発想のための論理思考術 (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911501

作品紹介・あらすじ

論証を正確に積み上げていく論理学の思考は、どうしても「あたりまえ」の結論に終始しがち。論理学の限界を見定め、論理学を鍛え直すことで、新鮮なひらめきを生みだす思考法を手にいれよう。論理学の初歩である三段論法に秘められた力や、詭弁だと否定されがちな日常的レトリックを生かした、意外性に満ちた推理・推論の方法を明らかにする。正しく捉え、的確に推理し、大胆に発想するための、新しい論理思考のレッスン登場。

感想・レビュー・書評

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  • よくあるロジカルシンキング本と思って買ってあったが、途中で断念して5年以上放っておいた本。あらためて読んでみたら、演繹、帰納、アブダクション、アナロジー、そして著者が追究している容偶然的推理まで、推論の全体像を駆け足ながら理解させてくれるとても良い本でした。自分の思考が如何に偏っているか思い知らされました。ただ、文章は固め。もう少し分かりやすく書けると思うのだけれど。

  • 『偶然を生きる思想』(NHKブックス)の姉妹編です。前著が、偶然性をめぐる何人かの思想家たちの仕事を紹介していたのに対して、本書は論理学とレトリックについての解説をおこないながら、著者の主張する「「容」偶然主義」という考え方へと読者を導いています。

    まず、三段論法をはじめとする論理学の推論についての解説があり、次に類比推論などの日常的な推論について論じられます。そのうえで、東洋において、直接的な原因を意味する「因」と間接的な原因を意味する「縁」が区別されていたことに触れ、「縁」のような偶然性を孕んだロジックについて、山内得立の「テトラレンマ」や鈴木大拙の「即非の論理」を手がかりに、考察をおこなっています。

  • 真理は必然的なものでなければならない。学的認識を保証するためには、妥当でない推理を排除しなければならない。
    まともな推論は新しいことこそ提起しないが法則の新しい使い方を教えてくれる。前提をうまくつなぐことによって、今まで気付かなかった意外な結論を引き出すことができる。
    論証=証明としての三段論法は論拠をいかにして見つけ出すかにかかっている。
    原因の羅列によって減少を説明することはできない。そこで、原因の序列化が求められる。条件の絞り込みである。

  • 同一律:「AはAである」
    矛盾律:「AはAであると同時に非Aであることはできない」あるいは「Aは非Aでない」
    排中律:「いかなるものもAかAでないかである」あるいは「いかなるものもAか非Aである」
    記号の同一性

    論理学は、世界を二価的に見る 真と偽

    命題:真と偽の最小単位、文。真と偽が判定できるものでなくてはならない。意味が明確であり、客観的に真か偽が判定できるものでなくてはならない

    論理記号 > <

    前件肯定推論:AならばBである。Aである。ゆえにBである。
    後件否定推論:AならばBである。Bでない。ゆえにAでない。
    →背理法:ある命題の反対を仮定する。その仮定のもとで矛盾で出てくることを示す。誤りであることが分かった命題を取り下げて、その反対を主張する

    論理学は実質=事実的真偽ではなくて、形式的真偽のみを問題にする

    後件肯定推理(逆推理)
    ディオールを身につけている女性はお洒落である。その女性はお洒落である。ゆえに、その女性はディオールを身につけている
    前件否定推理(裏推理)
    ディオールを身につけているならば、その女性はお洒落である。その女性はディオールを身につけていない。ゆえに、その女性はお洒落ではない
    反例を探すこと=妥当でない推理
    逆と裏に基づく推理は妥当ではない=誤謬推理

    あれで酒を飲まなければ、いい男なのだが。→酒を飲まない男はいい男である。彼は酒を飲む。ゆえに、彼はいい男ではない。 × 裏推理

    類比推理

    真理表
    P:真 Q:真 P→Q:真
    P:真 Q:儀 P→Q:偽
    P:偽 Q:真 P→Q:真
    P:偽 Q:偽 P→Q:真

    条件記号「ならば」には、日常的にはさまざまな関連性があるが
    原因ー結果 台風が来れば、気圧が下がる
    目的ー手段 将を射んと欲すればまず馬を射よ
    理由ー結果 試験に合格すれば両親が喜ぶ
    条件記号では「前件は後件を含意する」のみ

    連言記号「かつ」選言記号「あるいは」
    今日は天気がいいし、2+3は5である
    彼女は美人だけれども、太陽は西から昇る
    2+3は5であるか、彼女は美人かである
    命題の内容的な関連性を問わない論理学ではまともな複合文である
    ex.あなたがカティだろうと私はカティです

    ベン図

    定言三段論法の条件
    ①2つの前提と結論からなる3段構成
    ②名詞、形容詞、動詞など3つの名辞(概念)が問題になる
    ③どの命題も主語と述語からなる
    ④結論にある主語と述語は両前提を通じて一回だけ出てくる
    ⑤両前提に出てきて結論で消える中名辞(媒介概念)が必ずある

    3つのチェックポイント
    ①否定命題が出てくるときは前提に一つか、結論に一つかでなければならない(否定ー条件)
    ②中名辞は少なくとも前提の1つにおいて周延されていなければならない(中名辞ー条件)
    ③結論において周延されている名辞(概念)は前提においても周延されていなければならない(結論ー条件)

    周延:概念の示す外延をすべて問題にすること

    ベン図を使って論証

    三段論法を「発見」の方法にする 
    うまい補助線を見つける ex. ニュートンのリンゴ

    トゥールミンの論証モデル
    論証=証明としての三段論法は、論拠をいかにして見つけ出すかに関わっている
    三段論法で漠然と前提としてくくられていたものを「データ」と「理由づけ」としてきっちりと取り出した

    データ=事実(根拠) — 主張(結論)
             理由づけ(論拠)

    理由づけ(論拠)は三段論法の大前提に当たる。三段論法のカギは結論から姿を消す中名辞(媒介概念)にほかならない。中名辞を見つけ出すこと、まさしく三段論法のカギは結論から姿を消す中名辞にある。三段論法とは両前提に出てくる中名辞を消して結論を導き出す推論に他ならない。つまり中名辞が前提と結論を連結する重要な役割を果たしている


    中項とは、原因である(アリストテレス)

    中名辞(媒介概念)を操作すればどんな結論も思い通りになる
    「大きな仕事をするには頭の悪い人の方がいい」
    連鎖三段論法

    科学的思考の仮説と論証
    因果性を認定する際の注意
    ①単なる偶然の一致ではないか
    ②共通の原因はないか。ほかにもっと強力な原因はないか
    ③原因と結果を取り違えていないか

    必要条件と十分条件

    一致法と差異法

    哲学のスタンス
    世界から身を引いて「見ること」「観想すること」(テオリア)

    アブダクション(パース)
    現象を説明する適切な仮説を提案すること
    ①ある意外な現象Pが観察される
    ②仮説Hを立てると、Pはうまく説明できる
    ③それゆえ、Hは正しいと判定していいだろう

    仮説の信憑性を高めるには
    ①仮説が多くの事例によって検証されること→一致法、差異法
    ②仮説により導かれた帰結が特殊であること、かつその帰結が検証されること

    演繹法は、一般から特殊に向かい、何ら「新しいもの」はもたらさない
    帰納法は、特殊から一般化に向かう

    帰納法とは「弱い演繹法」
    演繹法とは「強い帰納法」

    トピカ(論拠発見の術)とは、「提起された問題の2つの観念を統一するために見出されるところの第3の観念。したがって、それは中名辞を発見する術のことである」

    類比推理:類似性を論拠にする推理。正しい結論を導くこともあるが、中名辞(媒介概念)の不周延で誤った結論に結びつくこともある

    直接的類似性(一見似ている) ー 同一のカテゴリー ー 実体的

    間接的類似性(似ていない) ー 異なるカテゴリー ー イメージ的類似性  ー 感性的
    構造的類似性 ー 概念的 ex. 愛は花木

    類比推理のタイプ
    ①未知なるものを既知なるものによって推理する
    ②抽象的なものを具体的なものによって推理する
    ③複雑なものを単純なものによって推理する

    偶然を受け入れる推理

    西洋的因果vs.東洋的縁起

    「容」偶然主義 多義性を容認する

    レンマの論理 vs. ロゴスの論理
    レンマ=直接的把握

    テトラレンマ(4段論法)と矛盾律
    ①AはAである
    ②AはAではない
    ③AはAであるものでもなく、Aでないのでもない(両是)
    ④AはAでなく、Aである(両非)

    「容」偶然的推理
    ・ミクロの視点とマクロの視点を使い分ける
    ・似ていないもののあいだに似ている点(類似性)を見つける
    ・関係ないと思われていたものを関連づける
    ・かけ離れているものを近づける
    ・対立・矛盾するものを結びつける
    ・想像力・連想力を働かせる

    ただ、ひたすら「こじつける」ことが大事
    大胆で強引な牽強付会が「発想」と「発見」を呼び寄せる
    補助線を引くこと

    レンマは言葉を介さない「直感」に他ならない。レンマが捉えるものは「語りえないもの」である。その「語りえないもの」を言葉で語ろうとすれば、どういうことになるか。そのとき、人は言葉に窮する。言葉と格闘する。言葉の限界を知る。そして、やむなく詩的言語や反語や矛盾的表現に訴える。テトラレンマ(4段論法)の一句・二句から三句・四句の「飛躍」(断絶)を翻訳する言語表現が「非論理的」であるのは、けだし当然の成り行きだろう。レンマの情理は非論理である。「語りえないもの」を語ろうとすれば、その表現は「逆説的な」もの、「矛盾的な」もの、あるいは「詩的な」ものたらざるをえない。いきおい表現は多義性や暗示性や曖昧性を帯びることになる。しかしながら、ロゴスの論理に反して、語り得ないものについても、人は語らなければならない。語りえないもののなかにも「真理」は宿っているからである。語り得ない「真理」をなんとか不十分な言葉でほのめかすことでよしとしなければならない。言葉の表現力が完全でないことをよく心得ているからである。「足るを知る」、それがレンマの立場である

    古池や蛙飛び込む水の音 レンマの情理

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著者プロフィール

1944年生まれ、東京教育大学仏文科卒業。フランス語、フランス文学専攻。現在関西外国語大学教授。
主な著書として『イラスト・フランス語入門』(第三書房)、『フランス語ひとくちコミュニケーション』(白水社)他。

「1999年 『パルロン・フランセ CD付』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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