナリティとなる
    ・対して、言語的知能が高いと、問い詰められても説明できるし、未知の世界を恐れる理由がない。違う国の文化や宗教に興味を持ち、留学したり海外で働くことを面白そうだと思い、恋人を作る時も、異なる文化圏の相手の方が刺激的だと感じる-リベラルの典型的なパーソナリティである
    ・過去の経験から予測できる範囲で生きていくというストラテジーを取るのが保守、予測できないから出来事を面白いと感じて経験の幅を広げていくのがリベラルのストラテジー
    ・知能は60%、非認知能力でも30〜40%の遺伝率はあるが、これはあくまで一般的な知能や非認知能力で、測られない残りの、本来の能力があり、
    それを発揮し、生きていくこと、生きることのリアリティを大事にしていくことが大事

    などなど、私の気になったところ〜

    結論:遺伝的なアドバンテージをフックにして、好きなこと、得意なことに人的資本を集中させる。そのうえで自分の強みを活かせるニッチにら活動の場をずらすことで、それなりに成功を手に入れることができるのではないか…とのこと。

    やはり、自分のなかで気になること、興味を持つことというのは、ある程度遺伝の要素もあるのかもしれないなあ。子どもを育てた経験からも納得できる部分もあり、画一的な子育てや教育には、意味がないんだなあと実感する。親がこうだからとか、そんな決めつけも必要ないことも知り、それなら私はどう生きるのか、私の好きなこと、得意なことは何なのか〜と改めて自分を見直すきっかけにもなった。良かった!行動遺伝学、面白いかも。

  • 人生の行動の3割は遺伝
     ふうんと思って読んでみたが、なかなか未来の示唆に富んだ名著だった。生物学の内容だから、生物学がわからない人にはむつかしいかもしれない。

     双子研究による統計で導き出される遺伝率で、行動の何割かは遺伝だと説明できる。知能すら遺伝する。境界知能もさう。
     経済環境が自由であれば、自身の遺伝的形質も発現しやすい。反対に、貧しくて制限された抑圧的な環境だと、いかに才覚のある遺伝といへども発揮できない。
     そして、非共有環境すらも、みづからの遺伝的素質によって選び取る。すなはち、「延長された表現型」である。

  • 久しぶりの満点レビュー。
    橘さんの本は、いつもインフォーマティブで良いのだが、時に身も蓋もないことがある。この本では、もう少し常識人よりの安藤先生との対談の形をとっているので、いつもながらの的確な情報提供をしつつも、多少常識よりの結論に落ち着くことが多いのがよい。
    最先端の研究者との対談でも、ぜんぜん位負けしないところは、さすが橘さんと思わせるが、それに対して実に誠実に議論を進めていく安藤先生も、尊敬に値する。
    帯の煽り文句は、煽りすぎ。売れるかもしれないが、品位を落としていると思う。
    タイトルの「運は遺伝する」というフレーズは、この本の中心的な話題である「知性が遺伝する」というのとはズレているので、本の中身を的確に表しているわけではないが、運と遺伝の関係についての発言もちょっとは(3ページくらい)あったので、嘘とは言えない。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1450688

  • 行動というサイコロの試行。
    統計の本ってことで、いいかな。

    設計図(ブループリント)とは、誕生時に各人に与えられた地図のようなもの。最初の基本であり、唯一であり、自身により書き直すことも、環境からの影響によったりして修正も少々なら可能か?という代物。

    そこから如何に自分自身の運を、最適な間引きや篩にかけるか、サイコロを振る、振り続けられるか、なのか。それすらも遺伝ということになるんだろうが。
    性格は株式のチャートの移行変位のようにも感じるな。かなり気まぐれ感がありつつも、統合的。

    人生ってバクチなのね。いい鉄火場を探すのも大事。

    安藤さんは意外と、古典教養好きか。

  • p18 遺伝子診断 23andMe ,Genelife(1万円強)

    p22 人間には3つの自分がある。一つは自分の思う自分、2つ目は他人が見た自分、そして3つ目は本当の自分だ
    チャールトンヘストン

    p34 Green Chord 介入可能な遺伝子診断

    p79 トルストイ アンナ・カレーニナ 
    幸せな家族いずれも似通っている。だが、不幸な家族にはそれぞれの不幸な形がある

    p81 学校や塾の教師なら、小学校のときに一生懸命勉強して難関中学に入った子供も中学になると、たいして勉強ができなかった子供にどんどん追い越されていくことをしっています。後者は一般に地頭がいいといわれますが、成長とともに遺伝的な資質が現れてくると考えれば納得できます。

    なぜ親は幼児教育(お受験)に夢中になるのかも説明できそうです。幼児期は遺伝より環境の影響の方が大きいから、親の努力が結果に結びついて報われやすい。ところが思春期を過ぎると、本来の遺伝的な資質で成績が決まり、子育ての努力は報われなくなる

    p91 幼児期には母親の態度で子どもとの愛着が形成されうが、それは人格形成には影響を与えない

    p121 ここからわかるのは、親の子育てによって子供の性格が決まるというよりも、子どもの正確に合わせて親が子育てのパターンを変えているということです。すくなくとも、親が子どもに一方的に影響を与えているものではなく、親子も相互作用のある人間関係の一種で、影響は片方向でなく、双方向で生じているのでしょう

    p186 ワーキングメモリは大きく分けて3つの機能で構成されていると考えられています。一つは抑制機能、2つ目は注意を適切な対象に向けるスイッチング機能、3つ目は古い情報を新しい情報で上書きする機能です。

    子供のときに行われたマシュマロ・テストの結果とワーキングメモリの中心的機能はかなり重なっていて、かつ遺伝的影響が非常に大きい

    p195 イギリスで行われた研究で、若い男性の失業者や、失業期間の長い中高年を支援してもさしたる改善はみられなかったけど、母子家庭を支援したら大きな結果があったそうです

    p214 身体的な感覚を扱うネットワークが先に発達して、その後、社会的な評価を扱うネットワークが発達してくる

    p227 2006年のアメリカ映画 idiocracy

    アメリカ陸軍の人間冬眠実験に選ばれた平凡な青年ジョーは、期間一年のはずが、さまざまなトラブルで実験そのものが忘れ去れ、500年後に目覚めることになる。そこは人類の知能が大きく低下した世界で、ジョーは唯一のインテリとなり、内務長官に任命され機器に立ち向かう話

    p254 東アジアの一番端にある島国に押し込まれ、人口稠密なムラ社会に適応するために自己家畜化していったのが今の日本人だというのが私の仮説

    p265 SNSによって初めて評判が可視化された

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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