ロウソクのために一シリングを (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (ハヤカワ・ミステリ 1704)

  • 早川書房
3.45
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本棚登録 : 51
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150017040

感想・レビュー・書評

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  • 「"美しい”ミステリー」

    ジョセフィン・テイ女史の初期の作品である本著。
    物語は海岸に、ある女性の死体が打ち上がった場面から始まります。

    海岸部を見回る警察による死体の発見、あまりも不審な登場人物たち、そしてそれを一大スクープとばかりにもてはやすマスメディアたち。

    現代ではありきたりな展開ですが、"美しい"のはミステリが解き明かさせる後半部のみならず、彼女の精緻な情景描写にあります。

    読者の感想にもあった、「ラストがつまらない」「『時の娘』を読んだのでこちらも読んだが…」という声は、一方では最もだと思います。
    一世紀近くも昔に書かれていますからね。

    ですが、本著の良さはテイ女史が紡ぎ出す情景描写にあります。

    海岸部の白けた空気、警察たちに訪れる焦燥感、マスメディアによって引き起こされる世間の喧騒。

    読むにつれ、そのどれもがまるで時代の超えて現代に蘇るように読者の脳裏に浮かびます。

    登場人物たちの思惑もさることながら、彼ら彼女らが抱えていた各々の想いや、出生によるディスアドバンテージ。
    それらを加味しながら読むと、前半で仕掛けられた伏線を回収して終りちな、「エンタメとしてのミステリー」に留まらない深みがあります。

    そこにはテイ女史ならではの、慎ましくも細やかな情景描写が拍車をかけていたなと。

    タイトルにある『ロウソクのために一シリングを』は、読後は誇大広告のように写るかもしれません。

    それでも面白かった。

    ただのエンタメミステリ小説に飽きてしまった方、美しい表現の小説を好む方は、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

  • 「時の娘」の大ファンなので読んでみたが…。

    ヒチコックが映画化したという。
    未見だが、魅力的なキャラクターの
    エリカとティズダルをメインに据えて
    結末も変えて、ということらしい。
    いいところだけつまみ上げたな?




  • 図書館で。
    1シリングをシーリングと読み間違えて、なんでシーリング?とか思ってましたがお金だったのね。ナルホド。

    色々と引っ張った割には結構しょうもないオチだなぁと思いました。

  • 半年前にヒッチコックの「第三逃亡者」を見ていた。映画でもそうだったが、この本でも一番の魅力は警察署長の娘エリカの出てくる所。とにかく元気で素直で気持ちいい。

    遺産を使い果たし道に立っていた若い男、有名女優が別荘に行くところの車に拾われ、別荘で過ごす。この設定がちょっとあり得ない感じなのだが、エリカが出てくるとそれもありかも、なんて気になる。

    映画は女優殺害の嫌疑をかけられた青年ロバートとエリカが一緒に逃避行して無事疑いを晴らす、という設定だが、本では一緒の逃避行は無く、エリカの助けはあるものの、ロンドンのグラント警部が功績。

    犯人が映画と違う。動機がちがってくるな。
    解説が宮部みゆき。

    殺された女優の遺言が「兄には、ロウソクのために1シリングを」


    1936発表
    2001.7.10第1刷 図書館

  • 良い終わった時に、ああ、しまった、読み終わっちゃったと思いました。
    それくらいグイグイ読み進めてしまった。

  • 愛すべきグラント警部、お転婆だけれども賢く立ちまわって奮闘するエリカ、ほかにも魅力的な人物が多く登場して楽しい。
    本筋は女優殺害の真犯人を追うものだが、科学的な捜査のない当時の犯人探しはとても興味深く、私には真犯人が意外な人物で驚いた。(その殺害動機の身勝手さにも驚かされたが)
    いずれまた読み返したいと思う作品。

  • 「時の娘」の主人公・グラント警部が登場するシリーズの一作目。

    「時の娘」が良かったので読んでみたけど、これも良かった。

    まさかの犯人に吃驚。
    解説で宮部みゆきさんが言ってた伏線って何だったんだろう?全然気が付かなかったから、今度読み直して確認したい。
    エドワード卿とハーマーが色々隠していた理由も驚き。

    「時の娘」にも出てきたマータとウィリアムズも出てきて嬉しい。
    他の登場人物たちも良いけど、やっぱりエリカが一番好き。(グラントとのやりとりが微笑ましくて良い。)

  • 1936年の作品。端役にいたるまでどれもキャラクターが魅力的。全体的に地味な印象だったが、良かった。

  • 宮部みゆきの言うとおりこれこそ「上質のミステリ」。
    ひょうひょうとしたティズダルのキャラがよい。寝ているグランドにのしかかりながら「やっぱり無実だったろ! やっぱり無実だったろ!」と言うところが泣けてくる。
    他にもティズダルの身を心配するグランド、彼をささえるウィリアムズにお転婆娘のエリカ、登場人物がみな生き生きとしている。

  • 宮部みゆきの解説がいい。もしかしたら本編を凌いじゃってるかも。。。

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著者プロフィール

Josephine Tey

「2006年 『列のなかの男 グラント警部最初の事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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